公正8
その点、瑠璃はいつも、新鮮な驚きと感動をくれた。
密かに温めていた、公正の変な興味にも、おもしろがってつき合ってくれた。
こういうことは、舞台に似ている。
つまり、役者が白けてしまったら無残なことになってしまう。
瑠璃は期待以上に振舞ってくれた。
ベッドの上で、二人は真剣に向き合う、息の合った役者だった。
獣臭さにも似た臭いが充満する中、ぬるぬるした液体にまみれて、二人はずぶずぶに愉しんだ。
瑠璃との関係を終わらせて、堅実な家庭生活を誠実に営むべきだとは、公正にもわかっていた。
が、どこをどうしたら、八方丸く収まるのか。
まるで見当がつかなかった。
そうこうしているうちに、瑠璃が妊娠した。
さすがに、何食わぬ顔で影山家で生活することは難しいので、瑠璃はマンションに移った。
公正も、瑠璃と会いやすくなった。
この頃にはもう、幸子と一緒にいることが、公正にはほとんど苦痛になっていた。
生活費は渡しているのだから、もう勘弁してくれ。
本音としては、そんなところだった。
出産するまでの間が、公正と瑠璃双方にとっての、最も幸せだった月日だった。
認知するかしないかなど、瑠璃は問題にもしなかった。
「あなたがいてくれたら、それだけでいいの。
ただ、一つだけ。
生まれた子どもには、パパって呼ばせてね」
いじらしさに、公正は瑠璃をかき抱いた。
だが瑠璃は、母親としては危うかった。
赤ん坊の夜泣きでほとんど寝られなくなると、今にも赤ん坊を投げ捨てそうに荒れた。
そんなことが起きたら、公正の所業が世間に知れ渡ってしまう。
公正はなんとか、夜間のベビーシッターを見つけた。
朝から夕方までは赤ん坊は保育園に預け、それ以降はシッターに預けた。
保育園やシッターが休みの日は、どうしようもなかった。
初めは公正も赤ん坊の面倒を見ていたが、公正だって忙しいのだ。
仕事もしていない、家事もしないなら、瑠璃が子どもの面倒を見るべきではないのか?
せいぜいが、週に二日ばかりなのに。
公正は、仕事を言い訳に、しばらくは自宅で過ごすことにした。
たまには幸子の方もケアしないと。
一応、夫なのだから。




