表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/55

瑠璃9

 意外なことに、狩りには、ひどく手こずった。



 瑠璃にとって男なんてのは、熟しきった果物で、触れるか触れないかのうちに、たちまち落ちてくるものだった。

 身もふたもない言い方をするならば、産道を遡上(そじょう)する精子さながら、我先(われさき)にと瑠璃の身体に手を伸ばして来る、本能に支配された哀しい生き物だった。



 日向は違った。

 あらゆる機会をとらえては、あの手この手で誘惑してみるのだが、いつも軽くかわされた。



「ほらほら、お義姉(ねえ)さん、冗談もほどほどに」

 廊下の、人目につかない隅に日向を引っ張り込んで、爪先立って首に抱きついたときも。

 柔らかく腕をほどかれて、よろめいたところを、紳士的に支えられた。


 瑠璃は、口をとがらせて抗議した。


「おねえさん、なんて言わないで。まだ結婚してないくせに。

それに、あなたの方が年上でしょ?」

「でも、すぐにそういうことになりますよ、お義姉さん」


「幸子のこと、愛してるの?」

「そうですね、結婚するくらいには」


「わたしのことは?」

「家族愛ですよ、お義姉さん」




 大人の男なのだ。

 瑠璃が今まで、知らなかった種類の。


 何を考えているのか、全くわからない。

 いつも余裕しゃくしゃくに、瑠璃をかわす。


 女に興味ないのか、あるいは飽き飽きしているのか。

 瑠璃のことが嫌いではないとは思うが、しかしそれは今後のつき合いも考えてのことかもしれない。


 幸子のような、男に免疫がなくて、良妻賢母まっしぐらの女にしか興味がない?

 そんな男、いるはずがない!



 瑠璃は寝ても覚めても、日向のことばかり考えるようになった。


 

 


 これで最後にしよう。

 幸子と日向の結婚式を一週間後に控えた、夏の日。


 瑠璃は、日向の勤め先の近くで、日向をつかまえた。

 ホテルに引っ張り込むと、プライドも、汗で張り付いた衣服も、なにもかもかなぐり捨てて、男の手を取った。



 その時、瑠璃は初めて、激しい羞恥(しゅうち)に襲われた。


 わたし、何をしているんだろう?

 自分から、男に抱いてくれとせがむなんて?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