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スノーボードクラブ  作者: 木田駿一朗
11/15

セッション10 -初滑りの日-

いよいよ初滑り…と言いたい所だけど、ゴンドラに乗る所までですm(__)m

あと、異様に語りが多いので修正するべきかどうか…。

 11月下旬の土曜日の朝。俺達は先生の車である日産セレナで栂池高原スキー場を目指していた。一度学校に集合し、事前に準備しておいたウェアを身に付け、ギアを車の屋根に取り付けてある大型のルーフボックスに収納して出発した。

大町市中心部ではまだこれといった積雪は無いが、木崎湖を越えると徐々に景色が白く変わって行き、白馬村内では積雪も数センチは積もっていた。

国道147号線を走行している車の中からは、白馬五竜スキー場や八方尾根スキー場が雄大に待ち構えている。この二つのスキー場もゴンドラを登って行けば、山頂エリア限定でオープンしている白銀のゲレンデにありつける。


 ただし、俺達はそれより奥の栂池高原スキー場だ。入手したシーズン券が使用出来るゲレンデで一番近い場所がそこだからだ。


 学校から車を走らせて約30分。国道147号線から脇道に入り、ちょっとした山道を登って行く。広めの2車線道路なので山道というほど険しくはなかったが、その道を抜けると左前方に広大な雪原が立ちはだかる。リフトの線が何本も山に向かってのびており、そのうちの1本は異様に長くゴンドラの搬器と思われる球体が山へ向かって動いている。目的地栂池高原場に到着した。


 ベースエリアの宿街を抜けると、ゴンドラ乗り場とその駐車場が見えて来る。まだオープン時間の30分以上前だというのに、既に何十台もの車が駐車している。車のナンバーのほぼ半分は県外ナンバーだ。それぞれの車から、スキー板やボードが取り出され、今か今かと客でにぎわっている。

先生が誘導員の指示に従い、車を停車させ、エンジンを切る。


「は〜い、着いたよ〜。」

と先生が言う間もないくらい、素早い動きで雅はドアをスライドさせ外に飛び出した。

「やっほーい、早速準備準備〜!」

「あんまり慌てないでね〜雅ちゃん。」

先生はゆっくりと車を降り、ルーフボックスを開きに行く。俺達も続々と車を降り、早速準備を始めた。


 真っ先に車を飛び降りた雅は、お気に入りのBURTONの黒いスノージャケットを羽織り、同じく黒のビーニーとゴーグルを頭にかける。ゴーグルはOAKLEYオークリー製のフレームレスで、オレンジ色の球面レンズだ。既に履いていた黄色のスリムフィットパンツは、初めて出会ったとき、そのままの姿だ。懐かしく、印象的な姿だ。ビーニーから流れ出た前下がりの金髪と、碧い目も合わさり、あの時の雅が帰って来た。そんな印象に写る。


 ルーフボックスから取り出された雅の板のソールは、色とりどりのカラーを使ったBURTONのロゴタイプが記された。FeelGoodフィールグッド flyingVフライングブイ。青と赤のヘリンボーン柄の配色に、和紙で花を作ったような模様が幾何学的に描かれている。装着しているバインディングは白いESCAPADE ESTだ。ミドルフレックスのバインディングで、程よい強さのセスポンスと反発性を感じさせてくれるレディースモデルだ。

俺のFLUXのTEAMと同じく網状のストラップだ。ハンモックストラップと呼ばれるFLUXで言う所のハニカムストラップと同じ、抜群のフィットとホールド効果が見込めるらしい。


 俺もスノージャケットを羽織る。ライトグレーが印象的だ。カービングセッションでギアと一緒に買ったウェアだ。黒いパンツと合わせて、自分でも見事と思うくらいのモノトーンコーデに仕上がった。俺が着ているAAダブルエー HARDWEARハードウェアはシンプルな無地な物が多いが、どことなくクールでスタイリッシュなデザインが多い印象だ。

