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31話 領民に(一応)認められました!

前回のあらすじ


ゾンビのみんなを新鮮で健康な状態にした

「スキル……発動! ……の前に休憩を三十分とりまーす!」

「「「えーー!?」」」


 みんなが思わずずっこけそうになる。


「いやー、食休みは必要だし……」

「……だったら今から何かしますって空気を出すな」


 アンナちゃんに呆れられ、三十分後。

 

「じゃあ今度こそスキル発動!」


 とにかく巨大なものを想像する。

 みんなが入(・)れ(・)る(・)ように。

 全員が楽しめるように。

 そして——。


「来て! 『クリーンホットバス』!」


 ドォォォン!!


「「「なにー!?!?」」」


 出現させたのは巨大な丸くて白い、魔法のバスタブ。

 中にはちょうどいい温度のお湯がたっぷりと張られている。


「こ、コレ、なんだ!?」

「……ドコから出した?」

「とても暖かそうですね」

 

 ふふふ、みんな驚いているね。


「みんな大好き、お風呂だよ!」


 またまたドヤ顔でみんなに言う。


「風呂ってナンダ?」

「……初めてキイタ」

「クリア様、説明を求めます」


「みんなお風呂知らないの!?」


 今度は私がずっこけそうになる。

 今までどうやって体を洗って……。

 いや、最近まで川は汚かったし、一度も洗ったことない!?


「お風呂は体を綺麗にするだけじゃなくて、体を温めて疲れも取れやすくなるんだよ! ゆっくりお湯に浸かればリラックスだってできるんだから!」


 そう、お風呂は健康生活に欠かせない大事な要素の一つ!

 みんなにはここでお風呂の大切さと気持ちよさを知ってもらうんだから!


「ほら、服を脱いで入って!」


「でも、大丈夫かコレ?」

「……アツそう」

「ちょっと怖いですね」


 ……なんか尻込みしてるし。

 もうめんどくさい。


「……スラちゃん。やっちゃえ」

『……!』


 リーダー三人組をスラちゃんの触手で捕まえる。


「「「え? ぎゃーーー!?」」」


 ザバァーーン!


 服を強制的に脱がし、そのままポイっとお風呂の中に投げ込んだ。


「いきなりナニすんだ!」

「……でも、このお湯キモチイイ」

「なんだか力が抜けていきます……」


 三人がお風呂の中でリラックスしていく。

 あの魔王様ですらこの気持ちよさに抗えなかったし、無理もないね。

 

「ほら、みんなも入って! 気持ちいいから!」


 そう言われ、領民のみんなも恐る恐る湯船に浸かっていく。


「……これ、本当に気持ちいい」

「最高ダ……」

「もう俺たち、ここに住む……」


「いや、住むのはダメだからね」


 みんな早速お風呂に夢中みたい。

 クリーンホットバスの力で、体の汚れも垢のように溶けだしていく。

 でも、お湯は全く汚れないから不思議だよね。


「よし、今のうちに……」


 みんながお風呂へ浸かってる間に、脱いで山になった服に目を向ける。

 

「どれどれ……おえぇぇ!!」


 試しにゴブリンがつけていた腰布を嗅いでみると、あまりの臭さに思わず吐きそうになる。

 これはやばい……!


「今すぐきれいにしないと……みんな、出番だよ!」


 クリーンスライムのみんなを呼び、一匹にゴブリンの腰布を渡す。


『……!』


 スライムは腰布を受け取ると、自分の体の中に取り込んでいく。

 すると、染みついた黄ばみや頑固な汚れがジュワッと溶けだしていく。


「おーー!」


 そして数秒後、スライムが腰布を吐き出すと――。


「完璧! 真っ白になってる!」


 さっきまでの汚れは完全に無くなり、まさに驚きの白さ!

 さらに爽やかないい匂いへと早変わり!


「よーし! みんなやっちゃえー!」

『『『『『……!!』』』』』


 クリーンスライムのみんなが汚れた服に群がり、次々と洗濯していく。


「みんな頑張れー!」

「クリア、お前は手伝わないのか?」


 アンナちゃんに鋭くツッコまれる。


「いや、手伝いたいんだけどねー……」


 バブルウォッシュバレルで洗うこともできるけど、みんながお風呂から上がるまでに乾燥させるのは難しい。

 なので、今回はみんなに頑張ってもらう。


 そして十数分後、汚物のような服の山は、まるで新品のようにピカピカになっていた。


「みんな、お疲れ様!」


 お礼を言うと、スライムのみんなが嬉しそうにピョンピョン跳ねる。

 

「さーて、そろそろみんなお風呂から上がる頃かな……?」

「ねぇクリア様」

「どうしたのクイン?」

「領民のみんな、すっかりお湯の中でとろけちゃってるわよぉ」

「え?」


 お風呂の中を見ると、ゴブリン、インプ、ゾンビのみんながお湯の中で溶けてしまったかのようにダラーンとしていた。


「極楽ダ……」

「……オイラ、もう動きたくナイ……」

「一生このまま浸かっています……」


「げぇ!?」


 気持ちよすぎて逆にやばいことになってる!?

