瑠璃3
瑠璃だって、最初から意地悪しようと思っていたわけじゃない。
母親を亡くしたばかりで、かわいそうな、まだ見ぬ妹。
まだ小学一年生なのに。
お姉ちゃんらしく、優しくかわいがるつもりでいた。
本宅に移り、初めて妹に会った時。
幸子は小さい身体を張りつめ、目を見開いて瑠璃をにらんできた。
幼いころから、何かとからかわれたり貶められたりすることが多かった瑠璃には、その目つきの意味が、よくわかった。
こいつにとっては、不倶戴天の敵なんだ。
そりゃそうか。
母親たちが敵同士なんだから。
瑠璃は、自分の甘さを恥じた。
こっちの同情なんて、クソだよな。
上等だ。
そっちがその気なら、こっちだって。
父親はいつも、瑠璃の味方だった。
瑠璃が言うことを信じた。
だから、瑠璃は幸子のものを全部取ってやった。
きれいな子供部屋。
気に入った調度品。
食卓の席。
父親の笑顔。
父親との時間。
そのうち、家族水入らずよ、と言えば、幸子は顔を出さなくなった。
だって、もともとは、瑠璃と瑠璃の母親のものだったのだから。
ただ、拍子抜けしたのは、幸子が反撃してこなかったことだ。
どんなにいじわるや告げ口をしても。
非難するような目で、見てくるだけ。
そんな目つき、瑠璃には痛くもかゆくもなかった。
反論もせず、やり返すこともしない。
むしろやり返してきたほうが、まだかわいげがある。
自分はそんな幼稚なことには、まともにかかわりません。
そういう感じの、取り澄ました、いやみったらしい態度。
瑠璃にとっては、一番嫌いな相手。
文字通り、顔も見たくない。
幸子の口から出るのは、真っ白な、慈しみ深き天使のような言葉ばかり。
幸子自身、後ろ指さされることもない、正統な生まれ。




