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28話 そうだ、パーティーを開こう!

前回のあらすじ


種も土も不健康だった

「お願い『健康第一』! 私に力を貸して!」


 スキルに願いながら、空に向かって手を掲げる。

 そして、手の中に形成されたのは――。


「……麻袋?」


 出現したのは、手のひらサイズの麻袋だった。

 袋の中を覗き込むと緑色の粉が入っている。


「……これなんだろう?」


 触ってみると、砂のようにサラサラしている。

 

「クリア、それはお前の新しい道具か?」

「そうみたい。でも、どうやって使うんだろう?」

「……なんでお前自身がわかってないんだ?」


 アンナちゃんが呆れた顔で見てくる。


「仕方ないじゃん! スキルはそこまで教えてくれないんだもん!」


 全く、せめて説明書くらいつけてほしいよね。

 でも、今まで発現した道具たちはみんな私を助けてくれた。

 この粉もきっと何か意味があるはず。


「とりあえず撒いてみようかな」


 土に緑色の粉を撒いて、何か変化があるか試してみる。

 

 ――だけど数分経っても、土や粉に変化はない。


「うーん、使い方が違うのかなー?」

「クリア様、だったら当初の目的通り種を植えてみたらどうかしらぁ?」

「種を?」

「ええ。種を植えれば何か起こるかもしれないでしょう?」


 確かにそうかもしれない。

 クインの提案通り種を植えてみよう。


「でも、この硬い土をどうやって耕したら……ん?」


 スラちゃんがちょんちょんと私の足を突っついて、ポヨンと跳ねる。

 

「スラちゃん、どうしたの?」

『……!』


 スラちゃんが私の前に移動する。

 そして――。


 ポヨンッ!


「え?」


 スラちゃんが空中に大きく跳ね上がった。

 すると、体の前に大量の水が集まっていく。


「……何してるの?」


 次の瞬間――。


 ドシュゥゥゥッ!!


 まるで水圧銃のような水の塊が、ものすごい勢いで地面へと放たれた。


 ドッゴォォォン!!


「ええーーー!?!?!?」


 土が盛大に吹き飛び、地面に大きな穴が開く。


「「…………」」


 私だけじゃなく、アンナちゃんもその光景を呆然と見つめていた。


「……スラちゃん?」

『……!』


 スラちゃんが得意げにポヨンと跳ねる。


「もしかして……耕してくれたの?」

『……!』

「そうなんだ、ありがとう……ってやり過ぎだよ!」

『……!?』


 スラちゃんが「えー!?」とでも言いたげな反応をする。

 いやいや、本当に耕すってレベルじゃないから!

 まるで爆撃でも受けたような光景が広がってるから!


「……このスライムがここまで強かったとはな」

「当たり前よぉ。私の力を分け与えたって言ったでしょう?」

「分けた程度でこれか。さすがスライムクイーンだな」


 いや、本当だよ。

 まさかスラちゃんがここまで強かったなんて。


「もしかして、アンナちゃんより強かったりして?」

「……なんだって?」


 アンナちゃんが怖い顔で睨んでくる。

 

 あ、まずい。

 地雷踏んだかも。


「アタシよりスラちゃんの方が優秀だとでも言いたいのかクリア?」

「いや、そういう訳じゃ……」

「いいだろう。ならアタシの実力、見せてやる」

「え?」


 アンナちゃんが魔法の鞭を取り出し、雷の魔力を込め始める。


「吹き飛べ!」

「いやいや! ちょっとま――」


 ドカァーーーーーン!!!


