43話 ガチバトル再び! クインVSエルダートレント!
前回のあらすじ
健康的な生活を送ってたらいきなりピンチになった。
「クリア様、大丈夫かしら?」
「クイン……ありがとう。たすかったよ~……」
まるでイケメンヒーローの如く颯爽と駆けつけてくれたクインを見て安心したのか、私は地面に膝をついた。
「後は任せて頂戴。スラちゃん、クリア様をしっかり守ってあげてね」
『……!!』
任せて!
と言わんばかりにスラちゃんがぷるんと震える。
「さぁて……」
クインはトレントの方に振り向く。
「大事なご主人様と仲間においたをするあなたはだ・あ・れ?」
クインは笑顔を浮かべたまま、だけど怒りを孕んだ声でトレントに話しかける。
『そういう貴様は何者だ……? ただのスライムではないな?』
「フフ♪ スライムの最上種、スライムクイーンのクインよ」
『……スライムクイーンだと!?』
トレントが目に見えて動揺する。
やっぱクインってすごいんだね。
「そういうあなたこそ、ただのトレントじゃないわねぇ。もしかして、エルダートレントじゃないかしら?」
「え、エルダートレントだと!?」
今度はアンナちゃんが動揺する。
「え、エルダートレントって?」
「何千年も生き、強大な魔力を得たトレントの最上種だ!」
「と、トレントの最上種!?」
ってことは、クインと同格ってこと!?
どおりでアンナちゃんが勝てないわけだよ!
「え? でもそんなすごい魔物がなんでいきなり現れたの?」
「それは私にもわからないわねぇ。説明してくれるかしら?」
クインが説明を求めるも、エルダートレントは再び枝を伸ばしてくる。
『……バカめ! これから死ぬ奴に話す必要などないわ……!』
無数の枝がクインを突き刺そうと一斉に伸びてくる。
「せっかちな男は嫌われるわよぉ?」
クインが妖艶な笑みを浮かべ、片手を軽く振る。
『アクア・サイクロン』
ザバァン!!
その瞬間、クインの目の前に大きな水の竜巻が巻き起こる。
竜巻は鋭い水の刃と化し、迫っていた無数の枝が一斉に切り裂かれた。
「そぉれ♪」
そのまま水の竜巻を自在に操り、トレントに向かって放つ。
『グゥ!?』
トレントに水の竜巻が直撃。
水の刃がドンドン木の幹の表面を切り裂いていく。
水の竜巻が消え去ると、トレントの幹には無数の傷が刻まれていた。
だけど――。
『……フン』
トレントの幹が淡く光り始める。
すると、刻まれていた傷がみるみるうちに塞がっていき、あっという間に元通りになった。
「そんな!?」
「あらあら、やっぱりこの程度じゃ倒せないわねぇ」
クインが困り顔で頬に手を当てる。
『その程度の攻撃で、ワシを倒せると思ったか?』
トレントの枝が大きくうねり、地面からも無数の根がせり上がってくる。
『愚かだな。ワシと貴様では相性が悪い』
「じゃあ、これならどうかしらぁ?『アクアジャベリン』」
クインが巨大な水で出来た三つ又の槍を作り出し、トレントに向けて飛ばす。
『無駄だ……!』
だけど、トレントの根が槍を掴んだ瞬間、水の槍はみるみるうちに根へと吸い込まれ、跡形もなく消えてしまう。
「水はワシにとって恵みにしかならん……! 貴様の攻撃など効かぬわ……!」
「そんな……!?」
クインの水魔法は全部吸収されちゃうってこと!?
それじゃあ勝ち目がないじゃん!
