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42話 襲来、巨大トレント!

前回のあらすじ


ロリーバさんたちが不健康な生活を送っていると分かった。

ユルサナイ。

「ほら、三人とも! しっかり走って!」

「こ……ここは地獄ですか……?」

「はぁ……はぁ……もう限界です……」

「もう……休ませてほしいのじゃ……」


 ロリーバさん達が不健康に過ごしているとわかった次の日。

 早速三人を毎朝恒例のジョギングに誘っていた。


「ほら、まだ始めてたった三(・)十(・)分(・)だよ!」

「鬼か貴様は~!」


 おかしいな、ダークエルフって自然と暮らす種族だからもっと体力あると思ってたけど。

 でも、ロリーバさん達って商人だししょうがないのかなぁ?


「ほら、もっとしっかり走れ」


 ビシィッ!!


「「「ぎゃぁぁ!!」」」


 アンナちゃんが後ろから鞭打って、三人を走らせる。

 一ヶ月前はアンナちゃんもあんな感じだったのに、やっぱ容赦ないなぁ。


 そんなことを思いながら走っていると、町の農場に差し掛かる。


「それー、健康の恵みだよー!」


 ジョギングをしながらグリーンソイルの粉を撒く。

 これも毎朝の日課だ。

 ちゃんと撒かないと、作物が育たない。


「うーん……」

「どうしたクリア?」

「いや、いつまでこのスキルが必要になるんだろうと思って」


 使っててわかったんだけど、このスキルには一つ問題がある。

 それは、土の栄養を維持するには毎日撒き続けなければならないことだ。

 一日でも欠かすと土の栄養が失われ、作物が育たなくなってしまう。

 つまり、私がいないと農場自体が成り立たなくなるんだよね。


「アンナちゃん、どうにかできないかな?」

「土に関してアタシに聞かれてもな……」

「そうだよね……」


 まあ、おいおい考えればいいよね。

 そう結論づけ、ジョギングを続けた。


 その後、町の管理とロリーバさんたちの健康生活に目を光らせながら一日を終え——次の朝。


「ふわぁ……」


 欠伸をしながら屋敷のテラスに出て、町を見渡す。


「今日も平和だなぁ」

 

 まだ廃墟が多いけど、少しずつ建て直してきた町並み。

 その側を流れる澄んだ川。

 いろんな作物が育っている農場。

 そして、伐採用に作った林にそびえ立つ、樹齢千年を超えていそうな大樹……。


「……え、大樹?」


 あれ、あんなのあったっけ?

 もしかして、昨日グリーンソイルを撒きすぎたかな?

 いやいや、だとしてもあんなに育つわけないから。


「あの木って一体……」

「クリア様! 大変ですーー!」


 首を傾げてる時、ゾビ夫さんが慌てて走ってくる。


「ゾビ夫さん、どうしたの!?」

「領民とドワーフのみんなが、突然生えたでかい木に捕まってしまいました!!」

「えーー!?」


 ゾビ夫さんの知らせを聞き、慌ててスラちゃんとアンナちゃんを連れて林へ向かう。

 すると——そこには、大樹から伸びた枝に拘束されたみんなの姿があった。


「ウギャー! タスケテクレー!」

「……し、締めつけがクルシイ……」

「畜生、なんなんだこいつは!?」


 ゴブ郎、プー吉、バルガスさんも捕まっている。


「みんな、大丈夫!?」

「グギギ、クリア様!」

「た、助けて……」

「クリアの嬢ちゃん気をつけろ! コイツら、切ってもすぐ再生しやがるぞ!」


 どうやら普通の木じゃないみたい。

 いや、枝が伸びる時点で普通じゃないけど。


「アンナちゃん、この木って一体……」

「……まさか、トレントか?」

「え、トレント?」


 それってファンタジーでよく出る木の魔物だよね?


「まさか、D・E商会から仕入れた苗木の中にトレントが混じってたの!?」

「いや、流石にそんなミスはしないだろうし、あったとしてもすぐ気づくだろう」

「じゃあ、なんでいきなりトレントが現れたの?」

「それはアタシが聞きたい。そもそもトレントの木は普通、あんなに成長するはずが——」


 シュシュルシュルッ!


