公正6
瑠璃と一線を越えたのは、そういう中でのことだった。
あんまりしつこく言い寄ってくるから。
影山夫妻によるストレスが、全部瑠璃に向かった。
禁欲が続いて、性欲のはけ口が欲しかった。
いろいろと理由はつけられたが、そのくらいのことなら、我慢できないこともなかった。
ホテルに引っ張り込まれながら、怒りや呆れを通り越して、公正はだんだん面白くなっていた。
こんなに、なりふり構わず必死になる女は、初めてだった。
これは、本気と思ってもいいのだろうか。
それとも、最後の捨て身の作戦なのだろうか。
ホテルに瑠璃と一緒に入るところをだれかに見られたら、もうおしまいだった。
影山家の耳に入ったら、全てが破談になるだろう。
結婚も。この地域で働くことも。
しかし公正は、もうどうでもよかった。
幸子と結婚して影山家の娘婿になることに、それほど魅力を感じられなくなっていた。
なにもかも面倒くさかった。
自由の身になるのも、いいかもしれない。
弁護士資格があるのだから、どこか遠くに行っても、なんとかやっていけるだろう。
そう腹を括れば。
目の前にどうぞと差し出された若い女の身体を、味見しないのはもったいない。
たとえ性格に難があっても、身体は上等そうだし。
今日は、どうやって誘惑してくるのだろう。
今までの、児戯にも等しい無邪気な誘惑を思い返して、公正はほほえましく見守る。
潔く真っ裸になった瑠璃は、しかし、急に憑き物が落ちたらしく、あわてて服を拾い上げようとした。
その瞬間。
公正自身にも思いがけないことに。
突如として、始原の欲望が、公正の腹の底から脳髄を衝きあげたのだった。




