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39話 新たな仲間と強大な敵!

前回のあらすじ


健康的に取引した。

 檻の中にいたドワーフの人たち。

 彼らはみなボロボロの体で、首輪と枷をつけられている。

 正直言って痛々しい。

 奴隷だから仕方ないと分かっていても、その光景に少し心が痛む。


「なんだ、その同情するような目は?」


 そう言いながら一人のドワーフが立ち上がり、私の近くまで歩いてくる。

 檻の中にいるドワーフたちの中で、唯一白い髭を生やした中年のドワーフだ。

 ほかのドワーフたちはみんな若く見える。


「えっと……私はクリア。この町の領主だよ」

「……ずいぶんわけぇ領主だな。俺はバルガス。ドワーフの鍛冶師だ」


 バルガスと名乗ったドワーフは、私を注意深く観察してくる。


「つーかオメェ、人間か?」

「うん、そうだけど?」

「……人間が魔族の土地で領主をしてるだと? 意味が分からねぇぞ」

「ただの領主じゃないよ。なんと魔王軍四天王なんだから!」

「もっと分からなくなったぞ!」


 いや、ごもっともなんだけどねー。

 本当の事だから。


 その時、別のドワーフが口を開く。


「バルガス親方、こいつの顔見たことあるぞ。最重要指名手配されている女だ!」

「ほう、なるほどな。その見た目に反して、相当ヤベェことをやってきたってわけか」

「何もしてないから!」


 そういえば昔アンナちゃんから指名手配されてるとは聞いてたけど……ていうか最重要指名手配って何!?

 脱獄ってこの世界じゃそんなに罪重いの!?


「まあそれは置いといて、なんでバルガスさんたちは奴隷として捕まっちゃったの? あと、なんでめちゃくちゃ働こうとしてるの?」


 とりあえず本題に入る。

 

「ふん、俺たちは元々鉱山にあるドワーフの村に住んでいたんだ。俺は村の長でな。親方と呼ばれ、毎日わけぇ奴らをしごいてたもんだ」

「よくある設定だね」

「……だがある日、鉱山の資源が尽きちまった。収入を得られなくなった俺たちは出稼ぎのために戦争へ参加したってわけだ。活躍できりゃ大量の報奨金が手に入るからな」

「もっと安全な稼ぎはなかったの?」

「…………そして戦争に参加したわけだが、俺たちは強かった」

「自分で言っちゃうんだ」

「………………俺たちは魔族をどんどん蹴散らし、快進撃を続けた。だが、そこで予想外の事が起きた。俺たちがどんどん先に進むもんだから、味方が付いてこれなくなっちまったんだ。まあそれでも、俺たちなら楽勝だと思い先に進んだ」

「それって勝手に突出しただけだよね?」

「……さっきからうるせぇぞ小娘!!」

「ええーー!?」


 的確にツッコミ入れてただけなのに!?


「で、その結果どうなったの?」

「……見ればわかるだろう。捕まった」

「……それって自業自得じゃ」

「だからうるせぇ!!」

「キレられても困るよ!」


 これが頑固おやじって奴なのかな?


「そして……」

(あ、まだ続くんだ)


 またキレられても困るので、今度は黙っておく。


「魔王軍に捕まり奴隷となった俺たちだが、まあ職人として仕事できるなら構わんと思った」

「…………(←クリアは黙っている)」

「だが……食事として出てくるのはゾンビ肉、しなびた野菜、カビが生えたパン……! それも毎日だ! 俺たちを殺す気か!? まともな物を食わせろと言ったが、そもそも魔王領にはそんな食糧しかねぇと聞かされた!」

「……(クリアは黙っている)」

「このままじゃ体が衰えて死んじまう! だからその前に、せめて職人として働き、ドワーフの誇りを持ったまま死にてぇんだ俺たちは!」

「……(クリアは黙っている)」

「……小娘! 無視すんじゃねぇ!!」

「ええーー!?」


 ちゃんと黙って聞いてたのに!?


 でも、バルガスさんたちが必死に仕事させろと言ってた理由はわかった。

 そんな食生活じゃ生きられないよね。

 私もその絶望感はよーくわかるよ。


「バルガスさん安心して! みんなをそんな不健康な死に方なんてさせないから!」

「なんだと?」

「私の町にはたくさん新鮮でおいしい野菜や肉があるんだよ! だからみんなを飢えさせたりしないよ!」

「ほ、本当か!?」


 バルガスさんが檻を掴み、前のめりになって聞いてくる。


「もちろん! その代わり、この町のためにその腕を貸してほしいんだ。お願いできるかな?」

「ああ、もちろんだ! いいな、野郎ども!!」

「「「「「おおーー!!」」」」」


 ドワーフのみんなが腕を高く上げ、喜びの叫びをあげる。

 