「チ、話してる場合じゃなさそうだ!」


 大樹から伸びた枝が一斉に私たちへ向かってくる。


「下がれクリア! 『サンダーウィップ』!」

「スラちゃん! 『アクアカッター』!」

『……!』

 

 アンナちゃんが雷の鞭を振るい、スラちゃんが水の刃を飛ばし、伸びてきた枝を迎撃する。

 だけど、いくら破壊しても枝はすぐ再生し、私たちに襲いかかってくる。


「アンナちゃん、どうしよう!?」

「どうやら、直接本体を叩くしかないようだな。感電しろ! 『雷の鎖(チェーンライトニング)』!」


 アンナちゃんが腕を振るい、紫の雷を帯びた鞭が枝を貫く。

 その瞬間、バチバチバチと雷が拡散し、周囲の枝を次々と灰にしていく。


「今だ!」


 邪魔な枝を排除した瞬間、アンナちゃんが無防備になった大樹に向かって飛んでいく。


「嚙みちぎれ!『雷の蛇(ヴォルトサーペント)!』」


 鞭が大きな紫電のヘビへと姿を変え、大樹に襲いかかる。

 アンナちゃんの必殺魔法『雷の蛇』だ。


 紫電の蛇が大きく顎を開けて、鋭い牙を剥き出しにして大樹へと噛み付く。


 バチバチバチッ!!


 紫電が大樹の幹を駆け巡り、辺りに激しい火花が散る。

 だけど——。


「な……!?」


 大樹の幹は、表面が少し焦げただけで、悠然とそびえ立っていた。


「アンナちゃんの魔法が全然効いてない!?」

「なんなんだこいつは……うわ!?」


 突如、地面から伸びた木の根が蛇のようにうねり、空中にいるアンナちゃんの手足へと絡みつく。

 

「くそ……しまった……!!」

「アンナちゃん!?」

 

 どうしよう、アンナちゃんまで捕まっちゃった!


「こらー! アンナちゃんを離せ!」

「ソウダ! こんなチンチクリンの緊迫プレイ、ダレも得しないゾ!」

「……せめて、ゾヴィ夫人のがミタカッタ……」

「そりゃあ、俺も同意だな」

「お前らー! あとで覚えてろよ!!」

「みんな、なんか緊張感ないけど実際ピンチだからね!?」


 とりあえずアンナちゃんを助けないと!

 

「スラちゃん、お願い! 『アクアカッター』!」

『……!』


 私の声に応え、スラちゃんが再び水の刃を放つ。

 だけど、それを阻むように枝が伸びてきて魔法を防いでしまう。


「うわ!?」


 その時、目の前の地面から木の根が伸びてきて、私に襲いかかってくる。

 

『……!!』


 その瞬間、スラちゃんが私の前に飛び出し、体をドーム状にして私を包み込むように覆った。


「スラちゃん!」

『……!!』


 バシバシバシッ!


 枝がスラちゃんを何度も叩く。

 だけど、スラちゃんのプルンとした体に弾かれ、私に攻撃が届かない。


 さすがスラちゃん、頼りになる。

 だけど、この状況を打開する方法がわからない。


 その時——。


『……無駄な足掻きを』

「え?」


 まるで、森そのものが話しているかのような、重く低い声が響き渡る。


 すると、突如大樹の幹に顔のようなものが浮かび上がり、喋り出した。


『愚かな侵略者どもめ……素直にワシの養分となればよいものを……』

「し、侵略者……? 養分……?」


 ど、どういう意味だろう?


「えっと、あなたトレントだよね? 侵略者ってどういうこと? ここは私の領地だよ?」

『愚か者め……! ここはワシが支配する土地だ……!』

「ええっ!?」


 ここって四天王が統治する領地じゃなかったの!?

 

「いやいや、何か誤解してるんじゃないかな? 話を——」

 

『黙れいッ!!』


 大樹の幹が大きく震え、周囲の地面が激しく揺れ始める。


『ワシの支配する土地に勝手に踏み入り、荒らした罪、……その命をもって償うがいい……!』


 ゴゴゴゴゴ……!


 地面を突き破り、巨大な木の根が現れる。

 

『死ねぃ!』


 そのまま、巨大な木の根が私の頭上へと大きく振り上げられる。


 まさか、スラちゃんごと私を叩き潰すつもり!?


「うわぁ!?」

『……!?』


 もうだめだ。

 そう思った瞬間——。


『アクアゲイザー』


 ザシュッ!


 地面から刃のような水柱が勢いよく噴き上がり、巨大な木の根を切断する。


「え?」

『なに……!?』


 ズドォン……!


 切断された木の根が地面に落ちる。


「あらあら~。私の可愛いご主人様においたをする子は……だ・れ・か・し・ら~?」


 不機嫌そうな声でそう言いながら現れたのは、私たちの仲間……スライムクイーンのクインだった。

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