表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーボードクラブ  作者: 木田駿一朗
12/15

セッション11 -ゲレンデへ-

ようやく初滑りを向かえました。ゲレンデのシーンは初回以来…。

 ゴンドラに乗り込んで、いざ山頂エリアのゲレンデを目指す俺達。 


 栂池ゴンドラ・イヴは6人乗りだ。俺達8人は4人ずつに分かれて乗車した。先頭を行く搬器には真っ先に列に並んだ雅とそれに追随する形で行った良菜、そして俺と由香だ。後ろは歩夢と智香、麻美と先生だ。


 ゴンドラは山麓駅を出発して、しばらくすると左手に林を挟んで広大なゲレンデが見える。栂池高原を象徴する鐘の鳴る丘ゲレンデだ。すでに真っ白に染まっていて、今からでも滑れそうだが、まだ積雪は充分ではないらしい。そのため、オープンしていないこのゲレンデは誰もいない。


「凄く広いね。雪がもっと積もったら、あそこも滑れるの?」

由香がまるで子どものように、窓に両手を付きながらまじまじと外を見つめている。元の容姿も相まって、無邪気な子どものようだ。

「そうだよ。その頃は多分ゆかちもあそこで楽しく滑れるようになっているよ。」

「あれだけでっかければ、カービングもグラトリもやりたい放題だよー!」

雅と良菜が外の景色を一緒に眺めて言葉を返す。


「滑れるようになるかな…?」

「大丈夫だよ。うまくやれるって!」

雅はニカっと笑って励ます。

「俺もやり出す前は不安だったし、エッジ立てるだけでも一苦労だったよ。けど、なんだかんだで1日で連続ターン出来るまでは滑れてたから、まず今日はそれを目標にしようか?」

「連続ターン…うん、頑張ってみる。」

由香はまだ自信が持てなさそうだ。実際どこまでやれるかは分からない、だが目標はあった方が良い。

「よしよし、頑張れゆかち!」

「ファイトだ、ゆっち!!」

「負けるな、ゆかち!」

「いけいけ、ゆっち!!」

雅と良菜がノリノリで交互にエールを贈る。

「滑れ〜るゆかち!」

「ネタが滑るーゆっち!」

が贈るのは良いが、だんだん変な歌詞と踊りになっている。不協和音、まるで呪いの儀式だ。


 ゴンドラは1キロ進んだ所で中間駅に到着する。全面オープンとなれば、ここでも乗り降りが活発になるが、今回はゆっくりと通過するだけだ。

中間駅を過ぎると、それまでなだらかだった勾配は一気に険しくなる。雪も弱い雪からだんだん強くなって行き、積雪も目に見えて増えて行く。


 準備体操の時など、麻美の態度が少し気になったので、良菜に麻美の事を聞いてみる。

「なぁ、良菜。麻美て普段はどんな奴なの?」

「おや、ゆーちゃん?うち、良菜の事に一切興味を示さず、麻美に興味がおありで?」

「いや、良菜にも興味はあるけど、えっと、そういう意味じゃなくて。」

そういう話しをしたいんじゃないですが。

「いやいやごめーん、意地悪して。」

良菜は若干の照れ笑いをしつつ謝った。


「麻美がどうかしたって?」

「麻美て、普段人と話したり、一緒に行動するのって苦手だったりする?なんかうまく馴染めていないような気がして。」

「あ、わたしも気になってた。友達から良菜ちゃんと麻美ちゃんの噂は聞いていたんだけど…、なんか麻美ちゃんて、良菜ちゃん以外の人とあんまりお喋りしているの見た事が無いって…。」

由香もその話題に乗っかって来た。やはり気になっていたのは俺だけではなかったようだ。


 良菜はしばらく考え込んで、そっと口を開いた。

「やっぱそう思うよね…。」

静かに息を吐く良菜。

「うん、その通りなんだ。麻美ってさ、見ての通り近づき辛そうな印象じゃん?何考えているか分からなさそうな顔だし。おまけに口悪いし。」

全肯定とまでは行かずとも否定は出来ない。

「あの子さ、うちと同じ中学でクラスもずっと一緒だったんだけど、友達付き合いとか集団行動も苦手で、いつも1人でいたよ。今でもクラスの皆とはあまり話さないし。そのくせプライドが高いもんだから、すぐ誰かと喧嘩になって…。それで気が付いたら独ぼっちになっていて。中学でも今でも。正直見ているこっちは変に気になって仕方なかったよ。まぁ本人はどう思っているか分からないんだけど。」