右のウエストポケットにあるブラウンの革製ワッペンが中々渋い。


 ウェアとギア、両方組み合せるとモノトーン率が凄まじい配色だ。ビーニーも黒なので尚更それが際立つ。更に言えばゴーグルもグレーのセメントカラーのベルトとフレームだ。SMITHスミス製のI/O。フレームデザインも部分的にレンスを固定するタイプで、別のレンズと交換しやすい作りだ。

 

 雅と俺も自分のボードを取り出し、俺は後続のメンバー達の板も取り出してあげる事にした。身長170cmの日本人男性の平均身長の俺だが、このメンバーでは女子が多いためか、俺が一番背が高い。

ここは俺が率先して皆の板を取って渡すのが紳士てもんだろう。なんて事を言ったら、歩夢や雅に小馬鹿にされそうだから口に出しても言えないけど。


 由香のボード、LOTUSを本人に手渡す。

「あ、ありがとう。」

「すごい可愛いウェアだよね、似合ってるよ。」

「そ、そうかな…。」


 まるで雪の妖精のような由香が微笑んだ。白いボヘミアンテイストの刺繍が入ったビーニーは、ボンボンが着いたキュートなデザインだ。額のDiceダイス製のゴーグルも、白いフレームにピンクのベルトがより効いている。ジャケットはSista.J(シスタージェイ)の花柄ウェアだ。白地に色とりどりの花がちりばめられ、持ち前の可愛さを引き立たせる。ピンクのパンツも加えて、もの凄く女の子らしいキュートコーデだ。

「雅ちゃんに選んでもらったのに…、派手過ぎじゃないよね?」

「良いんじゃない?ゲレンデじゃそっちの方が映えるよ。」


 由香は照れくさそうな表情をしばがら、ブーツを取り出しに行った。


 次は初めて見るギアだ。

 MNIXと記されたモデル名の白いバインディングはあまりにも特徴的だ。他のバインディングには無い、やけにごつごつとしたプロダクト。ハイバックとベースプレートのサイドを繋ぐケーブル。そのハイバックも2重構造だ。ストラップはアンクルとトゥ両方を繋いで、足全体を覆う構造だ。


 FLOWフロウ。このブランドのバインディングはなんと言ってもリアエントリー式が特徴だ。通常、ブーツをはめる時は、トゥストラップとアンクルストラップを二つ、カチカチとはめなければならないが、リアエントリー式は、その両方を一度設定すれば、後はいじる必要が無い。ハイバックを後ろに倒し、そのまま足をはめ込んで、またハイバックを起こす手法だ。リフトを下りて、ものの数秒で装着を完了させてしまうメリットがある。


 板はウエスト幅が割と太めのダブルキャンバーだ。グラフィックはデッキもソールも白と黒をベースにしたダイヤのチェックとビールをイメージしたイラストが描かれている。水色のまるで唇のようなシンボルマークが妙にインパクトがあるが、このシンボルマークはFTWOだ。


 FTWOはアルパインボードなど、レース競技に特化したブランドであるF2から派生した、フリースタイルを専門としたブランドだ。随所にF2のレーシング技術を活かし、フリースタイルボードに活用している。その中で、グラトリ専用機とも言われ、パークやフリーランでも安定性も発揮し、コストパフォーマンスにも優れたこの板は、TNTだ。


 グラトリとして人気があるTNTの持ち主がいる、と言う事は良菜の板だ。

「センキュー、友ちゃん!」

俺の事を友ちゃんと呼ぶ良菜。

ボンボンの付いたネイビーブルーのビーニーに、水色のベルトのELECTRICエレクトリックのゴーグル。球面レンズで視野の確保が広さに定評があるブランドだ。ウェアはESTVOエスティボ製で白いジャケットに水色のパンツだ。上下とも無地であるが、全体的に明るめの色を使っているので、地味な印象は全くない。ギアの配色と相まって、青系と白に統一されたカラーコーディネイトだ。


