34話 健康的な町の変化!
前回のあらすじ
勇者たちが健康的に無双してた
「みんなー! 今日もラジオ体操から始めるよー!」
「「「「「おー!」」」」」
健康的な町づくりを開始して二週間。
今日もみんなを町の広場に集め、毎朝恒例のラジオ体操をしていた。
「いち、に、さんし!」
「「「「「いち、に、さんし!」」」」」
最初は体操だけで力を使い果たしていたゴブリン、インプ、元ゾンビのみんな。
だけど、日を追うごとに体力がついてきたみたいで、今ではスムーズに体操を終えることができていた。
「フウ、今日も、いい汗カイタ」
「……オイラ、満足」
「では、今日の仕事は終わりですね」
「こらー! まだ始まってすらいないから!」
リーダー三人組の、ゴブ郎、プー吉、ゾビ夫が帰ろうとするのでツッコむ。
体操が終われったら朝食。
その後、それぞれの持ち場へ向かい、作業に入る。
「よし、アンナちゃん、スラちゃん、行こうか!」
「ああ、そうだな」
『……!』
スラちゃんが私の頭の上に飛び乗る。
ここがお気に入りらしくて、最近はいつも乗っている。
私とアンナちゃんの仕事は見回りだ。
まずは作物を育てている農場へ行く。
「お、しっかりやってるねー!」
農場ではゴブ郎率いるメタゴブ部隊が鍬を振っていた。
この二週間、メタゴブ部隊は野菜中心の食事メニューと毎日の労働により、少しずつ体型が改善されていた。
それでもお腹は出てるけど、ボールのように転がらなくなったので、十分な成果と言えるよね。
そして、プー吉率いるガリンプ部隊は作物の収穫、種まきを担当している。
ガリガリに痩せた体は、肉やパンを中心としたバランスのいい食事メニューと運動のおかげで、少しずつ肉がついてきている。
そのおかげか、最近は翼で空を飛んでもすぐにバテることがなくなった。
うんうん、いい傾向だ。
「すっかり農場らしくなったな」
「そうだねー」
みんなの働きにより、徐々に畑の面積は拡大している。
まだ一人一人の作業スピードは遅いけど、そこは百人以上の人海戦術でカバー。
更にグリーンソイルのスキルで毎日作物を収穫できるため、どんどん食料の備蓄を進めている。
「農場は問題なし! 次行こう!」
次に足を運んだのは、グチャゾビ部隊が作業している牛の牧場。
最初は古びた柵だけしかない場所だったけど、今は簡易的な畜舎を作った。
そしてグリーンソイルの力で牧草を生やして、牛の餌にしている。
「モー♪」
「みんな、ご機嫌そうだね」
牛たちが私に近づいてきて、すり寄ってくる。
牧草を生やしたからかな?
なんか懐かれてるんだよね。
嬉しいけど、大きな牛に囲まれると、ちょっと圧がすごい。
スラちゃんもアンナちゃんもいるから大丈夫だと思うけど。
「クリア様、アンナ様、見回りですか?」
そう言いながらゾビ夫さんが歩いてくる。
「ああ。何か問題はないか?」
「そうですねー、作業中に骨がボキボキ折れること以外は問題ないですね」
「そうか、なら問題ないな」
うん、普通なら大問題なんだけど、なんかもう慣れちゃった。
グチャゾビ部隊は骨が弱いから、牛乳を中心にカルシウムやタンパク質、ビタミンを摂れる食事メニューにしている。
そのおかげで一応骨が折れる回数は減っているから、このまま継続していけばいいと思う。
「私たちの仕事を見ていきますか?」
「じゃあちょっとだけ見て行こうかな」
お世話の内容はブラッシング、乳搾り、肉の解体作業など。
さらに刈り取った牧草を天日干しにして、干し草を作ることにも挑戦している。
見た目が人間なのもあって、みんな普通の酪農家みたいだ。
「じゃあ私はそろそろ行くね」
「あ、クリア様。これから牛の生解体が始まるのですが、見ていきませんか?」
「あ、それはいいや」
グロいのはみたくない。
さっさとその場を離れる。
次は町の見回りだ。
相変わらずボロボロで、建物は崩れかけていたり、屋根には穴が開いている。
だけど、この二週間で大きく変わったことがある。
「あ、スライムのみんな、お疲れ様!」
『『『『『……!』』』』』
道を歩いていると、クリーンスライムのみんなが町のあちこちを掃除していた。
ゴミや汚れを自分の体で消化し、町を綺麗にしているのだ。
おかげで見た目はまだボロボロだけど、清潔感あふれる町並みになっていた。
「今日もありがと――うわぁ!?」
スライムのみんなが一斉に私へ跳んできて、あっという間にスライムの山に埋もれる。
「みんなどいてー!」
じゃれついてるだけってのはわかるけど、さすがに重くて苦しい!
