第16話
「――さまぁ!!ルナリア様ぁ!!」
「どちらにいらっしゃいますかぁ!!」
「レオ!リオ!」
中庭へと戻ってきた私たちの耳に届いたのはルナリアを呼ぶ二つの声であった。
その声に反応を示したのはもちろん、ルナリアだ。
「レオ!リオ!わたしはここよ?」
「......まったく。お転婆なのは構いませんが、私達の苦労も考えてください?」
「兄さんは頭が固いなぁ。ルナリア様の行き場所なんていつも中庭じゃないか。何をそんなに心配するんだ?」
「......リオン。お前は逆に心配しなさすぎるんだ。我々は王からルナリア様の護衛を直々に命じられたのだぞ?」
......なんだ?同じ顔が二つある。
人間は分身すると言うのか......?
「レヴィ!このふたりは、わたしのきしなのよ」
「......同じ顔をしているが、この二人は何か特別な術......呪いでもかけられているのか?」
私の疑問に、その場はドッと笑いに包まれた。
......何かおかしなことを言っただろうか?そんな疑問を持っていると、エリオスが私に説明をしてくれた。
「レヴィ。この二人は"一卵性の双子"なんだ。だから同じ顔に見えるんだよ」
「......いちらん、せい?ふたご?とは?」
「......レヴィ様。もしかして双子をご存じない、と?」
「知らん。初めて聞いたぞ」
私の言葉に皆驚いていた。
......そんなに驚く事であろうか?
「レヴィ様。"双子"と言うのは一つの母体から、二人の赤子が一度に生まれてくると言うものです。そして、レオンとリオンは"一卵性"。それは、元は一つであった受精卵が途中で二つに分かれるというものです」
「一つの命が、二つに......?」
「そういうことです。」
私は目を見開き驚いた。
「......それは、実に不思議だ」
「でしょう?命の神秘は語り尽くせないものです」
私はその説明を受けて、二人の顔を見直した。
よくよく見るとほんの少し、違いがあるようにも思えてきたが......うむ。やはりわからぬ。
「......ルナリア王女は二人の見分けがつくのですか?」
「わたし?うん!わかるよ!」
「どのように見分ければよいですか?」
私が尋ねると、ルナリアは「うーん」と小さく唸りながら考えこんだ。。
「わたしは、うまれたときからふたりといたの。だからみわけかたはわからないわ」
「......エリオス。お前はどう見分けている?」
「!!ぼ、僕かい?!」
「レヴィ様。エリオス様はいまだに二人の見分けがつきません。まぁ?私は魂で見分けることが出来ますが」
......なるほど。魂か。それなら私も見分けられるかもしれない。
私はレオンとリオンの二人に手をかざし、目を瞑ると魔力で魂を覗き込んだ。
「......セラフィ。本当に魂で見分けているのか?」
「?はい。どうかなさいましたか?」
「......魂までそっくりでまるで見分けがつかん」
「「......」」
レオンとリオンは顔を見合わせると、諦めたかのように私の前へとやって来た。
そして、それぞれ自分の顔を指さしながら私に迫ってきた。
「な、なんだ?」
「私はレオン・レイフォード。目元にほくろがある」
「私はリオン・レイフォードです!私は口元にほくろがあります!」
......なるほど。そう言う見分け方があるのか。
......しかし。
「......」
「......」
「......やはり分からぬ」
「「でしょうね」」
二人の声が綺麗に重なった。なんと。声までそっくりではないか。
魔界では決して見ることが出来ない、不思議な人間の命の形。
一つの命から生まれた二つの命。
――姿も、声も、魂さえもまるでそっくりなのに、それぞれが別々の意思を持ち、別々の人生を歩んでいる。
――それがとても興味深かった。