「この板、グラトリ好きにかなり人気がある板だろ?初めて見るのにすぐ良菜のだって分かったよ。」

「お、分かるー?他にも良さそうなモデル沢山あるんだけど、デザイン面白いし、安いからこれにしたんだー。」

「バインディングもリアエントリーなんだな?」

「うん、うち短いコースをガンガン廻すのが好きだから、回転率重視でこれにしてんだ。2秒あれば履けるしね?」

「2秒?凄い速いな。」

「友達と滑る時はあんまり意味ないんだけどねー?みんなストラップ式で時間かかるしー。」

そう言いながら、良菜は板を受け取って去って行った。


「歩夢、板取ったぞ?」 

歩夢を呼んで板をを渡す。板を受け取る歩夢のウェア姿は、相変わらずレディースを着こなしたかのような雰囲気だ。ダークグリーンのビーニーに、頑丈が自慢のSPY製の球面レンズだ。フレームとベルトは緑色だ。ウェアも緑系統が中心でフードと身頃はカーキ色、袖は白のエーセブン製のスタジャン風ジャケットだ。パンツの色はライトグリーン。元々緑系統が好きな歩夢は、始めからこのコーデを考えていたようだ。


「友基ありがとね〜。」

歩夢は相変わらず女の子のような笑顔で礼を言った。

「いや〜歩夢を見てるとゲレンデマジックが実在するんだなって思うよ。」

「それは雅ちゃんに初めて会った時の事でしょ?なに変な事言ってるの?あとこれユニセックスだし。」

「あ、そうだった。歩夢男だったわ。」

「うわ、わざとらしい〜。」


 次にまた見覚えの板を取り出す。俺も勧められたOGASAKAのFCだ。となればこれは智香の板だ。

バインディングはFLUXのXF。カービングに拘ったFLUXのハイエンドモデルだ。白いハイバックは中央のアジャスターから縦に細く長いラインが作られ、少しだけ肉抜きされている。ストラップは俺と同じハニカムストラップだ。一見するとシンプルだが、細かく見ると複雑な造形をしているクールなデザインだ。


「智香、板取ったよ。」

智香はヘルメットを頭にはめ、その上からゴーグルを取り付ける。Dragonドラゴン製の黒いベルトのゴーグルを付けている。ヘルメットはスノーボーダーで最もユーザーの多いBernバーン製だ。色はダークグレー。ウェアはVOLCOMボルコムのライトブラウンのジャケットにライトグレーのパンツだ。全体的に細身のシルエットで、モデル体型に似合う智香の格好良さを全面的に押し出している。

カービングセッションで買い物した際、智香は自分の服は黒か青にどうしても行きがちと言っていたが、雅はあえてそれを外しに行き、このようなスタイルを提案した。


「あ、ごめん、ありがとうね。」

「こうしてみると、智香のウェアて結構格好良いな。」

「そう?なんか私は落ち着かないな。あんまり淡めの色着ないから。」

「直ぐに慣れるよ。」

智香少し慌てたように、急いでヘルメットとゴーグルを装着して受け取る。


 残りは2つ。セレナの車高は高いので、手前の板は取り出せても奥は厳しい。ここで車に収納してあった脚立を取り出した。


 カービングセッションで先生が購入したギアだ。板は紫をベースに赤と青の模様が波打つように入り組んでいるデッキのグラフィック。ソールは同じ模様のピンクとライトブルーを背景に、サンセリフ体でFORXPと大きなロゴタイプとYONEXのロゴマークだ。


 YONEXヨネックス。バトミントンやゴルフなども人気のある国産の総合スポーツブランドだ。スノーボードブランドとしても人気があり、大半のブランドはポプラなどの木で出来たコアだが、YONEXは独自のカーボン技術で製造されたコアで、優秀な国産ブランドとしてはOGASAKAにも引けを取らない。


 そんなYONEXの中でも特に人気が高い板がこの4XP(フォーエックスピー)だ。

ソフトフレックスのキャンバーで、パークやグラトリで威力を発揮する板だ。

装着している黒いバインディングは同じYONEXのROUSE。YONEXのストラップ式のバインディングはHAMMEREDと2つあり、硬めのROUSEと柔らかめのHAMMEREDとある。


