11.君のいない朝
あっという間に夏休みが終わり、いつもの日常が戻ってきた。
いつもの電車にいつもの花森さん。
でも、夏休み前より彼女との距離は縮まったように感じる。
夏休みの宿題のレポートは先生に刺さったらしく、みんなの前で紹介された。
すごく恥ずかしかったが嬉しくもあった。
和希に「やっぱり花森さんのこと気になってんじゃん」とか散々いじられた。
そんなある日の朝、珍しく花森さんがいつもの電車に乗って来なかった。
彼女に出会ってから、こんなことは初めてだった。
彼女も人間だ、体調を崩すこともあるだろう。
そうは思ったが、気になって仕方ない。
悩みに悩んだ末、昼休みに花森さんにメッセージを送ってみた。
1日休んだぐらいでメッセージ送るなんて、和希にもしないのに、重かったか?
でも心配だし。
しかし、夜になっても返信はなかった。
翌日もそのまた翌日も、花森さんは電車に乗って来ず、メッセージも送られてこなかった。
大怪我でもして入院したとか?
それか俺か何か失礼なことを言った?それで電車の時間変えたとか?
考えはどんどん悪い方向に向き、俺は苦しくて悲しくてたまラなかった。
彼女に会えなくなることが、こんなにさみしいなんて思わなかった。
何より嫌われたかもと思うと、辛くて胸が苦しかった。
彼女に会えなくなって1週間、突然俺のスマホに登録していない番号から電話がかかってきた。
でもこの番号、なんか聞き覚えがある気がする。
恐る恐る通話ボタンを押した。
「もしもし」
「大空くん?花森です」
そこには聴き慣れた優しい声があった。
俺は動揺しすぎてすぐに声を出すことができなかった。
「、、、花森さん?」
「実はちょっと怪我しちゃってね、大したことはないんだけど、親に送り向かいしてもらっってるの」
話によると、1週間前の登校時、自転車とぶつかり転んでしまった際、手を捻って白杖が使えなくなってしまったらしい。
スマホは転んだ拍子にカバンから飛び出し、アスファルトに叩きつけられ、壊れてしまい修理に出しているので、夏祭りの時の友人に、スマホを借りて電話してきたとのこと。
それで俺のメッセージは届かなかったのか。
「大空くんのことだから、私が心配で心配でしょうがないんじゃないかなーって」
と冗談ぽく言う彼女の言葉に、俺は食い気味に答えた。
「心配したよ、めちゃくちゃ心配した。大怪我したんじゃないかとか、俺のことが嫌になったんじゃないかとか、めちゃくちゃ不安だった」
数秒後、スマホの向こうから啜り泣く声が聞こえた。
「ありがとう。そんなに心配してくれてたなんて、すごく嬉しい。心配かけてごめんね」
気づくと、俺の目からも涙が溢れ出していた。
「本当に良かった」
俺らはしばらく泣きながら笑った。




