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16.聞きたいけど聞けない

翌朝、いつも通り香ちゃんと並んで座る。

気になるけど、映画の話を振る勇気はなかった。


学校に着き、自分の席に座ると、和希が俺の顔を見るなり

「まーた何か言いたいこと言えずモヤってんな」

「え、なんで」

「お前は顔に全部出るからな。んで何があった?」

俺は和希に映画館での話をした。

「だからさー本人に聞かなきゃわからないことを勝手に想像して落ち込むなよ。気になるならちゃんと聞けって。」

「でも彼氏でもない俺がいちいちそんなこと聞くのってどうかと思うし」

「そもそも太陽、お前は花森さんが、彼氏持ちなのに他の男と2人で年越しを過ごすような女だと思ってんのか?」

「それは、、、てかなんで年越し一緒だったこと知ってんだよ」

「ふふーん、俺にはすべてお見通しなんだよ。まぁ普通に俺も風ちゃんと一緒に行ってたんだけどな。とにかくちゃんと本人に聞くんだぞ。もしかしたらめちゃくちゃボーイッシュな女の子かもよ?」

とこんな時でも笑わせようとしてくる和希。

いつもバカなことばかり言ってるのに、なんで恋愛のことになるとこんなに頼もしくなるんだ。


その日の帰りの駅で、白杖を持った男性を見かけた。

男性はキョロキョロしながら同じ道を行ったり来たりしている。

「お手伝いしましょうか?」

そう声をかけて気づいた。

この人、映画館で香ちゃんと一緒にいた人だ。

「すみません、改札口ってどっちですか?」

「あぁ、俺も行くんで一緒に行きましょうか」

「ありがとうございます。お願いします」

俺が「右肩どうぞ」と肩を寄せると、男性は左手を俺の肩に置いた。

ゆっくりと歩き始める。


「介助慣れてますね。やられたことあるんですか?」

そう男性に尋ねられた。

「えぇ、目の不自由な知り合いがいて何度か」

「へーそうなんですね」

俺はたまらず聞いてしまった。

「あのーこないだの日曜日、映画館にいませんでした?」

「え、」

すごく驚かれた。

「すみません。初対面の人にこんなこと言われたら怖いですよね。いや、その知り合いと一緒にいた人によく似ていたもので」

「え、もしかして知り合いって香のことですか?」

呼び捨てなんだ。

「あ、はい。香さんと朝の電車が一緒で」

「もしかして電車でいつも席を譲ってくれてる、、、?」

「あ、そうです」

香ちゃん、俺のことこの人に話してたのか。

「いつも香がお世話になってます」

何そのうちの香が的なの。

「彼女ほんと明るくて前向きですごいんです。僕1歳年上なんですけど尊敬してるんです」

と彼は爽やかな笑顔で話し出す。

「僕、中学の頃から香と同じ学校でその頃は一般の中学だったんですけど、香とは部活が一緒で、それで偶然にも同じぐらいの時期に目の病気が発覚して。一般高校に通うのは難しいと医者に言われて、僕は絶望して。。。盲学校なんて行きたくないって言ってたら香に『1年後に私も行きますから待っててください』って笑顔で言われて、その言葉ですごく安心できて、盲学校に行く決心がついたんです。香がいなかったら多分僕は引きこもりになってた」

そして彼はこう締め括った。

「あの笑顔、大好きなんですよねー」

俺は胸がキューっとなった。

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