 その時を思い出す良菜は少し切なそうな表情を浮かべた。どこか寂しそうな、そんな表情だ。

「なんかさ、うちから見ると放っておけないんだよね。だから、本人が嫌がるのを承知で無理矢理絡んでやった。」


 良菜は窓の外を眺めながら言った。

「最初は、もうあいつからさ、ウザ過ぎてゴキブリが可愛く思えて来たとか、ボロクソ言われまくったよ。けど、それがだんだん当たり前になって来て、気が付いたら、うちと麻美は何か下らない事で喧嘩するのが日課になってたな。」


 良菜は今度は俺に顔を合わせて更に語り出した。ほんの少し笑顔が伺える。

「でもさ、麻美はそんなに人と関わるの嫌いじゃないと思うよ。スノ部のミーティングなんかは、クラスの時より明るいし。」

「そうなのか、あれで?」

麻美は普段から無表情で、口調もほぼ一定のトーンだ。正直意外だ。

「入部しに初めて部室入ってた時さー、麻美ちょっとだけ笑っていたよー。だってドア空けたらいきなり、ゆーちゃんがミヤビンのおっぱいに顔に埋められてたんだもーん!」

「あ、あれはだな…」

何て返せば良いのか分からない。

真面目な話をしているのに、いきなりその話を持ってこられても反応に困るぞ。でもあのとき俺を変態と言っていた麻美は、内心ウケていたのか?


「まぁ、麻美は色々と変で困った奴だけど、多分本人なりに楽しんでくれてると思うから、面倒見てやって下さいな、みんな。」


 良菜と麻美はしょっちゅう喧嘩ばかりしているようなコンビだが、そこには良菜が麻美の事を気にかけているという様子が今の話で感じ取れた。良菜は麻美は互いにとって大事な友達だ。あの喧嘩も友情の証なのかもしれない。


「ラナラナもアサミンも一緒に面倒見ちゃうよ?大事な部員だしね〜。」

雅は良菜の肩に腕をかけた。満面の笑みに溢れていた。

俺も副部長として彼女達を支えて行こう。スタイルも性格も個性豊かな人達の集まりだ。こんな面白いメンバー構成は他に無いだろう。


 ゴンドラに乗車して20分弱。周囲はガスに覆われ真っ白だ。進行方向先に三角屋根の建物が見える。山頂に到着だ。搬器が減速してドアが開く。続々と降車して、スタッフにエッジカバーを渡した。麻美達が乗っている後方の搬器も到着し、彼女達も下車する。


 ゴンドラは降車後にICゲートを通る仕組みだ。前方のゲートを通れば、いよいよゲレンデだ。

真っ先に雅がスタスタとボードを抱えながらゲートに向かう。ゲートは2つある。雅は左側のゲートを通ろとした。センサーは雅の肩の位地と腰の位地の二つがあり、腰の位地のセンサーに反応させるべく、尻をくっつけた。

だが、トラブルが発生した。

ゲートの通行可を表す青ランプとチャイムが鳴らない。バーも閉じたままだ。

雅はICカードが入ったパスケースをウエストから吊るしているようだ。それを反応させようと、尻をセンサーに接近させて試みているが、中々反応しない。何度かセンサーに尻を押し当てたりして、なんとかバーを開かせて通過した。だけど、苛立っていたからなのか、ベリーダンスの用に激しいヒップアタックをかましていたので、ゲートを破壊するんじゃないかと心配してしまった。


「いや、ごめん。ICの反応が悪くて時間かかっちゃった〜。」

ゲートを通過した雅はひょうひょうと謝りながら皆を待っている。

「ミヤビン、ストリップダンサーみたいにお尻が激しく揺れてたよ。」

ゲートと悪戦苦闘している雅を横目に、良菜は右側のゲートをすんなり通過していた。左腕に付けたパスケースをセンサーに付けて反応させていた。


 良菜の後ろからは、麻美と智香がそれぞれすんなりと右側のゲートを通過していった。

雅のヒップアタックで、いくらかのダメージを食らった左側のゲートは由香が通過しようとする。由香は胸元にパスケースを付けている。ゲートの上のセンサーなら、俺の身長なら丁度良い場所にあるが、由香の身長では高過ぎる所にあった。胸元に付けていると、背伸びしても届かないため、腰に近い位地のセンサーに反応させる事にしたようだ。

由香はそれに向けて体を屈めるが、板がゲートに引っかかっているため、なかなか思うような体勢を取れないでいる。センサーに胸を押さえつけようとして、前傾姿勢になる由香。


「あれ…、うまくいかないよぉ。」

悪戦苦闘しながら体を右往左往動かしている由香。

こちらの視線では前後左右に揺れる突き出たプリンとした小さな尻の動きがどこか可愛くて、見とれてしまっていた。本来なら板を持ってあげたりなど、助けてあげるべきなのだが、むしろ見守ってあげたくなる光景だ。

決して尻を拝みたい訳ではない!


