41話 ロリーバさん、一日目でクビになる!
前回のあらすじ
健康に関係ないけど、ロリーバさんが財政管理担当になった。
ロリーバさんが町の財務大臣(?)に任命されて屋敷に住み始めた次の日。
「アンナちゃん、結構体力ついてきたね!」
「ま、まあな。これくらい当然だ」
毎朝恒例、アンナちゃんと町の周囲をジョギング。
一ヶ月以上続けていたおかげもあって、最初はヒィヒィ言ってたアンナちゃんもついてこれるようになっていた。
「ふう、今日も朝からいい汗かいたね!」
「そ、そうだな……。はぁ……はぁ……」
肩で息してるアンナちゃんと屋敷に戻ると、庭で空を見つめているダンさんとエルさんを見かける。
「おはよう。二人とも何してるの?」
「クリア様、おはようございます」
「私たちは会長から休憩をもらって休んでいるところです」
「休憩?」
もしかして、朝早くから仕事してるのかな?
「そんなにやること多いの?」
「はい。俺の転移魔法で、本部から目を通す必要がある書類をここに持ってきていますので」
「会長は常に忙しいのです」
「へぇー」
やっぱ商会の会長って忙しいんだね。
「ところで、二人ともその目はどうしたの?」
よく見ると二人の目にはクマができていて、しかも充血している。
「大丈夫です、寝ていないだけですので」
「え、寝てない?」
「それよりも、こちらに目を通していただけませんか?」
疑問を尋ねる前に、エルさんからメモのようなものを渡される。
「何これ?」
「会長から朝食のリクエストです。では、私たちはそろそろ仕事に戻りますので」
「あ、ちょっと……」
ダンさんとエルさんが屋敷の中へ戻っていく。
何も言う暇がなかった。
とりあえず受け取ったメモを見てみる。
・牛肉のステーキ
・オーク肉のベーコン
・オーク肉のソーセージ
・とにかく肉入りシチュー
・肉汁入りの水
「……はぁ?」
朝食に食べる内容じゃない。
というか肉しかない。
肉祭り。
肉のオンリーワン。
あと最後の意味わからない。
「随分と胃がもたれそうなメニューだな」
「そのツッコミは正しくないよアンナちゃん」
寝てないってことは……もしかして徹夜で仕事してるってこと?
しかもこのふざけた内容の食事メニュー……。
「ふっふっふ……」
乾いた笑いを浮かべながら、クシャリとメモを握りつぶす。
「アンナちゃん、ロリーバさんたちの様子を見に行こう。今すぐに」
「あ、ああ。大丈夫かクリア、なんか変なオーラ出てるぞ?」
「大丈夫だ、問題ないって奴だよアンナちゃん」
「……意味が分からん」
ズンズンと擬音が出そうな足音を出しながら、ロリーバさんの元へ向かう。
着いた先は、昨日D・E商会の支部として貸した一室。
コンコンッ。
「ロリーバさん、ちょっと聞きたいことがあるから入るよー」
ガチャッ。
返事を聞かずドアを開ける。
すると――。
「うわ、なにこれ!?」
中からモクモクモクと白い煙が溢れ出してくる。
一瞬火事かと思ったけど、焦げ臭いにおいはしない。
「なにこの煙……薬のような変なにおいがする」
「これは……魔煙草という魔族が好んで吸う煙草の煙だな。人間が長時間吸うと幻覚を見るから気をつけろ」
「た、煙草……?」
恐る恐る部屋の中を見ると――。
「な、なにこれ……」
作業机の前に座り、葉巻のようなものを吸っているロリーバさん。
その両隣に立っているダンさんとエルさん。
山のように積み重なった書類。
モクモクと部屋中を覆っている魔煙草の煙。
あまりの光景を目の当たりにし、膝から崩れ落ちる。
完全に地獄絵図だった。
「おう、クリア。何の用じゃ? 朝食を持ってきてくれたのか?」
「ロリーバさん、財政管理クビね」
「なんじゃとーー!?!?!?」
即座でクビを言い渡した。
数分後――。
部屋の換気をした私は仁王立ちしながら、ロリーバさんを正座させていた。
「何故ワシが正座させられとるんじゃ!? というかクビってどういうことじゃ!?」
「ごめんロリーバさん、クビは言い方が間違ってたよ」
「ふ、そうじゃろうな」
「とりあえず町から出て行って、今日中に。髪の毛一本も残さないように」
「もっと酷くなっておるではないか!?」
そうかな?
