幕間 勇者一行、ダンジョンで無双する
前回のあらすじ
健康的に領民が団結した。
クリア(久里)が健康的な町づくりに奔走している一方――。
人間の国の王都。
その地下には試練の洞窟と呼ばれるダンジョンが存在する。
「陽葵さん、シールドをお願いします」
「オーケー! 『セイクリッド・シールド』!」
ガキーーン!!
大きく振りぬかれた斧が魔法による光の盾により防がれる。
『グォォォォォ!!!』
洞窟全体に響き渡る巨大な咆哮。
「やれやれ。攻撃を防がれてご機嫌斜めみたいだな」
「短気は損気ですわよ。魔物風情に言っても意味ないでしょうけど」
ここは試練の洞窟の最深部。
そこに潜むボス、双頭のミノタウロス。
その名の通り牛の頭を二つ持ち、四本の腕でそれぞれ斧を振り回す巨大な魔物。
勇者として召喚された私たち、「高嶺 凛華」、「青井 颯斗」、「朱音 陽葵」は訓練のため、このダンジョンに挑んでいた。
『グォォォォ!!!』
ミノタウロスは四本の斧を振り回し、陽葵さんが作り出したシールドを叩き割ろうとする。
「陽葵さん、シールドはいつまで持ちますの?」
「ふふ~。まだまだ余裕だよ~♪」
「なら、焦ることはありませんわね。いつも通り行きましょう。颯斗さん」
「ああ、わかっている。燃え盛る紅蓮の鳥よ――眼前にいる敵を焼き尽くせ。『フェニックス・ストライク』」
颯斗さんが呪文を唱えると、上空に巨大な火の鳥が形成され、陽葵さんが作り出した光の盾を越え、ミノタウロスへと飛んでいく。
『グォォォォォ!!』
それを迎え撃つように、ミノタウロスが四本の腕を振り上げ、迫り来る火の鳥を叩き落とそうとする。
しかし——。
「無駄だ」
火の鳥は振り下ろされた斧をものともせず、そのままミノタウロスへ直撃する。
ドゴォォォォン!!
火の鳥がミノタウロスに直撃した瞬間、凄まじい炎が一気に噴き上がる。
巨大な炎の柱となった魔法は、ミノタウロスの巨体を包み込んだ。
『グォォォォォ!?』
炎の柱の中から、ミノタウロスの苦痛に満ちた咆哮が響き渡る。
「流石颯斗っち〜!」
「このくらい当然だ」
そう言いながら、颯斗さんはメガネをくいっと上げる。
「よくやりましたわ。あとは任せなさい」
ミノタウロスはまだ倒せていない。
聖剣を構え、一気に駆け出す。
『グォォォォォ!!』
ミノタウロスは魔法で体を焼かれるも、戦意を失わず四つの斧を振りかぶってくる。
その巨体から繰り出される斧によって、とてつもない風圧が襲ってくる。
あの力、一撃でもまともに喰らえば命はないでしょう。
しかし——。
「遅いですわ」
ダメージを受けたミノタウロスの速度は鈍っている。
見切るのは容易い。
走りながら右へ躱す。
屈んで躱す。
左へ躱す。
最後に横薙ぎに振り抜かれた斧を跳躍して躱し、一気にミノタウロスの頭上へと移動する。
「終わりです」
聖剣の刀身から眩い光が溢れ出し、周囲を白く染め上げていく。
「眠りなさい。『ヘブンズ・スラッシュ』」
振り上げた聖剣を、一気に振り下ろす。
ズバァァァン!!