「ぎゃーーーー!?」


 雷を帯びた鞭が広範囲の土を吹き飛ばす。


「面白そうね。じゃあ私もやるわぁ♪」

「ちょ、クインまで!?」

「えーい♪」


 さらに水魔法の爆撃が地面に炸裂し、大きなクレーターを作った。


 ――数分後


「「「………………」」」


 そこに広がっていたのは、まるで戦場跡としか思えない惨状だった。


「なんでこんなことになったのかなー? ねぇアンナちゃん、クイン?」


 笑っていない笑顔で二人を見る。


「……ちょぉっとやりすぎたかしらねぇ」

「……アタシは用事を思い出した。じゃあまた後でな」

「あ、私も川に戻るわぁ」


「二人ともちょっと待て―――!!! 庭を元に戻すの手伝えーーー!」


 その後、みんなで庭を元に戻すことに時間を費やしてしまい、気付けば夕方になっていた。

 なんとかトマトの種を植えて水を撒き、その上から緑色の粉を振りかけてみたものの……。


「……なにも変化が無いね」

「……変化ないな」

「あらあらぁ。残念ねぇ」


 土も、種も、緑色の粉も、何も変わっていない。


「一体何なんだろう、この粉?」

「どうも使い道がわからんな」

『それよりも、もう日が暮れるわよ~。今日は終わりにして明日にしたら~?』

「はぁ……。そうだね……。」


 おばさんにそう言われ、意気消沈のまま屋敷へ戻る。


「今日は何も収穫がなかったなー……」


 ベッドの中でそう呟く。

 でも、よく考えれば今までが上手く行き過ぎただけなのかもしれない。

 気を取り直して、明日また頑張ろう。

 ……そう思いながら私は眠りについた。


 ――だけど次の日、庭の様子を見に行くと……。


「……あれ?」

 

 昨日タネを植えた場所が緑色に覆われている。

 

「……え?」


 恐る恐る近づいてみる。


「これって……トマト?」


 そこには、真っ赤に熟したトマトがいくつも実っていた。

 しかも一つや二つじゃない。

 葉っぱの隙間から、数え切れないほどのトマトが顔を出している。


「…………」


「うわああああ!! トマトが実ってるーーー!!!」


 ——数分後。


「なんだこれは……化け物トマトか?」

『いっぱい実ってるわね〜』

「ふふ。随分立派に育ったわねぇ」


 みんなも呆然とトマトを見つめている。

 見たところ皮はツヤツヤで、一口食べてみると、果汁がジュワッと口の中に広がる。

 爽やかな酸味の後に、ほんのりした甘味が広がってとても美味しい。


「アンナちゃん! このトマトすごく美味しいよ!」

「美味しさなんてどうでもいい! 何をどうやったらトマトがたった一晩で実る!?」


 アンナちゃんがそう言って頭を抱える。

 まあ確かにそうだよね。

 しかも古びた種と、硬くて痩せた大地から。


「原因はやっぱり……あの粉だよね?」


 昨日発現した緑色の粉。

 多分あれは植物を成長させる肥料だったんだと思う。

 いや、効果抜群すぎでしょ。


『クリア様〜、土もすごく柔らかくなってるわよ〜』

「え?」


 おばさんに言われ足元を見ると、昨日粉を撒いた部分の土がサラサラになっていて、指で簡単に掘れる。

 しかも、そこから少し雑草も生えてきている。


「クワでも歯が立たなかったのに……。もしかして、土壌も回復してるのかな?」


 どうやらこの緑色の粉、作物を育てるだけじゃないらしい。

 汚染された土まで元気にしてくれるみたいだ。


「すごい便利だね!」

「これを便利の一言で済ませるな!」

「細かいことはいいじゃん! そうだ、緑色の肥料だし、この道具を『グリーンソイル』って名付けるのはどうかな?」

「はぁ……もう好きにしろ」


 そう言ってアンナちゃんはそっぽを向く。

 どうやら考えるのを放棄したみたい。


 とにかく、これで綺麗な水に加えて、新鮮なお肉と野菜が手に入るようになった。

 これだけ揃えば、領民だって私を認めるはずだよね。

 でも、どうせだから盛大に発表したいな。


「……そうだ、パーティーを開くのはどうかな?」

「いきなりなんだ?」

「領民のみんなをもてなして、私の成果を見てもらうんだよ!」

「……なるほど、それはいいアイデアかもしれないな」

「楽しそうねぇ、私も賛成よぉ♪」

『それなら、私も久々に料理長として腕を振るっちゃおうかしら~』

「……そういえば、おばさんって料理得意だったんだよね」


 なんかすっかり忘れてたけど。

 でも、それならいろいろと作れるかもしれない。


「よーし、さっそく準備を始めよう!」

「いやクリア、ちょっと待て」

「どうしたのアンナちゃん」

「料理でもてなすのはいいんだが、ゾンビたちはどうするんだ? 奴らは食べなくても生きていけるし、そもそも味覚すらないぞ」

「え、そうなの?」


 腕を引きちぎっても大丈夫だし、神経死んでそうだなとは思ってたけど。


「うーん……あ、そうだ。こんなのはどうかな?」


 この後、私が考えた案は採用された。

 そして一週間後、領民に認めてもらうためのパーティが始まろうとしていた——。

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