29話 みんなをもてなせ! 肉厚BBQ!
前回のあらすじ
土も作物も健康にするスキルが発現した
パーティーの準備を始めてから一週間後。
私は今、町の広場に住民であるゴブリン、インプ、ゾンビのみんな、総勢三百人を集めて壇上に立っていた。
「ふっふっふ、よく来たね。愚かで不健康な愚民どもよ」
威厳を出すため、腕を組んで不敵に笑ってみる。
「何言ってんだコイツ?」
「……アタマ、おかしくなった?」
『元からじゃないですか~?』
「失礼極まりないよ!」
まあ似合ってないとは私自身思ってたけどさ~……。
「ゴホンッ。以前みんなは言ったよね? 口だけじゃなくて、役に立てることを証明してみろって。今日は私がこの町に来て出した成果を発表するよ!」
勢いよく人差し指を上げる。
「まず一つ目! 私はこの町の水問題を解決したよ!」
「イヤ、それは知ってるゾ」
「……確かに、水美味しくなった。ケド、それがどうした?」
『それよりもグラマーになってください~』
「…………」
まあいいや。
以前も微妙な反応されたからこの結果はわかってたし。
それより次が本命!
「二つ目! 私はこの町の食糧問題を解決して、新鮮な肉と作物を手に入れられるようにしたよ!」
これはさすがに驚くだろうと思ってドヤ顔する。
その結果。
「新鮮な肉と作物? それがドウシタ?」
「……食料、ゾンビ肉あればジュウブン」
『それよりもグラマーになる努力を~』
「少しは感動してよ!」
普通の町なら大喝采ものだと思うんだけど!?
後ゾンビは相変わらずブレないね!
……だけど、これも想定内。
魔族のみんなはゾンビ肉としなびた野菜だけ食べて生きてきた。
つまり、それより美味しいものを知らないだけ。
「ふっふっふ。そう言ってられるのも今のうちだよ! これからみんなを思いっきりもてなしてあげるんだから! アンナちゃん! スライムのみんな! 出番だよ!」
「ようやくか、待ちくたびれたぞ」
大声で合図を出すと、アンナちゃんとスライムのみんながいくつもの鉄板と、大量の串に刺さった牛肉が乗った皿を運んでくる。
「な、ナンダ? アノ肉は?」
「……スゴク、赤々としてる」
『私たちの肉とは全然違いますね~』
ふっふっふ。
そりゃ腐って黒く変色した肉しか知らないんだから驚くよね。
でも本番はここから!
「みんな、一斉に焼いていくよ!」
壇上から降りて、広場に設置した鉄板に肉を並べていく。
ジュゥゥゥゥゥッ!!
「「『ウォッ!?」」』
串に刺した肉厚の牛肉が鉄板に触れた瞬間、肉の焼ける音が響き渡る。
そして、同時に食欲を刺激する香ばしい香りが広場に広がっていく。
「な、ナンダこの……食欲をそそるニオイは……?」
「……よ、よだれがトマラナイ」
ゴブリンとインプたちの視線が肉に集中する。
よし、効果あり!
「スラちゃん! 焼いた肉をゴブリンとインプのみんなに渡して!」
小皿に盛り付けた肉を、スラちゃんが体から延ばした触手で次々とゴブリン、インプのみんなに渡していく。
「た、食べていいのか?」
「もちろん! さあ遠慮しないで!」
赤いスカーフを巻いたゴブリンリーダーは、受け取った肉を恐る恐るかじる。
「ナ……こ、コレは……!!」
「……ど、ドウシタ?」
「う……う……ウマすぎるーーー!!!」
感動したゴブリンリーダーは、そのままバクバクと肉にかぶりつく。
「……ほ、本当か?」
そのリアクションを見て、インプたちのリーダーである二本角のインプが一口かじる。
「……こ、こんなウマい肉……食べたことない……!」
二本角のインプも我を忘れたかのように食べ始め、気付けばゴブリン、インプのみんなが夢中になって肉にかぶりついていた。
「ふふ、まあ無理もないね」
牛100%の肉厚BBQだもん!
腐ったゾンビ肉しか食べたことがないみんなにとっては舌がとろけるほど美味しいはず!
『あの~』
その様子を満足そうに見ていると、ボロボロの軍服を着たゾンビのリーダーが遠慮がちに声をかけてくる。
『私たち料理いらないんですけど~他のおもてなしはないんですか〜?』
うん、わかってるよ。
ゾンビのみんなは味覚がないし、食べなくても平気だから美味しい食事を楽しめないって。
「ふっふっふ、安心して。みんなも楽しめるおもてなしを考えてあるから! クイン、出番だよ!」
「は~い♪」
クインが姿を現して、ゾンビ達の前に進み出る。
「初めまして、ゾンビの皆さん♪ スライムクイーンのクインよぉ♪」
『『『『『ぐ、グラマーの美女だ~~~!!』』』』』
ゾンビ達が一気に興奮しはじめる。
ふっふっふ、やっぱりクインの抜群のプロポーションは、ゾンビ達の好みにドストライクだったね!
「あらぁ、そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいわぁ。ウフ♪」
そう言ってクインがセクシーなポーズをとる。
『『『『『…………』』』』』』
次の瞬間――。
ボォォォン!!!
「ええーーーー!?!?」
ゾンビ達の頭が一斉に爆発した。
「あら、ちょっと刺激が強すぎたかしらぁ?」
「そんなこと言ってる場合じゃないから! どうしよう!? みんな死んじゃった!」
「大丈夫よクリア様。頭が吹っ飛んだ程度でゾンビ達は死なないからぁ」
「え?」
クインの言う通り、徐々にみんなの頭が再生して戻っていく。
「あ、本当に大丈夫だった」
「ゾンビは光と炎魔法以外じゃ簡単に死なないからぁ」
「……さすが不死者だね」
死んでるのに生命力が半端ない。
『いやぁ~、いいものを見させていただきました~』
リーダーのゾンビが笑顔で言う。
予想外の事もあったけど、気に入ってくれたみたいでよかった。
でも――。
「ふっふっふ。なに勝手に満足しているのかな? 本当のおもてなしはここからだよ」
『え?』
私はニヤリと笑う。
そして、広場の奥へと視線を向けた。
「さあ、ゲストの登場だよ!」
「は~い」
ゾンビたちが一斉にそちらを振り向く。
すると、広場の奥から、一人の女性がゆっくりと歩いてくる。
艶のある金色の長髪。
血色のある艶やかな肌。
しっかりとした手足。
つまり、普通の人間の女性だ。
『……人間?』
『まだこの町に人間がいたのか?』
『綺麗な人ですね~』
その女性はニコニコしながら私たちのところまで歩いてくると。
「ふふふ。みんな、久しぶりねぇ~」
『……久しぶり?』
ゾンビのみんなが首をかしげる。
『あの~、どなたでしょうか~?』
「あら、分からないの? 私よ~」
ゾンビのみんなが本気で困惑している。
「それじゃあ、みんなに紹介するね」
私は女性の隣に立ち、満面の笑みを浮かべた。
「この人は――」
ゾンビたちが固唾を飲んで見つめる。
「屋敷の料理長だった、おばさんゾンビだよ!」
『『『『『…………え?』』』』』
ゾンビ達が一斉におばさんの方を振り向く。
「フフ、びっくりしたかしら~?」
『『『『『ええーー!?!?』』』』』
広場中にゾンビ達の絶叫が響き渡った。
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