結構優しいと思うんだけど。
「本音を言うなら今すぐ焼却処分したいんだけどなー」
「何故そんな汚物みたいな扱いになるのじゃ!?」
「あんな不健康の体現みたいなことしててなに言ってるの? まずなんで徹夜してるのさ? 仕事が忙しいから? 人は寝ないとすぐ体調を崩すんだよ。徹夜なんて一番やっちゃいけないことだよ。それに何あの食事メニューは? 肉オンリーじゃん。ロリーバさん肉食なの? 肉食獣なの? それならさっさとサバンナ行って野生の生活をしてきなよ。あと煙草はダメでしょ。そりゃロリーバさんは大人だしストレス抱えることもあるんだろうけど健康を害したら意味ないじゃん。そもそも換気くらいはちゃんと……」
「た、助けてくれアンナ! クリアが意味わからんことを言い始めとるぞ!」
「怒ってるだけで正常だ」
「あれがか!?」
「はぁ……。クリア、とりあえず深呼吸して落ち着け」
アンナちゃんに宥められ、とりあえず心を静める。
「とにかく、あんな不健康な生活してるロリーバさんとはやっていけないから。あ、商会との契約も破棄するね」
「なんじゃと!?」
ロリーバさんが慌て始める。
「お主、勝手に契約を破棄するなど許されることではないぞ!」
「勝手じゃないよ。契約内容に書いてあるじゃん」
契約書を突きつける。
書いてある内容には間違いなく、「ロリーバさんが健康的な生活を送ること」と明記されていた(37話参照)。
「……ね?」
「た、たしかに書かれとるが……それはつまり病気やけがをしなければ良いんじゃろう? 魔族は頑丈じゃからこの程度で問題はな――」
「おおありだよ。そもそも健康は病気やけがをしなければいいって話じゃないんだよ。ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、元気に生活することも健康なんだから。魔族だからって油断してたら一気に不健康まっしぐらだよ。うちの領民たちだって魔族だけど、太ったりガリガリに痩せたり、骨がボキボキ折れるようになっちゃってるんだよ」
「うぐ……!?」
ロリーバさんは事実を突きつけられ、思いっきりうなだれる。
「というわけで、契約を破ったのはロリーバさんだから破棄でいいよね」
「……あ、アンナ! クリアを説得するのじゃ! 商会との契約が切れたらこの町はどうなる!?」
「いや、そう言われてもだな……。クリアをこの分野で説得するのは無理だ。それに、商会は他にもある。D・E商会にこだわる必要はない」
「な、なんじゃとー!?」
今度は頭を抱えて絶望し始める。
「短い付き合いだったねロリーバさん。二度と顔見せないでね」
身を翻して部屋から出ようとする。
すると――。
「ちょ、ちょっと待つのじゃー!」
ロリーバさんが私の足にしがみついてくる。
「頼む! 契約破棄は勘弁しとくれ! 商会の利益がー!」
「ダメ」
二文字で全否定し、契約書を破ろうとする。
ビリッ……
「ぎゃー! わ、分かった! これからは生活を改める! 健康的に生活をするから許しとくれ!」
「……本当?」
疑いの目でロリーバさんを見下ろす。
「ああ、ワシに二言はない! じゃが、健康的な生活というのがワシにはわからん。じゃからお主が教えとくれ」
「うーん、そういうことなら……」
「おお、考え直してくれるのか!」
ロリーバさんが顔を上げ、希望に満ちた顔で見てくる。
まあ、生活を改めるなら許してもいいかな。
「じゃあ、今から最低限必要なことをメモに書くから」
健康的に生活するため、メモに必要なことを書いていく。
1、外に出て陽の光を浴びる
2、毎朝ジョギングする。
3、朝、ラジオ体操を一緒にする。
4、食事をバランスよく食べる。
5、食べ過ぎ禁止。
6、食後は歯磨きをする。
7、毎日お風呂に入る。
8、酒、煙草禁止。
9、早寝早起きする。
10、長時間座らない。
11、適度に仕事の休憩を取る。
12、こまめに手洗い・うがいをする。
13、体調が悪い時は休む。
「えっと……次は……」
「待て待て待てい!! 必要事項が多すぎんか!?」
「なに言ってるの? 確かに多いけれどいたって普通の事でしょう?」
まあ酒に関しては今後監視する必要があるけれど。
「いや、しかしじゃな……」
ビリッ……
「わ、分かったから契約書を破らんでくれー!!」
「……しょうがないなぁ。あ、ダンさんとエルさんも当然メモの内容を守ってね」
そう言うと、ダンさんとエルさんが目を合わせる。
「え、俺たちもですか?」
「当たり前だよ。ロリーバさんと一緒にいるんだから」
「しかし、私たちは契約に関係な――」
ビリビリッ……。
「バカモンお前ら!」
「「し、失礼しましたー!!」」
こうして三人が土下座して謝る中、なんとか契約は続行ということになった。
「……クリア、お前もかなり性格悪いな」
「え、どこが?」
滅茶苦茶ノリで書きました。




