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瑠璃11

 女の子が生まれた時も。


 翡翠、という名は、日向がつけたものだ。

 ママが瑠璃だから、娘も宝石の名前がいいな、と。



 一年もたたないうちに、幸子の方にも子どもが生まれた。


 義務だから仕方なかったんだ。

 許してくれ。

 それに、女の子の方がかわいいに決まってる、と日向は何度も言った。



 瑠璃も翡翠も、影山の姓のままだったが、それがなんだというのだろう?

 日向は、ほとんど瑠璃と暮らしているのと同じだったのだから。



 いくつもの春。夏。秋。冬。

 親子三人で、途中から犬も加えて、仲良く、幸せで。






 それなのに、どうしてこうなってしまったのだろう?

 原因は、どこにあったのだろう?




 瑠璃は、テーブルの上の酒瓶(さかびん)やグラスを、思い切り払った。

 激しい音がして、瑠璃の足にたらりと血が伝った。






 どうしていいのかわからず、ふらふらと影山家に行くと、母が呆れた顔でつぶやいた。

「なんだい、汚いなりをして。

だれかと思ったよ。

ずうっと何年も、連絡も寄越さなかったから、顔も忘れていたよ」


「ごめん、でも…」


「お金の無心かい?

あのねえ。いつまでも当てにされても、こっちもそうそう助けてやれないよ」


 瑠璃の顔色を見て、母親は、口調をやわらげた。


「パパも、このごろ耳が遠くなったし、少し判断力も落ちてね。

あんたたちが継ぎそうにないし、もう他の人に後を頼むことにしたんだよ。

じきにあんたも、もう経営者一族じゃなくなるから、そのつもりでね」




「そうじゃない、違うのよ、そうじゃなくて、」

 瑠璃は、叫んだ。





「いなくなったのよ、翡翠も、あの人も!

犬まで!」




 

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