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32話 集合、体操、死屍累々!?

前回のあらすじ


領民のみんながアンナちゃんの健康的脅しに屈した。

 領民のみんなに認められた次の日の早朝。

 私はゾンビーフの牧場がある村の外れにみんなを呼び出した。

 ……のだけど。


「なんで誰も来ないの!?」


 ヒューっという風の音が聞こえそうなくらい、見事に一人も来ていなかった。

 いるのは私、アンナちゃん、スラちゃん、クインの四人だけ。

 

「いきなりバックレられたのかしらぁ?」

「いや、来ようとはしているみたいだぞ」


 アンナちゃんのいう通り、町の方からゴブリンとインプのみんながゾロゾロと集まってくる。

 だけど、ゴブリンはボールのように丸々とした体のせいでうまく歩けず、ゴロゴロと転がりながらやってくる。

 インプのみんなは、痩せ細って体力がないせいで、飛んで休んで、飛んで休んでを繰り返してこっちに向かっている。


 そして、こちらに辿り着く頃には――。


「ハァ……ハァ……。たどりツイタゾ」

「……オイラ達、もうヘトヘト……」


 どっちも来るだけで疲れ果てていた。


「町の外れに集まるだけでこれなの!? ていうか、ゾンビのみんなはどこ?」


 新鮮に生まれ変わって普通の人間と変わらない姿になったし、前みたいに肉が腐り落ちるなんてことはないはず。

 そう思っていると、町の方から何かが地面を擦るような音が聞こえてくる。


「何この音……ってうわぁーー!?」


 音の方向を見ると、生まれ変わった元ゾンビのみんなが地を這い、苦痛に歪んだ顔をしながらこっちに向かってくる。


「ウアアアアアア……」

「痛い……辛い……」

「いっそ殺せ……」


 いや、怖い!

 前回みたいに肉が腐り落ちるほうがマシってレベルで怖い!


「みんな、一体どうしたの!?」


 慌てて駆け寄ると、ゾビ夫さんの肩を支えながらゾヴィ夫人が歩いてくる。


「クリア様、おはようございます~」

「おはようゾヴィ夫人……じゃなくて! 何がどうなってるの!?」

「実はね、みんな足を骨折しちゃったのよ~」

「え?」


 ゾヴィ夫人(元おばさんゾンビ)が言うには、今朝からみんな、歩くだけで骨が折れるようになったらしい。


「……なんで?」

「疲労骨折かしら~?」

「そんなレベルじゃないでしょ!」


 もしかして、ヘルシークッキングで新鮮な体に生まれ変わっても、不健康な体が治るわけじゃないのかな?

 肉は腐り落ちなくなったけど、代わりに骨が脆くなるなんて……。

 いや、元から骨も弱かったのかもしれないけどさ。


「みんな味覚だけじゃなくて痛覚も戻っちゃったから、骨折が痛くてみんな苦しんでるみたいよ~」

「そんなほんわかに言われても!? ていうか、ゾヴィ夫人は大丈夫なの?」

「大丈夫みたいね~。日ごろから屋敷の管理をしてたからかしら~?」

「なるほど、毎日働いてたから丈夫になったんだね」

 

 でも、この惨状どうしよう。

 もしかして生まれ変わらせたの逆にまずかった?

 みんなが骨折の痛みに苦しみながら毎日を過ごすことになってしまったら……。


「ど、どうしよう……」


 アワアワして困っていると。


「大丈夫よクリア様~。実際はそんなに痛くないし、ゾンビは骨折もすぐ直るから~」

「え?」


 ゾヴィ夫人がそういうと、ゾビ夫さんが普通に自分の足で立ち、地面を這っていたみんなも次々と立ち上がる。


「え……みんな大丈夫なの?」


 ポカーンとしていると、ゾビ夫さんが答える。


「はい。骨折したのは本当だったんですけど、もうとっくに繋がってます」

「……じゃあ、あの苦痛に歪んだみんなの姿は?」

「ちょっとしたドッキリですよ。騙されましたねクリア様。あはははは!」

「「「「「あははははは!」」」」


 ドッキリ大成功といった感じで元ゾンビのみんなに笑われる。


「心臓に悪いよ!」


 イラッとして、思わずゾビ夫さんのすねを蹴る。


 ボキッ!!


