8.危険と隣り合わせ
祭り会場は、例年通り大勢の人たちで賑わっていた。
何を買うにも行列に並ばなければならない。
そんなことはお構いなしで、葉月の要望によりひたすら並んでは、ベンチで待つ葉月に食べ物を運ぶ俺。
パシリにも程があるだろ。
一通り食べてお腹が満たされたお嬢様とベンチで一休み。
花森さん、いないなぁ。
気づけば彼女を探してしまう俺がいた。
てか、見つけてどうするんだ?
などと悶々と考えていると夜空に大きな花が咲いた。
打ち上げ花火の時間になったらしい。
皆が花火を見上げる中、彼女はどうしているのだろう。
寂しい思いをしてはいないだろうか。
そんなことを考えながら俺は夜空を見上げていた。
花火が終わり、満足気な葉月を連れ帰ろうとした時
「すみません」
と俺と同じ歳ぐらいの浴衣姿の女の子が声をかけてきた。
え、逆ナン?なわけないか。
とかバカなことを想像していると、その子から耳を疑う言葉が出てきた。
「白い杖を持った女の子見ませんでしたか?」
白い杖、白杖のことか?
「いや、見てないですけど」
「そうですか。ありがとうございます。どこ行っちゃったんだろ」
と小走りで去ろうとする彼女を、俺は呼び止めた。
「あの、その人の特徴教えてもらえますか?」
「え、あぁ、身長は私より少し高くて黒髪ロング、いや今日はお団子にしてるんですけど、浴衣は赤でピンクの花柄で」
「わかりました」
と走り出そうとしたが、葉月を一人にするわけにはいかない。
「おー太陽来てたのか」
声のした方を振り向くと、和希と和希の彼女の田辺さんがいた。
「和希ちょうどいいところに!悪いけどちょっと葉月と一緒にいてくれないか」
「は?いいけど」
「ありがと、頼んだ」
と言い残し俺は走り出した。
祭りは終わり、徐々に人が減ってきた祭り会場を15分ほど走り回ったが、彼女らしきはら2人影は見当たらない。
どうしたものかと頭を抱えていると、少し離れた薄暗い広場に2人の人影を見つけた。
暗くてあまりよく見えないが、金髪で黒ずくめの男性とお団子ヘアで赤い浴衣の女性が、暗がりに向かって歩いていく。
「花森さんっ」
確証はないが思わず呼び止めていた。
女性だけがこちらに振り向く。
「え、大空くん?」
男性がギロリと俺を睨んだ。
「ど、どこ行くの?」
「それが友達と逸れちゃって、この方が一緒に探してくださってて」
「その友達と会って俺も探してたんだ」
「え?そうなの?よかった」
と安堵の表情を見せ、男性の方に向き直る花森さん。
「もう大丈夫みたいです。ありがとうございました」
と花森さんが頭を下げると
「いえ」
とだけ言い、男性はそそくさとその場を去った。
去り際、俺にしか聞こえない距離で、男性は舌打ちをした。
多分花森さんは、危ない状況だったことに気づいていないんだろう。
でも、変に伝えてトラウマになったらと思うと真相を告げることはできなかった。
その後、無事友達と再会できた花森さんを見送り、和希たちに礼を言い俺たちも帰路に着いた。
花森さんには会えたけど、楽しい思い出にはならなかったな。
でも浴衣姿は綺麗だった。
そして、あのまま連れて行かれていたらと考えると怖くなった。