 先生はカービング用の板とパウダーボードを持っているそうだが、雅に触発されたのか、これを気にフリースタイル用ボードも欲しくなったとの事だ。パークやグラトリはあまりやらなかったらしいが、せっかくだから雅に教えてもらいたいらしい。


「友基君ごめんね〜。わざわざ〜、皆の分取ってもらって〜。」

にっこりと微笑みながら言う先生。えんじ色のビーニーにANONアノンの黒いベルトのゴーグル。ANONのゴーグルはマグネット式で簡単にレンズの交換が出来るMAGNA TECHが特徴だ。先生もスペアレンズをいくつも持っており、天気の変化でレンズもすぐ返られるようにしているらしい。


 ウェアは686の紫のジャケットにオレンジのパンツ。全体的にスリムフィットだ。普段の喋る口調からイメージが沸きにくいが、鮮やかな色合いはどこか大人の女性の色気を感じさせる。

「いえ、構いませんよ。」

ルーフボックスを空けた後、そのままバックドアを空けて、皆がブーツなどを取り出せるようにしていた先生。先生はまたルーフボックスに戻り各々の板を降ろしてあげようとしてたみたいだが、雅が真っ先に取り出し、俺もそれに続いたので、先生の変わりに俺が取り出す事にした訳だ。


「でもさすが男の子だね〜。この部活〜、女の子が多いから〜、こういう時に〜、背が高くて〜、力がある〜、男の子て頼もしいね〜。」

いやいや、俺は背は男子の平均身長レベルでしかないし、力だってそこまである方じゃない。

「そうですか、ありがとう御座います。」

取りあえず褒められたのでお礼でも言っておく。

「いいえ〜、こちらこそありがとう〜。」


 ちなみに先生に対して未だに敬語だが、もういい加減喋りやすいように喋らせてくれと懇願して、結局呼び名は先生のままで、口調も敬語のたぐいだ。元からその口癖の麻美と同様、喋りやすいなら仕方ないねという形で納得してもらえた。


 さて残りの板は1つ。麻美の板だ。

パウダー好きの麻美の事だからパウダーボードかと思ったら、意外と普通のフリースタイルのディレクショナルツインの板だった。


 デッキはノーズとテールが黒で、ウエストがワインレッドのグラデーションカラーだ。

ソールはジャングルの中に咲く、赤い花々のイラストを背景に極太のサンセリフ体でRIDEと描かれている。

シェイプをよく見たら、一見キャンバーのように見えたが、ノーズとテールの反りが意外と長く高い。ダブルロッカー、あるいはハイブリットキャンバーのたぐいだ。


 RIDEライドは俺が中学の時に使っていたK2の姉妹ブランドだ。K2と同じくロッカーボードのラインナップが多いブランドだが、その威力を発揮させたハイブリッドキャンバー技術も優れている。最近はフリースタイルとパウダーの両方で楽しめるモデルが評判だ。


 この板であるSATURDAYサダデイもその一つだ。パウダーデートに出かけようをコンセプトに、フリースタイルでもバックカントリーでも、徹底的に楽しもうというテーマで作られたレディースモデルだ。そう思えばパウダー好きの麻美らしい板なのかもしれない。


 装着している白いバインディングは、歩夢と同じブランドのUNION。モデルはレディースで人気のあるTRILOGYだ。背の高いハイバックに、縦2列アーモンド型に綺麗に肉抜きされている。


 麻美は俺をジト目で睨み付けていた。

グレーのアラン模様のビーニーに、VONZIPPERボンジッパーの白いフレームとベルトのゴーグル。

ウェアは NIKITAニキータのグリーンのジャケットとえんじ色のパンツ。どちらもやや深みのあるアースカラーだ。自然を楽しむという麻美を象徴するカラーなのかもしれない。


「紳士的な態度で女性に優しくしようという魂胆でしょうが、下心が丸見えですよ友基。皆を騙せてもボクは騙されません。その汚い手でボクの板に触らないで下さい。」


 ジト目で睨み付ける麻美はなんとまぁ失礼な事を言う。人の親切をそんな風に受け取るか?