「……懐かれ過ぎるのも考えものだな」
「アンナちゃんは見てないで助けてー!」
その後、なんとかスライムたちから解放されて広場に向かうと――。
「あれ? アンナちゃん、あんなところに井戸なんてあったっけ?」
広場にこの前までなかった井戸を見かける。
「忘れたのか? 先日新しく作っただろう」
「あ、そういえばそうだった」
井戸を見ると、覗き込みたくなるのが人としての性。
という訳で顔を出して覗き込むと――。
「はーい♪」
「うわぁ!?」
井戸の中から突如クインが現れ、思わず尻餅をつく。
「び、びっくりしたー……」
「こんなところで何をやってるんだお前?」
「ちょっと水の流れを確認してたのよぉ。そしたら二人の声が聞こえたから、ついね♪」
「心臓に悪いよもう……」
相変わらずおちゃらけた性格だ。
だけど、クインはこの町にすごく貢献してくれている。
この二週間の間で、クインは水魔法を使い川と町の地下を繋いで、町の各所に井戸を作ってくれた。
さらに水洗トイレも配置。
排水は一カ所にまとめて、クインの濾過魔法で綺麗にする。
これにより、領民のみんなは清潔な生活が出来るようになった。
最後の見回り場所は私の屋敷。
中の大きなキッチンでは、ゾヴィ夫人がみんなの食事を作ってくれている。
「ゾヴィ夫人、何か困った事とかない?」
「あらクリア様、大丈夫ですよ~。今は私だけじゃありませんからね~」
さすがにゾヴィ夫人一人で、毎日みんなの料理を作るのは大変だ。
なので領民のみんなから何人か選んで、料理の手伝いをしてもらっている。
料理が出来る人が増えれば、ゾヴィ夫人の負担も減るし、その分休めるからね。
そして午前の見回りは終了。
一旦私の部屋に戻り、牛乳を飲みながらアンナちゃんと一息つく。
「ふう、今日もみんな健康的な生活を送ってるみたいでなによりだよ」
「それはいいんだが……。クリア、まさか現状で満足してないだろうな?」
アンナちゃんが真面目な顔で私を見つめてくる。
「……満足してないよ。この町には……決定的に足りないものがあるからね」
「ふふ、お前も成長してきたようだな。で、その足りないものとはなんだ?」
「それは…………魚だよ! 魚は健康にいい食べ物で、カルシウムやDHAも豊富に含まれているんだから! それに料理の種類も増えるだろうし、さらにバランスのいい食事がとれるようになるよ! この町は海から近かったよね? みんなの仕事に少し余裕が出てきたら、さっそく魚を獲りに――」
「ちっっがぁぁーーう!!」
「ええーー!?」
めちゃくちゃ否定された!?
「健康的には重要なのかもしれないが、今はそこじゃない!」
「えっと……じゃあ何が足りないの?」
「……資材だ」
「し、資材?」
なんか健康と関係ないワード出てきた。
「考えてもみろ。町の建物はどれもボロボロだ。家を直すにも、道を整備するにも全て資材が必要になる」
「た、確かに……」
言われてみればその通りだ。
みんなの生活習慣ばかり気にしてて、他のことを考えてなかった。
「でも、この辺に資材を確保できそうな場所なんてないよ?」
この町の周辺は荒れ果てた土地ばかりだ。
木もなければ、使えそうな石もない。
「ああ。だからこそあたしたちがやるべき事は……交易だ」
「なるほど、他の町や商人から資材を買うんだね!」
「ああ、そうだ。ここからは町の外にも目を向けないといけない」
「い、一気に領地経営っぽくなってきたね」
なんかドキドキしてきた。
「まあ、問題はこの町が魔王領の中でも辺境にあるという事だな」
「……それって、交易難しくない?」
「ああ。こんな場所へ商売に来るもの好きなんて滅多にいない。だからこそ、こっちから出向く必要が――」
コンコンッ。
「クリア様、ちょっと宜しいですか〜?」
ノックの音と共にゾヴィ夫人が入ってくる。
「どうかしたの?」
「町の外から、商人の方が参りましたよ〜」
「「え?」」
タイミングの良すぎる訪問に、思わずアンナちゃんと目を合わせる。
いや、フラグ回収早すぎない?
「どうしますか〜」
「ちょうど良い。行くぞクリア」
「うん、わかった!」
よーし交易の第一歩。
商人さんに会いに行こう!
二章開幕です。
次回新キャラ登場。