 だが歩夢はそれを見かねていた。

「由香ちゃん、板持っててあげるから、そのまま先に行って。」

右側のゲートを通ろうとした歩夢は由香から板を渡してもらい、自分の板とソールを向かい合わせにして、持ち直す。

「あ、ありがとう歩夢君。」

「由香ちゃん。前傾姿勢だと、カードが斜になってセンサーが反応し辛いから、垂直にしゃがんでみてよ。」

由香は一言お礼を言うと、歩夢の言う通りに体勢を取り、胸にセンサーを当てる。

青ランプが光り、バーが開いた。

今度は上手くいって、手ぶらでゲートを通過した由香。


「友基、ダメじゃないか?目の前で困っている女の子を助けないで、その人のお尻ばっかりガン見して。」

「え?」

「ひゃっ?!」

俺と由香はビックリしてしまった。


 いやいや、違うんだ歩夢。俺は頑張る由香を見守ってあげてたんだ。決して嫌らしい目線で由香の尻を眺めていたんじゃない!


 なんて言おうとしたが、歩夢の言っている事は事実に変わりないのでぐうの音も出ない。

「まぁ、由香ちゃんのお尻可愛かったから、気持ちは分かるけどね〜。」

歩はクスクス笑いながら、左手に装着している俺が持っているのと同じタイプのパスケースをセンサーに当てて、2枚の板を持ちながらすんなりと通過した。

既に通過していた由香はこちらを見て、恥ずかしそうに自分の尻を両手で押さえた。

由香からしてみれば異性2人にまじまじと見られていたんだから、そんな反応するのも仕方ない。あぁなんか気まずい…。


 最後に俺が左側のゲートを。同時に先生も右側のゲートを通過した。

歩夢は由香の板を本人に渡した。どことなく歩夢が男に見えた。いや、最初から男だけど。

だけど、こうやって女の子のような仕草や口調で人をからかったりしつつも、紳士的な態度で人に優しくするのも歩夢の良い所だ。なんか変な台詞も吐くけど。


 思えば俺を含め、皆歩夢を「男の娘」として見ているが、由香は「男性」として見ている。その理由が垣間見れた瞬間でもあった。

それに引き換え、俺はすぐ後ろにいたにも関わらず、何もせずただ由香のうごめく尻を眺めていただけの野郎だ。

いや、見守っていたんだ!尻を眺めていた訳じゃない!


「ユーキ。ゆかちのお尻可愛かった?」

「そりゃ、まぁね。…はっ!!」


 雅の悪意に満ちた質問に俺はうっかり肯定してしまった。

「いや、そうじゃなくて、あれはだな、その、えーと…」

もう何を言っても既に遅し。

「それじゃ〜、後でユーキの鼻の下が伸びちゃった顔にヒップドロップしてあげるね♥」

ヘッドロックを食らわす時と同様、不気味な笑顔で俺を見つめた雅。

おっぱい地獄を既に経験した俺は、今度は尻地獄も経験するのか…。ドM男なら死ぬ程喜ぶのかな…、正直そういう奴らが羨ましいぜ。


 全員ゲレンデに出て、一旦雅の前に集まる。部長による開会宣言だ。


「それじゃ、皆!スノ部記念すべき初滑りを今から始めまーす!!イエーイ!!」

「イエーーーイ!!Foooooooooo!!」

雅の無駄に高いテンションを、更に無駄に高いテンションで便乗する良菜。だが俺ら他の人らは薄い反応。まぁいつもの事なんだけど。


「ちょっと、皆元気無いよー!!せっかくミヤビン盛り上げてくれてるんだから、もっと乗ろうよー!」

良菜がいつものような早口な口調で俺らを叱咤する。


 そんなのはおかまい無しと言わんばかりに、麻美は黙って、とっとバインディングを装着して行ってしまった。

「あ、麻美!あいつ1人で行きやがったー!」

それに反応した良菜は、バインディングを僅か2秒足らずでを装着して麻美を追いかけはじめた。前足をはめた直後、スケーティングしながら後ろ足もはめた。

さすがFLOWのリアエントリー式バインディングだ。予めストラップはブーツに合わせておいたのだろう。


「あぁ〜もう〜、2人とも早過ぎるよ〜。」

雅も手早にバインディングを装着させ、麻美と良菜を追いかけた。

「ごめん先に行ってるね〜!」


 随分とまとまりの無い部だ。麻美の単独行動に始まり、盛り上げ役の2人もとっとと行ってしまった。

「取りあえず俺達も滑り始めるか?」

仕方ないので、俺は皆にそう言いながら準備を始める。先に行った3人は立ったままバインディングを装着していたので、俺も真似してみたが、なかなかバランスが取れない。結局座りながら両足を装着させた。雪はさらさらの粉雪なので、尻が濡れる失敗もそんなに無いだろう。

