3-1
最後尾のコンテナ車が消える映像を、俺は三度見せられた。
十二台の無人コンテナ車が、午前二時十七分の高架道路を走っている。
先頭から十一台目までは、何事もなく街灯の下を抜けた。最後尾が、広告ホログラムの影に入る。その瞬間、道路から一台分の重さが消えた。
事故の音はない。車体が傾くことも、火花が散ることもない。ブレーキランプすら、最後まで綺麗に点いている。
ただ、そこにあったはずの車だけが、次の映像にはいなかった。
俺は、映像を巻き戻して、もう一度、同じところで止めた。何度見ても、消える瞬間そのものは映らない。街灯の影に入る手前まではいる。影を抜けた先ではいない。影の中の、ほんの一瞬。そこだけが、どの角度のカメラにも映っていなかった。
偶然、全部のカメラの死角に入った――そんな都合のいい影は、都市には存在しない。誰かが、影のある場所を選んで、そこへ道を通した。事故ではない。設計だ。
誰かが地図の上から線を一本消すように。そして、線の上を走っていたものまで、ついでに消してしまったように。
湾岸物流環状線は、夜になっても眠らない。
昼の顔は清潔だ。企業ロゴを載せた白い無人トラックが、港湾区から工業島へ、医療区画へ、企業居住棟へと整然と荷を運ぶ。だが、深夜二時を過ぎると、環状線は少しだけ別の顔になる。伝票に載らない荷を積んだ車が、監視の薄い区間を選んで走り、どこにも到着しないまま、また戻ってくる。
高架道路の下では、夜勤明けの労働者が紙コップの合成珈琲をすすり、上空では配送ドローンの航行灯が、赤や緑の線になって流れていた。人間も、亜人類も、怪異市民も、誰かが決めた番号の中で働いている。その番号から外れた者は、地上の道を歩けない。
顔認証ゲートが弾く。企業居住区の壁が拒む。公共交通の改札が閉じる。歩けるのに、歩ける道が、どこにもなくなる。
けれど、都市というものは案外しぶとい。表の道路が塞がれれば、裏の道が残る。地図から消されても、古いコンクリートはそこにあり、錆びた標識は暗がりに立ち、通ったタイヤの跡だけは嘘をつかない。
嘘をつくのは、いつも地図を書く奴だ。




