40話 ロリーバさん、町の財政管理を担当する!
前回のあらすじ
健康の大敵、酒造りがきまってしまった……。
ドワーフの職人バルガスさんたちを迎えてから一週間。
町の一角には、ドワーフのみんなが作り上げた立派な工房が建っていた。
寝泊まりもできるだけじゃなく、鍛冶に必要な設備も整った本格的な施設だ。
「ナンデドワーフの家が先に建てられるんダ!?」
「……奴隷の家が先に建てられるの。オカシイ」
「ドワーフを追い出して私たちの家にするべきです!」
最初はこんな感じで、いつものリーダー三人組を筆頭に不満も出たんだけれど――。
「うるせぇ! 俺たちが自分で作ったんだ、文句は言わせねぇぞ!」
……と、バルガスさんが主張。
そして――。
「テメェらはこれで満足してろ!」
「「「おおーー!!」」」
工房で作った新品の農具を領民のみんなに渡して買収してた。
自分の腕で黙らせるとはさすが職人だね。
そして、農場にも変化が出ていた。
クインの水魔法で農場の近くに川を作ったのだ。
これで、畑に水を引きやすくなる。
さらに農場の隣には、D・E商会から手に入れた苗木を植えた。
グリーンソイルのスキルで成長を促したところ、次の日には青々とした葉っぱを茂らせた、立派な木に育っていた。
「いやー。本当に木も一晩で成長するなんてびっくりだよね」
「……もうアタシは驚かないぞ」
さらに何十本も植え、小さな林にする。
そして育った木には申し訳ないけど、ドワーフのみんなに伐採してもらう。
木材に加工して、建物や道具とかの材料に使うんだよ。
伐採した木の切り株にグリーンソイルを撒くと、また一晩で生えてくるので問題なし。
「さすが異世界ファンタジーだね。自然に優しい(?)永久機関もこんな簡単に実現するなんて」
「お前が異常なだけだ!」
アンナちゃんがそう言って頭を抱えてるけどまあよし。
ちなみにこれはついでだけど、酒造りもドワーフと領民のみんなが団結して進めているらしい。
こんなところでやる気を出さないでほしいなぁ。
まあそうやって、私たちは順調に町の発展を進めていた。
その数日後、再びロリーバさんたちの商隊が町にやってくる。
今回は石材と、鍛冶に使う鉄鉱石を持ってきてもらった。
ドワーフのみんなが欲しがってたんだよね。
広場のテーブルに座り、今回も町で採れた食材と水を引き換えに取引していく。
「よしよし、これで今回の取引完了じゃな」
ロリーバさんがメモ帳に何かを書きながら、ホクホクとした表情になる。
「ククク、店で売るのが楽しみじゃ」
「そんなに儲かってるの?」
「もちろんじゃ。先日取引した食料と水はどうなったと思う? わずか一時間で完売したのじゃぞ」
「え、一時間?」
結構な量を取引したんだけれど、まさかそんなに早く無くなるなんて。
「新鮮な食糧と澄んだ水は貴重じゃからのう。じゃが、ここからはそれが湯水のごとくあふれ出てくる……。クックック、この町は本当に金の生る木じゃ」
ロリーバさんがよだれを垂らしながら怪しく笑いだす。
うん、これが金の亡者って奴かな?