ムッとした俺は麻美と同じような目つきでにらみ返した。まるで見知らぬ猫同士の探り合い。


 その間約3秒。おれはそっと麻美に笑顔を見せて、取り出しかけた麻美の板をルーフボックスに戻し、そっと閉じた。


「あ〜〜〜!!ごめんなさい、ボクが悪かったですー!言い過ぎました!友基様に取って頂けるなんて光栄な事です!ボクの板もその綺麗な手で取って下さい、お願いします友基様!」


 ジト目が一気に涙目になった麻美は、急に掌を返して、俺に泣きついた。もの凄く芝居臭いが、本当に泣かれても困るので、取りあえず再度取り出して渡した。


「へいへい、はいよ。」

俺はどことなく素っ気ない態度で渡した。受け取った麻美は再び掌を返したかのようにジト目に戻った。

「全く、か弱い女の子にこんなひどい仕打ちををするとか、最低ですね。」

そう言って受け取った麻美はゴンドラ乗り場へスタスタと歩いて行った。

黙れクソアマ。今度板を渡す時は、バインディング外して渡してやる。


 これで全員の板を取り出した。今度は本当にルーフボックスを閉じる。先生は脚立をクルマに戻し、ゲレンデに持って行くための荷物を全て取り出して鍵を閉めた。皆は先に準備を終え、ゴンドラ乗り場へ足を運んでいた。俺と先生もゴンドラ乗り場へと向かう。


「いえ〜い!!初滑り〜!!」

「いえーい!!初滑りー!!」


 ゴンドラ乗り場と併設しているチケット売り場では、すっかりハイテンションでボードを 天に掲げながら、まだオープンしていないゲレンデに向かって、走りながら騒ぐ雅と良菜。こいつら似た者同士なのか。


 俺の見ていたすぐ後ろでは、呆れてその様子を見物している智香と麻美。

「全く、今時の子どもだってあそこまで馬鹿みたいにはしゃぎませんよ。良菜のおつむなら仕方ないとしても、雅も精神年齢いくつ何でしょうか?」

「多分5歳くらいじゃない?雅のおつむも壊滅的にヤバいし。」

麻美と智香は淡々と毒を吐き捨てる。こちらも似た者同士か。


 一方で板を抱きしめながら、もじもじしている不安な様子の由香。

「どうしよう。緊張してきたよ…。」

由香にとってはいよいよスノーボードデビューだ。ボードをする事がどんな事なのか全く想像出来ないだろう。

「大丈夫だよ。ゆっくり滑れば怖く無いし、別に厳しい練習する訳じゃないんだから気楽に行こうよ。」

歩夢は由香の肩をポンと叩いてなだめている。

「そうだよゆかち!せっかくなんだから楽しんで行こうよ〜!」

「そうだそうだ、ゆっち!!ボード滅茶苦茶楽しいよー!」

ハイテンションをキープしたまま戻って来た雅と良菜が由香を励ます。

みんなで由香のスノーボードデビューを応援しよう。


 チケット売り場へリフト券を買いに行っていた先生が、ICカードを人数分持って俺達の元に戻って来た。事前にシーズン券を先生に渡しておいて、まとめてスキー場専用のリフト券を取りに行ってもらっていたのだ。

「皆〜、おまたせ〜。リフト券だよ〜。」


 各々リフト券となるICカードを受け取り、各自パスホルダーの中に収めた。俺は左手にはめる事が出来るタイプのパスホルダーにカードを入れた。IC用の自動改札を通って、リフトに乗るタイプのスキー場だと言う事は既に知っていたので、楽にセンサーに近づけさせれるように選んだパスホルダーだ。


