公正7
それからは、公正にもよくわからない。
気がつけば、自分の欲望の先端で、熱く溶けた瑠璃の裂け目を、滅茶苦茶に搗いていた。
身体の相性は、最高だった。
まさかこんな女と。
われに返った公正は、驚きと、いくばくかの敗北感に襲われた。
しかし、公正の腕に顔をこすりつけてくる瑠璃は、突然なつくことに決めた、野良猫のようだった。
汗と摩擦ではげ落ちたとげとげしい化粧の下からは、負けん気だけは人一倍の、飾り気のない素顔がのぞいていた。
難しい陰謀など、瑠璃にできるはずがなかった。
ただ、全力でぶつかっていくだけ。
死ぬか生き残るか、二つに一つの、切り込み隊。
自分のような抑揚のない人間には、意外とこんな単純な女が似合っているのかもしれない。
公正は苦笑した。
ばれたかばれなかったかわからない時点で、影山家に自ら告白して破滅を選ぶほど、公正は愚かではなかった。
結婚式は、盛大に行われた。
五色に輝くドライアイスの煙の中に下りていくゴンドラの上で、幸子と腕を組んだ公正は、にこやかに愛想をふりまいた。
後ろめたいことがあると、人間は謙虚で慎重になるものだ。
幸子は、予想通りの女だった。
つまり、おもしろくもなんともなかった。
家の中でも外でも、公正を立てて、黙って従う。
口答えもしない。
能面のような美しい顔。
何を考えているのか、まるでわからない。
暖簾に腕押し。糠に釘。
手ごたえの無いこと、甚だしい。
そういう女を求めていたのは、公正だった。
それを棚に上げて、公正はいらついた。
ベッドの中でも。
端に寝ているのを手を伸ばして抱き寄せると、幸子は恥ずかしそうに身を縮め、貝のように固くなった。
最初は新鮮だったが、いつまでたっても、幸子は熱く解けようとしなかった。
いやなのだろうか。
性交が? 公正が?
女を無理やり犯す趣味はなかったし、自分好みの女に育てたいという情熱ももてなかった。
公正は、次第に幸子への興味を失っていった。