「よし、じゃあみんなちょっと待っててね!」


 もうすぐお昼ご飯の時間だしちょうど良い。

 まずは馬車から降り、アンナちゃんとロリーバさんに事情を説明する。


「なるほど、そういうことじゃったか。確かに、過酷な環境のせいで、魔王領では魔族以外長く生きられんからのう」

「ふん、体の弱い奴らだ」

「魔族が頑丈すぎるんだよ!」


 よくゾンビ肉やしなびた野菜で生活できるよね。


「そんなに言うなら、アンナちゃんだけ元の食生活に戻る?」

「それとこれとは話が別だ」

「正直でなにより」


 まあ私の補佐である以上、そんな体に悪いもの食べさせたりしないけどね。


 その後ゾヴィ夫人に事情を話し、ドワーフのみんなの分も追加で食事を用意してもらうよう頼む。


「そういう事なら任せて頂戴〜♪」

「まともなものを食べてなかったみたいだから、精の付くものをお願い!」

「ええ、分かったわ~」


 ゾヴィ夫人はこの前ロリーバさんからもらったオーク肉を使い、肉たっぷりの野菜スープをお昼ご飯として作り上げる。

 そして領民とD・E商会の人たちが集まったところでバルガスさんたちを檻から出し、みんなで美味しく食事を始める。


「……うめぇ」

「またこんなまともな飯を食える日が来るなんて……!」

「もう俺、死んでもいいぜ……!」

「いや、死なれたら困るからね!?」


 バルガスさんたちは感動しながらスープを一心不乱に口へ運ぶ。

 そんなに喜んでくれるなんて嬉しいな。

 私はみんなを奴隷として扱う気はないし、新しい町の住民として健康的に楽しく過ごして欲しい。

 

 そう思いながら私も食事を楽しんでいると——。

 

「おい小娘……じゃなくて、クリア様と呼べばいいのか?」

「そんな畏まらなくていいよ。で、どうしたの?」


 遠慮がちにバルガスさんが横から話しかけてくる。

 よく見たらスープが空っぽだ。


「もしかして、おかわりがほしいの?」

「それもあるんだが……なんか物足りねぇ気がしてだな」

「物足りない?」

「ああ……そうだ、よく考えたら酒(・)がねぇじゃねぇか!」

「……え?」


 聞きたくないワードが飛び出して、体が石のように固まる。


「おい、この町なら酒も造れんじゃねぇか?」


(しまった……ドワーフってお酒が好きな種族でもあるんだった)


 はっきり言おう。

 酒は絶対造りたくない。

 肝臓に悪いし、色んな病気の元だ。

 めちゃくちゃ健康に悪い。

 酒を全否定するわけじゃないけど、私の町で造るという事態はできれば避けたい(酒だけに)。

 

 だから、私はこう言う。


「ダメ」

「おい、なんでだよ?」

「お酒、ダメ、ゼッタイ!」


 手でバツ印を作り、絶対に造らないという意思表示をする。

 だけど――


「いや、酒は必要だろ!」

「そうだそうだ!」

「酒が飲めない人生なんてクソだ!」

「酒をくれー!」


 ドワーフのみんなが一斉に酒を欲しがる。

 いや、そう言われても絶対造らないから。


「そもそも酒の造り方がわからないしね!」


 実は以前も領民から酒が欲しいと言われたことがある。

 だけど、流石のゾヴィ夫人も酒の造り方は知らなかったんだよね。


「だから、悪いけど諦めて……」

「酒の造り方なら俺たちが知ってるぞ」

「え?」


 バルガスさんが当然といった表情で言う。


「当たりめぇじゃねぇか。酒が造れねぇドワーフなんてドワーフじゃねぇ。なあオメェら?」

「当然だ!」

「子供のころから知ってるぞ!」

「鍛冶よりも前に教わるからな!」

「おかしいでしょ!?」


 なんで鍛冶よりも先に酒の造り方を教わるの!?

 ていうか子供に教えちゃダメでしょう!?

 

「ギギ、サケ!?」

「……おいら、酒飲みタイ!」

「クリア様、是非造りましょう!」


「ええー!?」


 リーダー三人組まで乗ってきた!

 

「なるほど、酒か。この町なら上質な酒が造れるじゃろうな。クックック」


 ロリーバさんまで舌なめずりを始めている。

 ……いや、見た目的にまずくない?

 年齢的になら問題はないけど。


 まずい、このままだと本当にお酒を造る流れになってしまう。

 ここは一つ、領主として……四天王としてしっかり宣言しないと。


「みんな! 悪いけどお酒は……!」

「おい、クリア」


 肩に手を乗せられ振り返ると、アンナちゃんがニヤニヤと満面の笑みを浮かべていた。


 あ、なんかこれまずいかも。


「領主なら領民たちの意見も聞かないとな?」

「いや、アンナちゃんがお酒飲みたいだけでしょう!?」

「よく考えろ。新鮮な作物が採れるこの町で酒を造れば絶対に美味いものが出来る。確実にこの町の名産品になるぞ」

「いや、確かにそうだけど……。でも、健康に悪いものは……」

「クリア、酒という楽しみがあればみんなの士気も上がる。それは、心(・)の(・)健(・)康(・)に繋がると思わないか?」

「こ……心の……健康……?」


 確かに、体の健康ばかり意識してみんなを束縛するのは良くない。


「そうだ、健康のためだ。なら問題ないだろう?」

「健康のため……健康のため……健康のため……」


 まるで悪魔のささやき。

 そして私は――。


「け、健康のため……。みんなのためだったら……いいよ」


 遂に堕ちてしまった。


「お前たち! 今クリアが酒造りを許可したぞ!」

「「「「「おーー!!」」」」」


 こうして、ドワーフというとても頼りになる仲間を迎えたけれど、同時に酒という強大な敵も迎えてしまった。

 今のうちに、飲みすぎ防止に関する決まりを考えておかなきゃ……。

興味があり新しい短編を書き始めました。

そのため更新が週1~2回になりますがご容赦ください

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