表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/55

瑠璃6

 父親が家に、酔客を連れて帰ることは珍しくもなかった。



 瑠璃は気が向けば、客の相手をすることもあった。



 若いね、きれいだね、美人だねとちやほやされるのは、悪い気はしなかった。 


 それに酔っ払いは、本音が見えて、おもしろくもあった。

 だから、父も母も、客に対しておおらかなのかもしれなかった。


 夜の人間たちは赤裸々(せきらら)だった。

 卑猥(ひわい)なからかいの対象となることもあったが、父母も瑠璃自身も、そのくらいのことで目くじら立てるなんてしなかった。


 幸子は、離れの自室にカギをかけて、絶対に出てこなかった。



 

 ある夜、父親が、五、六人の若い男たちを連れてきた。


 飲み屋で隣り合って、話が合ったので、うちに連れてきたという事だった。


 彼らは、修習を終えたばかりの、弁護士の卵たちだった。


 初めは恐縮していた彼らだったが、だんだんと理性が希薄になって、酔いつぶれたり、ビリヤード台を置いている隣の部屋で騒いだりし始めた。



 将来性のある若い男ばかりということで、瑠璃は念入りに化粧し直し、色っぽい服を着ていたのだが。

 だれも近づこうとしないので、退屈で、もう自室に下がろうかと思っていた。


 ふだんは笑い飛ばしている、バツイチの片身の狭さを、こんな時に薄々感じる。



 ふと見ると、広い応接室のソファに、背の高い人がひとり残って、父親と差し向かいで雑談をしていた。

 瑠璃は、自分のためにもう一杯だけ水割りを作ってから、近くの一人掛けのソファに腰かけた。



 三十歳になったばかりというその人は、物静かで、挙措(きょそ)が堂々としていた。


「あんたは、見どころがある」

 父親は、しきりに酒を勧めながら、雑談の合間に何度も、そう持ち上げた。 



 父親のそんな様子は珍しかったので、瑠璃はこっそりとその人を観察した。



 イケメンではない。

 瑠璃の好みからは、かなり隔たっている。

 いつもなら、目に留めないだろう。


 酒で顔を赤くはしているが、礼儀正しい態度を保っているのは、好感がもてた。

 抑制が効く人らしい。


 グラスをもてあそんでいる指は、ドキッとするくらい長い。


 どちらかというと低い声で、柔らかく相づちを打ったり、聞かれたことに答えたりするのを聞いているうちに、瑠璃はなんだかおかしな気になってきた。

 あの声を、耳元でささやかれたい。


 内臓が熱くなったのは、アルコールのせいか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