第15話
「ところでレヴィ?あそこにいるのは、あなたのきしさま?」
「?あぁ。彼の名はヴァルク。私の大事な騎士です。ルナリア様も仲良くしてあげてください。......ヴァルク、何故そんな遠くにいるのだ?こちらに来い」
「......ですが、魔王様。そのような小さな生き物、触れたら壊れてしまいそうで......」
......そうだった。
ヴァルクは子供や小さきものが"壊れそうで怖い"と言う魔族らしからぬ優しい心の持ち主であった。
まったく。誰に似たんだか......?私か?
「ヴァルク!あなたともおはなししたいわ!」
「ほら、王女様のご要望には応えないと、な?」
「......!!魔王様!!」
ヴァルクは"お願い"や"命令"には弱いのだ。
その証拠に......ほら。もうこちらに来ている。
「ヴァルクはくろいよろいなのね!かっこいいわ!」
「ルナリア王女、私よりも、ですか?」
「!!......レヴィは"うつくしい"や"きれい"ということばがにあうわ?」
ルナリアはそう言うと、私の手を握り駆け出した。
......一体どうしたと言うのか?
「レヴィ!わたし、あなただけにみせたいものがあるの!!」
「見せたいもの、ですか?」
「こっちこっち!」
そしてやって来たのは中庭にある薔薇園のさらに奥。
......そこは王族しか知らない場所であるとルナリアが言った。
「小さくも、神々しいオーラを纏っているな......」
「?レヴィこっちからはいるの」
「......おじゃまします。......これは......」
そこには一本の大木が立っていた。
その木には白銀に光る薔薇が咲き誇っている。
「ここはね、やさしいばしょなの」
「優しい......?」
「るながさびしいとき、ここにくると、おはなさんたちがおはなししてくれるの」
喋る薔薇か......実に興味深いものだ。
......しかし。
「良いのですか?私に秘密の場所を教えて」
「だってレヴィはやさしいもの。こころがきれいじゃないと、おはなさんたちはみえないの。ははさまがいってた」
「......私は魔王ですよ?」
「るなはいいとおもうなぁ。こころのきれいなまおうさま!」
ルナリアの言葉が胸の奥に響いた。......心の綺麗な魔王、か。そう思われるのも悪くないものだな。そう言えば、最初は私を警戒心でいっぱいの瞳をしていたのに、今は私に心を許してくれているようだ。
「ねぇ、レヴィ?このガラスのバラ、ここにかざってもいい?そしたらるな、まいにちここにくるわ!」
「......なぜです?」
「だって、レヴィにあえないときでもここにくれば、レヴィのバラがあるから、さびしくないわ!」
「......ルナリア王女。貴方と言う人は......どうしてこうも嬉しい事を言ってくれるのですか?」
「?レヴィ??」
魔王だからと人間達から恐れられ、孤独の中にいたというのに......何故かここに来てから人間の温かさが分かった気がする。
「レヴィ?!ないてる!だいじょうぶ?!」
「......え?」
頬を伝う温かなものに、私はしばし理解が追い付かなかった。
涙?魔王であるこの私がこの小さな少女の言葉で......?
「......おかしいな。こんなもの、流した記憶など......随分昔のことなのに」
「レヴィ?かなしいの?だいじょうぶ?」
私はルナリアの言葉に首を横に振った。
「きっとこれは"嬉しい"という感情なのでしょう」
「うれしい?」
「えぇ」
私はルナリアの頭を優しく撫でた。
「......ありがとう。ルナリア王女」
「?わたしはなにもしてないわ?」
「いいえ。貴方は孤独だった魔王に......温かな居場所をくれました」
......とてもしみじみとしていた空気だった。
だがしかし、その空気をぶち壊した人物が......二人。
「レヴィ!探したよ!!ってルナ!おまえがレヴィをここに連れて来たのかい?」
「そうよ、にいさま!......あ!るなね、おおきくなったらレヴィのおよめさんになるの!!」
「......は?」
「......」
「?子供の戯言だろう?......お、おい。なんで二人ともそんな怖い顔をしているんだ?」
あぁ。長く生きてきたが、このような経験は初めてだ。
魔王が言うのもなんだが、助けてくれ神よ。