 だけど、他の人は大丈夫だろうか。腕に付ける人、胸に付ける人、腰に付ける人と様々だ。付ける場所を間違えると、結構しんどい体勢を余儀なくされるが。


 全員ゴンドラに乗る準備は完了した。だけど、乗車時間までまだ少し余裕がある。ここで雅が一声かけた。

「皆〜!準備体操しようよ!」

「そうね〜、ちゃんと体ほぐさないと〜、いけないもんね〜。」

雅に続いて先生も同調する。言われてみればそうだな。朝早く気温も大分低い。体は固まっている。間接を柔らかく曲げやすくしないと、ボードは危ない。


「よし、それじゃいったん皆集まろうか!」

俺も皆を呼ぶ。ゴンドラやリフト券売り場の列の迷惑にならないように、少し離れた場所でスノ部のメンバーを集めた。


「え〜?わざわざ皆でするんですか?良いじゃないですか、各自適当にやっておけば〜。第一今した所で、これからゴンドラで20分座りっぱなしですよ?また体硬くなってしまうんですから、ここでしなくても。」

麻美がブーブー文句垂れはじめた。良いから黙って言う聞けよ。


 この栂池高原スキー場のゴンドラ、イヴは山頂までの距離は4120M、所要時間20分はかかる、全国でもトップレベルの長距離索道だ。


「良いじゃん、せっかくだから部活らしいことしようよ!」

ごねる麻美に対し、雅はひょうひょうと言い返す。

部活らしくね。まぁそういう意識て大事だよな。その辺はさすが部長と言うべきか。


「え〜?でもですね…」

「麻美ちゃん〜。雅ちゃんは〜、何か間違ってる事、言ってるのかな〜?」


 更に反論しようとする麻美に先生がいつもの口調で、麻美に語りかける。

だけどいつものような、ほんわかした感じの目では無い。

明らかに笑っていない目。

まるで獲物を狩る肉食動物の目だ。

「いえ、すいません。」

獲物に睨まれた草食動物は危険を感じたのか、これ以上は関わるまいと身を引いた。

さすが先生、冷静に相手を屈服させるその能力。これが教師と言うものなのか。


 ただ、麻美はどこかこういう集団行動が苦手な節がたまに見受けられる。

このスノ部でも良菜と喧嘩する以外はあまり人と会話してる印象が少ないように思える。毒舌が酷いというのはあるにせよ、各々嫌い合っている訳ではない。

だが、雅と同じようなノリで、ガンガン他人とコミュニケーションを取る良菜と比べると、どうしても馴染めているとは言い切れないのだ。いずれにせよ経過観察が必要かもしれない。あまりモヤモヤした関係は俺はあまり好まない。雅は尚更だろう。


 ひとまず雅のかけ声で皆で準備体操を行う俺達。手足や間接をほぐし、ゴンドラ乗車を待つ列へと並ぶ。気が付けば乗り場は行列が出来ていた。


「本日は栂池高原スキー場にお越し頂きまして、誠にありがとうございます。これよりゴンドラリフト・イヴの運行を開始致します。」


 ゴンドラの営業開始アナウンスと同時に、行列は乗車に向けて動き出す。

俺達もその列を追い、乗り場へ足を運ぶ。

チケット売り場のすぐ裏手にある階段を昇り、2階へ上がると、いくつもの搬器がゆっくり動きながら、乗客を乗せている。

乗客らの動きを見ると、スキーはドアに取り付けられているラックに入れる事が出来るが、ボードは中に持ち込まなければならない。そのため、安全のためにエッジカバーをノーズに被せ乗り込んでいる。

俺達もエッジカバーを被せてゴンドラに乗り込む。


 いよいよ初滑り。麓は弱い降雪だが、辺り一面は真っ白だ。山頂では強い降雪らしく、大分積雪もあるらしい。ゴンドラは白銀のゲレンデに向けて登りはじめた。

今年の鹿島槍スキー場のシーズン券も販売が開始されて楽しみな一方、ナイターが第2ペアリフトのみの運行で寂しい…。ブナのナイターいつか復活してくれないかな…。

それにヤナバが今シーズン営業しないと言う情報が…なんてこったい、せっかくの広いパークゲレンデなのに!

ちょっとどうなるよ、大町のナイターゲレンデ(;_;)

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