そう思っていると、アンナちゃんが難しい顔をしながら口を開く。
「しかしそうなると……今後は防犯対策も考えないといけないな」
「防犯対策?」
その言葉を聞き、ロリーバさんもまじめな顔になる。
「アンナの言う通りじゃ。今後はこの町の噂を聞き、食料や水を奪おうとする連中も来るじゃろう。これからは農場と川に警備のものを配置しなければな」
そっか、これからは泥棒にも気をつけないといけないんだ……。
「あとは……この町と取引しようとする商売敵も止めんといかんのう」
「え、でもロリーバさんとは独占契約したし……」
「バカモン! それでも手段を選ばずお主らと取引しようとする連中が出るに決まっておるではないか!」
「確かに、D・E商会よりいい条件を出してくるような商人は来るだろうな」
「それって……私たちにとって都合がいいんじゃ?」
「なんじゃと!? お主、ワシとの契約を破る気か!?」
ロリーバさんが契約書を突きつけながら、鬼気迫った顔で近づいてくる。
「や、破る気はないよ!」
「実際破らないほうがいいだろうな。この町の信用にも関わるし、D・E商会を敵に回すのはいい選択とは言えない」
「ふ、分かればいいのじゃ」
ロリーバさんが腕を組んでうんうんと頷く。
「そこで提案がある。この町にD・E商会の支部を作るのじゃ」
「え、商会の支部?」
「そうじゃ。お主らも一々町に訪れた商人を相手するのは面倒じゃろう。じゃから支部を置き、ワシらが目を光らせるのじゃ」
確かに、家に来る勧誘やセールスマンの類って相手するの面倒だからねー。
代わりに相手してくれるなら助かるかも。
「そして、ワシ自らが支部を運営する」
「え、でもロリーバさんって商会の会長じゃ?」
「安心せい。ダンは転移魔法を扱えるでのう」
「転移魔法!?」
ダンさんが無言で頷く。
「ダンがおれば一瞬で本部に戻れるのじゃ」
「だったら町に来る商隊も一緒に転移してくればいいのに」
「バカモン、そんな大人数を転移できるわけがなかろう。魔力がいくらあっても足らんわ」
「そうなのアンナちゃん?」
以前魔王城へ行った時、アンナちゃんが転移魔法を使っていたのを思い出し聞いてみる。
「転移魔法の種類にもよるが、人数が増えるほど必要な魔力が増える。基本数人しか転移できないな」
なるほど、そういうことなら納得だね。
支部を建てることをロリーバさんに了承する。
「では、さっそく支部を建てる場所を決めねばならんのう。どこか良い場所はあるか?
「うーんそのことだけど……うちの屋敷を支部にするのはどうかな?」
「……屋敷の部屋じゃと?」
「うん。まだ使ってない部屋がいくつかあるし、そこを使えばいいと思うよ」
「いや、ちょっと待て」
アンナちゃんが慌てて止めてくる。
「何を考えてるんだクリア?」
「いいじゃん。私とアンナちゃん、スラちゃんしか住んでないんだし。あんなに広いのにもったいないよ」
「だからと言って、部外者を住まわせるわけにはいかないだろう」
「そこなんだけどさ、ロリーバさんに町の財政を管理してもらうのはどうかな?」
「は?」
「なんじゃと?」
アンナちゃんとロリーバさんが首をかしげる。
「ロリーバさんって商人だからお金の管理とか得意でしょう?」
「それはそうじゃが……だからと言って部外者であるワシに管理を任せるなど正気とは思えんぞ」
「でもこの町って独占契約してるから、ロリーバさんの商会としか商売できないんでしょう? お金の出入りってそれしかないんじゃないの?」
そう疑問をぶつけると、二人が納得する。
「言われてみれば……そうだな」
「……確かにそうじゃのう」
「でしょう? だったら最初からロリーバさんに管理してもらった方がいいじゃん」
「……ワシが金を持ち逃げするとは考えんのか?」
「そしたら商会との契約を破棄するだけだし、もともとこの町って必要なのはお金じゃなくて資材だからあまり痛手はないんじゃない?」
この町は自給自足ができてるし、お金が無くても健康的に生きる分には何も問題ないしね。
「……なるほど。屋敷に住まわせればこちらも監査がしやすいしな。しかし……」
「どうしたの?」
二人が私をじっと見てくる。
「……おまえ、たまには頭がキレることあるんだな」
「考えなしじゃと思っておったが……」
「すごい失礼だよ!」
私も自分にしてはいいアイデアだなとは思ったけど……。
「クックック。まあそういうことなら引き受けてやろう。この町の財政管理はワシに任せるがいい!」
ロリーバさんは笑みを浮かべながら宣言する。
「これからよろしくねロリーバさん!」
「管理を任せたとはいえ、ちゃんと半額で取引されてるかチェックするからな」
「わかっとるわ!!」
こうして屋敷の一室をD・E商会の支部として貸し出すことが決まり、ロリーバさん、ダンさんとエルさんが住人として住み始めたのだった。
だけど翌日。
「ロリーバさん、財政管理クビね」
「なんじゃとーー!?!?!?」
私はあることが原因で、ロリーバさんに速攻クビを言い渡すことになる――。




