17.真実を知る勇気がなかった
翌朝、香ちゃんに昨日の話もできなかった。
もし香ちゃんまで「彼は特別な存在なんだ」なんて言い出したら、俺は聞いていられる自信がない。
登校すると、和希が俺の顔を見て「まだ聞けてないのかよ」と呆れ顔で言ってきた。
明らかに昨日より聞きづらい状況になってしまった。
香ちゃんに言えないことが溜まっていくたび、朝の会話が楽しめなくなってきている。
もう一層、距離を置いてしまった方が、楽になるのかもしれないとまで考えてしまう。
和希に明日こそ聞けよと念を押されたが頷くことはできなかった。
その次の朝、香ちゃんは俺の「おはよう」の声を聞くなり
「一昨日、渚先輩が駅で迷ってるところを助けてくれたんだって?」
「あぁ、彼渚さんって言うのか」
「教えてよー。ありがとね」
なんで香織ちゃんがお礼言うんだ。
「それに映画館でも会ってたんだって?なんで教えてくれないの」
「いやー言うの忘れてた」
「なんか、太陽くん、今週様子変じゃない?元気ないっていうか。私の介助が負担なら言ってよ?」
「違う違う、ちょっと最近睡眠不足でぼーっとしてるかも」
「大丈夫?てか私が話しかけてると寝れないよね。寝ていいからね」
「い、いや大丈夫だよ」
「いいからちょっとでも休まないと一日持たないよ」
そう言い香ちゃんは黙ってしまった。
彼女に嘘ついて気を遣わせて、俺は何をやってるんだ。
その夜、香ちゃんからメッセージが届いた。
「太陽くんごめんね。私太陽くんの優しさに甘えすぎてた。明日からしばらく別の車両に乗るね。ゆっくり休んでね」
俺は「そんなことないよ」と返信したがひょっとしたらこのまま距離をとった方がいいのかもしれない。
俺にとっても彼女にとっても彼にとっても、、、
翌朝、彼女はいつもの車両に現れなかった。
本当に車両を変えたのか。
俺は探しにいくことはしなかった、できなかった。
その日も多分、和希は俺がまだ香ちゃんに言いたいこと言えてないことには気づいていたと思うが、もう何も言ってこなかった。
ごめん和希、あんなに応援してくれたのに。
俺は香ちゃんと彼の間に入る勇気はなさそうだ。
その日の帰りの駅。
改札を通ると白杖を持った男性が立っていた。
渚さんだ
声をかけても気まずいだけだし、今は困っているようには見えないので、俺はそのまま立ち去ろうとした、その時
「太陽くん?」
呼び止められた。
「あ、はい。こないだの、、、」
「はい。自己紹介してなかったですね。神崎渚です。」
「年上なんですからタメ口でいいですよ。てか何で俺のことわかったんですか?」
「あー僕視野は狭いけど視力はまだそこまで悪くないから、なんとか見つけられたよ。3日かかっちゃったけど」
3日間もここで目を凝らして俺を探してくれていたのか。
「それで、ちょっと話いいかな」
と俺らは駅のベンチに腰を下ろした。