「え?」

「いたっ!」


 骨が折れる音がするとともにゾビ夫さんが倒れ、その衝撃でゾビ夫さんがグチャっとなって動かなくなる。


「わー!? 本当に骨が弱かったー!」

「あら、全身の骨が砕けちゃったかしら〜。こうなったら回復まで三分はかかるわね〜」

「って三分で回復するんかーい!」


 死んでるのに生命力高すぎ!


 そんなやり取りをした後、なんとかみんなを整列させる。


「それじゃあみんな、点呼取るよ!」


 そう言って、目の前に並んだみんなを見渡す。


「まず、ゴブ郎率いるゴブリン部隊――」

「ちょっとマテ」

「え?」


 ゴブリンのリーダーであるゴブ郎が手を挙げて制止する。


「ゴブリン部隊、普通スギ。もっとイイ名欲しい」

「……オイラも。インプ部隊じゃヤダ」

「私たちもかっこいい部隊名が欲しいです」


 プー吉とゾビ夫さんもいい部隊名を欲しがり始める。


「うーん、そうだなー」

「ちょっと待ってクリア様」

「部隊名だったらあたしたちが考えよう」


 何故かアンナちゃんとクインが思案する私を止めてくる。


「いや、大丈夫。いいの思いついたよ!」

「本当だろうな?」

「心配ねぇ」

「任せてよ! まずはゴブリンのみんな! 君たちはメタボなゴブリンだから――メ(・)タ(・)ゴ(・)ブ(・)部(・)隊(・)!」

「「「「メタゴブ部隊!?」」」」」


 ゴブリンのみんながざわつく。


「インプのみんなは、痩せてガリガリした体をしてるからーーガリンプ部隊!」

「「「「……ガ、ガリンプ部隊……?」」」」」


 インプのみんなが顔を見合わせる。


「最後に元ゾンビのみんな! 君たちはすぐ体がグチャっと潰れるからーーグチャゾビ部隊!」

「「「「「グチャゾビ部隊!?」」」」」


 元ゾンビのみんなが驚きの声を上げる。


「よし、決まった! どう二人とも、私の名付けセンスは?」

「最悪ねぇ……」

「一回死んでこい」

「辛辣!?」


 ショックを受ける一方で――。


「イイナ、メタゴブ部隊」

「……ガリンプ部隊……イイ」

「わかりました! 今日から我々はグチャゾビ部隊です!」


「ほら、みんな気に入ってるじゃん!」

「お前らは本当にそれでいいのか!?」


 そんなわけで部隊名も決まった。

 改めて点呼を取った後、みんなに今日やることを伝える。


「みんな、今日から町と健康のため、みんなに働いてもらうよ!」


「ソレは、兵士らしい仕事か?」

「……オイラ達、肉体労働はチョット……」

「グチャっとならないよう頑張ります」


 うん、みんなやる気十分……ではない気がするけどまあいいか。


「じゃあ、まずはラ(・)ジ(・)オ(・)体(・)操(・)から始めるよー!」

「「「「「ら、ラジオ体操?」」」」」


 みんなが首をかしげる。

 まあ異世界だし、みんな知らないよね。


「働く前の健康的な準備運動だよ! みんな、私の動きを真似てみて! はい! いち、に、さんし!」


「「「「「い……いち、に、さんし!」」」」」


 私に合わせて、みんなが一斉に腕を動かす。

 うん、みんないい感じ!

 ……と思っていると。


「はい、次は腕を大きく回してー!」


「こ、コウカ? ウギャッ!」


 メタゴブ部隊のみんなが大きなおなかのせいで、バランスを崩して地面に転がる。


「次、前屈(ぜんくつ)!」


 ボキッ!


「こ、腰の骨がーー!!」


 グチャゾビ部隊のみんなが前屈しただけで腰の骨が折れる。


「次、体を大きく回してー!」

「ゼェ……ハァ……。も、もう一回動いたら死ヌ……」


 ガリンプ部隊のみんなが体力を使い果たして倒れる。


「…………」


 そんなこんなで、ラジオ体操が終わるころには死屍累々となっていた。

 

「前途多難すぎるよ!」


 ラジオ体操もまともにできないなんて……。

 いや、でもまだ初日だ、仕方ない。

 みんなが健康になれるよう、私が導いてあげるんだから!


「みんな、ちょっと休んだら始めるよ! 健康的な町づくりを!」

茶番ばかりやってたらなかなか話が進まない件


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