歩夢も座りながらバインディングを装着している。

智香は立ったままの装着だ。


「取りあえずどうしようか?由香はまだ滑れないから1人置いて行く訳にも行かないし。」

バインディングを装着して立った俺は皆に尋ねた。思えば装着してから言うのも変な話だが。

「由香ちゃんは〜、私が〜、教えるから〜、皆先行ってて良いよ〜。」

 

 始めからそうするつもりだったのか、先生は前足だけ装着した状態でそのまま待機していた。

由香も座った状態で、後ろ足はまだ入れていない状態だ。

「皆おかまいなく、先に行ってて良いよ。」

由香も俺達に行くよう促す。

「それじゃ、1本滑らせて貰うね。私も後で何か教えられるようにするから、由香も頑張ってね。」

「じゃ、由香ちゃん。また後でね。」

智香と歩夢は準備して由香に声をかける。

「うん。いってらっしゃい。」

「皆〜、気を付けてね〜。」

由香と先生は手を振りながら俺達を見送った。


 栂池高原スキー場は194haもの広大な敷地のスキー場だ。

だがオープン初日の今日は、全長4キロあるハンの木ゲレンデコースの序盤の緩斜面、約800メートルまでのコース1本しか営業していない。

中急斜面に差し掛かったところで、営業コースはそこまで。高速ペアリフトで、再び元の場所に戻る構成だ。


 ただ雅が言うには、コースの状態に問題が無ければ、ゴンドラ山頂駅から更に上を行く栂の森ゲレンデもオープンさせる可能性があると、スキー場スタッフから聞いたそうだ。

ゴンドラを降りる直前、右側の景色から、圧雪車が走行している栂の森ゲレンデと試運転中の つが第2ペアリフトが見えた。もしオープンするなら、おそらく極上のパウダースノーをいきなり味わえる可能性があるが、どうなる事やら。


 滑り始めた俺は、緩い斜面をゆっくりとターンを繰り返しながら進んでいる。

ブーツはさすがと言うべきか。自分の足のようにぴったりとし、緩みも痛みも無く快適だ。

バインディングも違和感は全く無い。


だが、板の扱いがイマイチ掴めない。久しぶりに滑るからか、体がまだ付いて行かないというのもあるかもしれないが、とにかく板が硬いのだ。


 昨シーズンまで乗っていたK2 STADARDは、フレックスもしなやに曲がり、トーションもすんなり捻れたので、割とどんな体勢からもターンが出来た。

ただ、このNITRO TEAMは曲げ辛く、捻りにくい。

何よりフラットロッカーから、キャンバーに乗り換えた事によってそれまでの感覚がまるで違う。


 例えば、エッジの噛みやすさだ。

フラットロッカーもエッジを立てればそれなりに雪面に雪が噛んでくれて、ターンがしやすかった。だがキャンバーはそこまで意識しなくても、エッジが雪を噛み、これが時に予想以上に快適なターンにもなれば、逆に妙な引っかかりも引き起こす。


