瑠璃6
父親が家に、酔客を連れて帰ることは珍しくもなかった。
瑠璃は気が向けば、客の相手をすることもあった。
若いね、きれいだね、美人だねとちやほやされるのは、悪い気はしなかった。
それに酔っ払いは、本音が見えて、おもしろくもあった。
だから、父も母も、客に対しておおらかなのかもしれなかった。
夜の人間たちは赤裸々だった。
卑猥なからかいの対象となることもあったが、父母も瑠璃自身も、そのくらいのことで目くじら立てるなんてしなかった。
幸子は、離れの自室にカギをかけて、絶対に出てこなかった。
ある夜、父親が、五、六人の若い男たちを連れてきた。
飲み屋で隣り合って、話が合ったので、うちに連れてきたという事だった。
彼らは、修習を終えたばかりの、弁護士の卵たちだった。
初めは恐縮していた彼らだったが、だんだんと理性が希薄になって、酔いつぶれたり、ビリヤード台を置いている隣の部屋で騒いだりし始めた。
将来性のある若い男ばかりということで、瑠璃は念入りに化粧し直し、色っぽい服を着ていたのだが。
だれも近づこうとしないので、退屈で、もう自室に下がろうかと思っていた。
ふだんは笑い飛ばしている、バツイチの片身の狭さを、こんな時に薄々感じる。
ふと見ると、広い応接室のソファに、背の高い人がひとり残って、父親と差し向かいで雑談をしていた。
瑠璃は、自分のためにもう一杯だけ水割りを作ってから、近くの一人掛けのソファに腰かけた。
三十歳になったばかりというその人は、物静かで、挙措が堂々としていた。
「あんたは、見どころがある」
父親は、しきりに酒を勧めながら、雑談の合間に何度も、そう持ち上げた。
父親のそんな様子は珍しかったので、瑠璃はこっそりとその人を観察した。
イケメンではない。
瑠璃の好みからは、かなり隔たっている。
いつもなら、目に留めないだろう。
酒で顔を赤くはしているが、礼儀正しい態度を保っているのは、好感がもてた。
抑制が効く人らしい。
グラスをもてあそんでいる指は、ドキッとするくらい長い。
どちらかというと低い声で、柔らかく相づちを打ったり、聞かれたことに答えたりするのを聞いているうちに、瑠璃はなんだかおかしな気になってきた。
あの声を、耳元でささやかれたい。
内臓が熱くなったのは、アルコールのせいか。