 

「みんな、長風呂はダメだから! ほら、上がって!」


「「「……ヤダ」」」


「やだじゃなーい! スラちゃん!」


「「「ぎゃーー!?」」」


 結局スラちゃんの触手で無理やり引っ張り出すことになった。


 用意しておいたタオルと洗濯した服をみんなに渡していく。


「はい、最後にこれもどうぞ!」


 そして、風呂上がりの一杯ということで、みんなに冷たい牛乳を渡していく。


「ウマい! 火照った体に染みるゾ!」

「……風呂上がりの牛乳、サイコウ……!」

「ぷはー、さっぱりしました!」


 みんながお風呂でさっぱりして、幸せそうに牛乳を飲んでいる。


「うんうん、お風呂のおもてなしも大成功だね!」


 私はそう満足げに頷くのだった。




 そして――。


「それじゃあみんな、今日のおもてなしはどうだった? 私の事、少しは認めてくれたかな?」


 再び広場の壇上に立って領民のみんなに問いかける。


「おもてなしは最高ダッタ。口だけジャナイ、それはワカッタ」

「……けれど、やっぱりおまえニンゲン」

「いや、私たちは認めますよ。でも、やっぱり四天王として威厳はありませんね。あとグラマーじゃないですし……」


「えー……」


 おもてなしのパーティーは大成功だったけど、みんなの上に立つ存在として響いたかどうかは別問題ってこと?

 でも、私にこれ以上何かしろって言われても……。


「仕方ない、ここはアタシに任せろ」


 そう言いながらアンナちゃんが私の前に出る。


「お前たち、クリアは確かに人間だ。威厳もない。おまけにお前らを率いるだけの強さもない」


 ……なんかボロクソに言われてるんだけど。


「だが、こんなのでも魔王様直々に選ばれた四天王だ。それに、実力は無くともクリアはお前たちの生活を向上させる力があり、それをお前たちのために使っている」


 お、下げてから上げる手法だった。

 うんうん、その調子で説得しちゃってアンナちゃん!


「大体……クリアに従わないのなら、今日みたいな美味い食事や風呂は、もう一生味わえないだろうな」


「「「クリア様に従います!!」」」

「えーー!?」


 そう言って領民のみんなは一斉に頭を下げた。


「アンナちゃん! これ、私が脅してるみたいになってない!?」

「細かいことは気にするな。ようやく領民の心を掴んだんだ。素直に喜べ」

「複雑だよ〜……」


 まあでも、これでやっとみんなに健康的な生活を送るよう命令できる。

 大きな一歩だよね。


「で、オレたち何をすればイイ?」


 リーダーゴブリンが一歩前に出て聞いてくる。


「えっと……そういえば名前を知らないんだけどなんて呼べばいい?」

「オレはゴブリンだ。名前なんてナイ。そもそも必要か?」

「いや、必要だよ」

「だったらオマエつけろ」

「うーん、そうだなー」


 リーダーの三人だけでも名前をつけておいた方がいいよね。


「だったら私にもつけてほしいわー」


 横からおばさんが話に入ってくる。


「そういえばおばさんも名前なかったね」


 すっかりおばさんで定着してたしこのままでもいいとは思うけど、この際しっかりつけておこう。


「決めた! ゴブリンの君はゴブ郎!」

「ゴブ郎!?」

「インプの君はプー吉ね!」

「……オイラ、プー吉?」


 そしてゾンビのリーダーはおばさんと夫婦だから……。


「ゾンビのあなたはゾビ夫! おばさんはゾヴィ夫人で!」

「ゾビ夫!?」

「ゾヴィ夫人!?」


 よし、いい名前が決まった。

 満足げに頷いていると、アンナちゃんとクインが呆れた目をしてこっちを見ている。


「……おいクリア、適当過ぎるだろう」

「流石にそれはないんじゃないかしらぁ?」

「そうかな? 覚えやすいしいいと思うんだけど」

「いや、奴らが納得するとは……」


「ゴブ郎……イイナ」

「……オイラ、今日からプー吉!」

「ゾビ夫……なかなかかっこいいですね」

「ゾヴィ夫人、素敵じゃない〜」


「ほら、みんな気に入ってるよ」

「それでいいのかお前らは!?」


 こうして、領民に一応認められた私だった。

 よし、明日からみんなを健康的に生活させるぞー!

ちゃんと面白い内容になってるか不安……。


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