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5.変わり始めた日常

それから毎朝、彼女に声をかけた。

ドア付近の席が空いていればそこに彼女を座らせて、俺は、隣が空いていれば当たり前のように隣に腰を下ろし、隣が空いてなければ彼女の前の吊り革に捕まった。


席が空いてない時は、2人で並んでたって、途中で席が空けば彼女を座らせた。


朝の電車では、彼女の隣にいるのが当たり前になった


初めは、周りの視線が気になったりもしたが、彼女と話していると、そんなことも気にならなくなった。

たった10分程度だが、毎朝のこの時間が俺の大切な時間になっていった。


会話の中でわかったこと。

彼女の名前は花森香。

盲学校に通っていて、俺と同じ高校2年生。

白い杖は白杖(はくじょう)と言って、目の不自由な人の命を守る大切な杖なんだそうだ。

彼女は光はわかるが全く見えないらしい。


あとは俺のしょうもない話をただただ聞いてくれている。

本来こんなにベラベラしゃべる方ではない俺だが、ニコニコしながら聞いてくれる彼女を見てるとつい喋りすぎてしまう。


「で、和希がばかでさ、、、ごめん、こんな話、興味ないよね」

「ううん、私のクラス女子3人だから、男の子の会話とか新鮮で面白い」

ときらきらした目で俺を見てくる。

でもこの目に俺は映っていないんだなと思うと、胸がギューっとなった。

彼女に同情してではなく、俺を見てもらえないということがなんたかとても切なかった。


その週末、俺は和希とカラオケに来ていた。

風ちゃんが家の用事で相手してくれないと泣きついてきたので、カラオケに連れ出したのだ。


受け付けでならんていると、前の方に見覚えのある後ろ姿を見つけて俺は驚いた。

「どした?」と和希が俺の目線を追って言った。

「あれ白杖だっけ?目の見えない人かな」

「いや、あの杖持ってるからって全く見えないとは限らないよ。近づかないと見えないとか、視野が狭いとか、いろんな理由で一人で歩くのが難しい人も持ってるんだ」

「へー、なんで太陽がそんなこと知ってるんだ?」

「やーテレビか何かで見た」


本人に教えてもらったとは言えなかった。

和希に花森さんの話をしたらどう言う反応をするだろうか。


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