 この引っかかりで怖いのは逆エッジだ。斜面下側にエッジを噛んでしまい、もの凄く痛い転倒に繋がる。それこそ、屈強の格闘技選手から強烈な拳を食らったかのような痛みだ。

そんな転倒による恐怖と痛みに耐えながら、何とか滑っている状態だ。まるで自分が下手になってしまったような気分だ。


 歩夢は俺と並走する形で板の感触を確かめるように滑っている。

「友基、これ滅茶苦茶跳ねるよ!」

歩夢はぴょんぴょんとオーリーを何度も繰り返して、板の反発力を楽しんでいる。

まるで兎か雪に興奮している子犬だ。

前足から後足の順でジャンプするオーリーは、ダブルキャンバーである歩夢の板の威力が大いに発揮される。

同時に、板の中心を軸としたスピンも決めやすいので、グラトリに大層興味がある歩夢にとってはかなり気に入った様子だ。

下手になった俺に比べて、あちらは水を得た魚のように増々上手くなっていやがる。


 しかし、興味を引いたのは智香だ。


 さすがと言うべきか。智香はテクニカル競技で鍛えたカービングターンが見事に決まっている。

エッジは立ち過ぎず、寝すぎずの絶妙な角度で雪に食い込こませ、板から垂直に芯が通ったような安定した姿勢だ。


 左へフロントサイドターンをすれば、しゃがんだような体勢になり、尻が今にも雪面に接触しそうだ。

にもかかわらずその気配も無い。

右へバックサイドターンをすれば今度は膝が雪面に接触しそうで、全くその気配がない。


 どのような体勢を取ろうが終始全く危なげがない、安定した姿勢を保ちつつ、スピードは全く衰えない。


 俺と歩夢は、智香より低速で滑っているので、智香は時々立ち止まり俺達の様子を伺う。他のボーダーがコース場で止まる時は、尻か膝を付いて、危なっかしい体勢で止まっている。だけど智香はトゥエッジを微妙な角度で雪面に食い込ませ、膝を軽く曲げてバランスを取っている。他のボーダーやスキーヤーがちゃんと自分を視認してくれるよう、気を配っているのだ。


 俺達が智香に追いつき、俺達が一旦先頭に出れば、再びカービングターンをしてまた先頭に出る。

ただ普通にターンするだけのシンプルな滑りだが、これほどまでに安定して綺麗な滑り方は、正直見た事が無かった。


 これが基本を徹底的にマスターし、その美しさを競うテクニカル競技なのか?!

雅が無理矢理にでもスノ部に入れたがっていた理由がよく分かる。


 あっという間に終点のハンの木高速ペアリフト乗り場に到着だ。

ゲレンデのその先にはオレンジ色の仮柵が設けられ、「滑走禁止」と描かれた横断幕が貼られていた。

その手前には、既に後ろ足のバインディングを外した雅が俺達に気が付いて、手を振りながら待っていた。


「やっほー!待ってたよ〜。」

ゴーグルを付けているので、目は分からないがフェイスマスクは付けていなかったので、口の形からニコニコしているのがはっきりと分かる。

「麻美と良菜は?」

華麗に雅の前にぴたりと止まった智香が訪ねた。

「アサミンとラナラナは、1度合流したんだけど先行ったよ。早速2本目行くみたい。」

あいつら気が早いな。


「それにしても、ともちゃん。カービングターン上手いね〜、さすが〜!」

下から俺達の滑りを見ていた雅。やはり智香のカービングターンには感心していた。

「あゆむんもグラトリ決まってたね〜。プレスのかけ方上手いね〜。」

プレスとは、ボードの重心を前後どちらかに圧を掛けた滑り方だ。ノーズにならノーズプレス、テールにならテールプレスだ。グラトリをやる上でのバランスの取り方の基本となる技だ。

歩夢はコース終盤にはテーレプレスで180や360など、スピンを掛けまくっていた。なかなかアグレッシブに決まっていた。というか、これが今シーズン最初の1本目で、ボード歴も俺と全く同じとは思えないくらいの器用さだ。なんか悔しいのぅ。


「ユーキは、なんか下手くそになってない?見てて危なっかしいよ〜。体のバランスも滅茶苦茶だし。」

俺にはダメだしが返って来た。確かにそうなんだけど…。

「やっぱりそう見えたか。久しぶりだし、初めての板だからまだ体が馴染まなんだよな。」

若干言い訳っぽいが、率直な感想としてはこれだ。


「それなんだけど、友基?体に変なクセ付いていない?ちょっと見てみたいから、何本か付き合って。」

あれだけ姿勢が綺麗な智香からすれば、俺の滑りはやはり気になっていたようだ。せっかくだから、見てもらう事にしよう。智香が一緒なら上達の近道にもなるはずだ。

「よろしく頼むよ。多分智香の言う通りかもしれない。後、智香がやっているカービングターンも教えてもらえると嬉しいな。」

「わかった。それじゃ、リフトに乗りましょ。」

俺達はリフト乗り場に向かう。

「お、智香先生のレッスンか〜。私も見学させても〜らおっと!」

雅も興味あるのか、それとも茶々入れたいのか参加する気だ。


 初滑りを遂に迎えた俺達スノ部。いよいよ本格的な活動が始まりを告げた。



実際、フラットロッカーで滑りまくった人がキャンバーに乗り換えた時ってどういう感想を持つんですかね?私最初からキャンバーだったので…(^^;←始めた当初、ネット通販でロッカーと思い込んでいたらキャンバーだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