聖剣による光の斬撃が、ミノタウロスの頭から胴体まで真っ二つに斬り裂く。
『グ……ォ……』
そのまま左右へと崩れ落ち、双頭のミノタウロスは光の粒子となり、消えていった。
「ふう……」
聖剣を静かに鞘へ納める。
「凛華っちさすが~!」
陽葵さんがはしゃぎながら走り寄ってくる。
「このくらい大したことありません。それよりも……颯斗さん?」
「なんだ?」
「手加減とは感心しませんわね。あなたの魔法ならこの程度の相手、焼き尽くすこともできたのでは?」
「当然だ」
颯斗さんは悪びれもしない様子で、きっぱりと言い切る。
「え~? 颯斗っち舐めプしてたの~?」
「ダンジョンのボスを俺だけで倒してしまったら味気ないだろう。凛華の出番を残してやっただけだ」
「あら、ご配慮ありがとうございます」
実際、私一人でも苦戦することなく倒せたでしょう。
ダンジョン最深部のボスがこの程度とは……。
「……期待外れですわね」
「同感だ」
「私たち、もしかして最強~?」
「油断大敵ですわよ陽葵さん」
ダンジョンは、あくまで魔族と戦う前の準備運動に過ぎない。
この程度でいい気になるのはいささか早いでしょう。
「さて、みんなと合流しますわよ」
もうここに用はない。
二人を連れて、ダンジョンを引き返す。
そのうち、やがて前方から戦闘の音が聞こえてくる。
さらに進むと、見慣れた顔の面々が魔物と戦っていた。
「あれは、クラスメートと騎士団の方々ですわね」
同じく訓練に来たクラスメートと、監修のために来た騎士団の方々。
彼らは鎧を着た豚の魔物、オークナイト相手に善戦を繰り広げていた。
私たちには遠く及ばないとはいえ、彼らもよくやっている。
「おお! 凛華殿、陽葵殿、颯斗殿! 戻られましたか!」
騎士団の団長が私たちを見つけ、駆け寄ってくる。
「無事で何よりです! ……しかし、勝手な行動はいただけませんぞ」
「仕方ないじゃ~ん。ここら辺の魔物、弱すぎるんだもん~」
陽葵さんの言う通り、私たち三人では出現する魔物は相手にならず、クラスメートたちも大勢いる。
これでは自由に戦うことが出来ない。
訓練にならないと思った私たちは、先行してダンジョン最深部まで潜ったのである。
「まあ、最深部のボスも正直言って手ごたえがなかったがな」
「なんと! あの双頭のミノタウロスがですか!? 騎士団の一個小隊が全力で戦い、ようやく倒せるかどうかの強さだったのですが……。さすが勇者様とそのお仲間ですな!」
団長が感心した様子で私たちに賛辞を贈る。
しかし、あんな取るに足らない魔物を倒した程度で褒められても困りますわね。
そう言おうとしたその時……。
『『『『『ギギギギギ!!』』』』』
ダンジョンの奥から大量のゴブリンが湧いてくる。
数は軽く数十以上。
「うわ、キモ~!」
「俺の魔法で片付けよう」
「いえ、その必要はありませんわ」
颯斗さんを制し、ゴブリンたちの前に出る。
「戦うまでもありませんわ。裁きの光、『ジャッジメント・レイ』」
聖剣を掲げ魔力を流すと、刀身からまばゆい光が溢れ出した。
これは聖剣による、魔族を滅ぼす破邪の力。
『『『『『ギギギギギーー!?』』』』』
光に飲まれたゴブリンたちは、それだけで粒子と化し、消滅していく。
後には、一匹たりとも残らなかった。
「おお! さすが勇者様! 伝説通りですな!」
聞いた話によると、過去の勇者はこの力で数千の魔族を一瞬で葬り去ったという。
私はまだその域には達していない。
ですが――。
「伝説通り? いいえ。私はいずれ、伝説を超えて見せますわ」
そして、いずれ私はこの世界の頂点に君臨する。
魔王討伐など通過点にすぎない。
「もうここにいる意味もありませんわね」
「さっさと帰ろ~」
「次は、もっと歯ごたえのあるダンジョンを期待したいところだな」
そうして、私たちはさらなる強敵を求めてダンジョンを後にした。
クリアがコメディを繰り広げてる一方、勇者たちは王道的に異世界で実力をつけています。
面白かったら感想、評価お願いいたします。