「あらあら、どうやらそうみたいねぇ」
だけど、クインは余裕の笑みを崩さない。
「水を吸収する上に、再生能力を持ってるのは厄介ねぇ。でも……」
クインは周囲を見渡し、それからトレントへと視線を戻した。
「あなた、本当にその力を存分に発揮できているのかしらぁ?」
『……何?』
「トレントは森と、栄養豊富な大地があってこそ真価を発揮する魔物。けれど、あなたが今いるこの土地は……」
クインは口元に手を添え、くすりと笑う。
「あなたにとって、ずいぶんと居心地が悪い場所なんじゃないかしらぁ?」
そっか、ここは森じゃなくて小さな林。
それに、もうグリーンソイルの効果が切れてるから、土に栄養もない。
もしかして、余裕ぶってるように見えて、実は結構ギリギリなのかもしれない。
『……貴様、何を知ったような口を!』
「フフ、図星みたいねぇ? その再生力もいつまで持つかしらぁ?」
エルダートレントの枝が、怒りに震える。
『……だが、貴様にもワシを倒すすべはあるまい! 勝敗は変わらん! 貴様の体ごと、ワシの養分にしてくれるわ!』
再びトレントの枝、そして巨大な根がクインに襲い掛かる。
「ふふ、確かに水魔法だけじゃ倒せないわねぇ。だ・け・ど」
クインが怪しげに笑った瞬間――。
ドォォン!!
「大量の水があったらどうかしらぁ?」
突如、地面が大きく盛り上がった。
直後、地中から大量の水が噴き出しはじめ、トレントの根元を水浸しにしていく。
『何……!?』
「フフ、水魔法で川と地中をつないだのよ♪」
『それが何だというのだ? いくら水があろうと、ワシの恵みとなるだけ……む?』
トレントの様子が急におかしくなる。
『はぁ……はぁ……な、なんだこれは……!?』
「ど、どうなってるの?」
まるで息苦しいかのようだ。
「確かに水は植物にとって大事よねぇ。でも……与えすぎもよくないのよぉ」
「あ、そうか。根腐れだ!」
学校の授業で聞いたことがある。
植物は根から水分や養分を吸収するだけじゃなくて、呼吸のため酸素も取り込んでいる。
だから、土に水を与えすぎると酸素の入る隙間が無くなり、呼吸が出来なくなるって。
それが長時間続くと、根が傷んで植物は枯れてしまう。
そっか、トレントも水は吸収できても限度があるんだね!
「おのれ……この程度の水……すべて吸い取ってくれる!」
エルダートレントはどんどん水を吸収していく。
だけど、川の水は絶えず流れ込んでくる。
いくら吸収しても終わりはない。
「そぉれ、ダメ押しよぉ♪」
クインの体が地面に溶け込んでいく。
すると、エルダートレントが更に苦しみだす。
『み、水が……吸い取れん……!?』
「フフ、魔力でガードした私の体は、そう簡単に吸収できないわよぉ♪」
トレントの根元の水から、大きなクインの顔が浮かび上がる。
もしかして、地中の水と一体化した!?
「このまま一週間も水に浸けこんでいれば、どうなるかしらねぇ?」
『や、やめろぉ……!』
トレントの浮き出た顔が恐怖に満ちていく。
さらにトレントから伸びていた枝が目に見えて力を失い、地面へ落ちていく。
そして、アンナちゃんたちを捕まえていた枝や根も力が緩み、拘束が解除される。
ドサドサドサ!
解放されたみんなが、次々と地面に落ちていく。
「ウギャ!?」
「……た、タスカッタ?」
「いてて……もっと丁寧に離しやがれ!」
そんな中、アンナちゃんだけは魔法で宙に浮かび、ゆっくりと地面に降りてくる。
「やれやれ……今回ばかりは肝が冷えたな」
「クリア様、このトレントはどうしようかしらぁ?」
クインが水の中から顔を出し、エルダートレントを見上げる。
「どうするって……」
私は、苦しそうにしているエルダートレントを見つめた。
みんなを傷つけようとしたことは許せない。
でも、そもそもどうして突然現れて、私たちを襲ってきたんだろう?
「とりあえず、話を聞いてみようよ。どうしてこんなことをしたのか、理由があるかもしれないし」
「はーい♪」
クインは川と地中をつないでいた穴を塞ぎ、水の供給を止める。
「ですってぇ。さあ、今度こそお話を聞かせてもらえるかしらぁ?」
『ぐ……ぬぅ……!』
エルダートレントは悔しそうに唸る。
こうして私たちは、エルダートレントが現れた理由を聞くことになったのだった。
今回の根腐れ作戦はかなりご都合主義でうまくいった例です。
実際はここまで上手くいかないと思いますw




