第7話 部活の後輩からは逃げられない
「九重〜、この書類、後で職員室に届けてくれな〜」
「わかりましたー」
「それじゃあ、九重、先に部室に行ってるぞ〜」
「おう、また後でな」
「これか……結構多いけど、これくらいなら……」
「セ・ン・パ〜〜イ!! 可愛い後輩が迎えに来ましたよ!」
「桃花、ごめん! 今日は先に行ってくれるか? ちょっと用があってさ」
「え? どういうことですか? もしかして、モモに内緒で誰かに会いに行くんですか? 許せませんよ? センパイ?」
「違うって、この書類を運ぶっていう面倒な仕事が残ってんだよ」
「……そうだったんですね〜。せっかくなら、モモが手伝います!」
「お、マジか。助かるわ! じゃ、こっちの方頼む」
「はい! でも〜手伝ったので〜、なんかご褒美が欲しいです〜」
「俺のできる範囲でな。ほら、行くぞ」
「は〜い、安心してください。ちゃ・ん・と、センパイのできる範囲ですから!」
「……よいしょっと。それでご褒美はなんだ? 本当に俺にできることだよな?」
「……こんなところで、恥ずかしいです、センパイ」
「は?」
『センパイには……モモの所有物になってもらいます!』
「え? どゆこと?」
「何回も言わせないでください。センパイは今日から、モモのものになるんです。中学の時にセンパイと会った時から、これは決定してたんですから。ずっと見てましたよ?……センパイを幸せにできるのはモモしかいません。だから、誰かに盗られる前に……」
「……ちょっと待ちなさい!」
「瑠璃先輩!?」
「出ましたね。女狐……先輩」
「誰が女狐よ! ……全部見てたわよ。九重くんはアンタのものじゃない。彼は私を追いかけてここに来たの。九重くんを好きにしていいのは私だけ。泥棒猫の入る隙なんてないのよ」
「……そんなことありません! センパイ、こっち!」
「ちょっ!?急に腕掴むなって! むぐぅ……っ!?」
「……んちゅ。……ふふ、はぁ。どうですか? センパイのファーストキス、モモがいただきました」
「桃花……おまっ……!?」
「このまま、センパイの『ハジメテ』は全部モモがいただきます。……瑠璃先輩? 入る隙なんて、どこにもありませんよね?......ね、センパイ?」
――俺という一人の人間を巡って、最悪の「奪い合い」が始まってしまった。
――この日から、俺の日常は完全に壊れ始めた。




