25話 私はとんでもないものを食べていました!
前回のあらすじ
健康的にジョギングした
水は生命の源。
綺麗な飲み水がなければ人は生きられない。
水源を浄化したおかげで、領地に澄み切った水を安定して供給できるようになった。
この成果を見せれば領民たちも認めるだろうと思い、私はゴブリン、インプ、ゾンビの代表者の三人を集めて川を見せたのだけど……。
「綺麗な水、必要カ?」
「……オイラ、別にどうでもイイ」
『ちっともグラマーに成長してないじゃないですか~』
という微妙な反応だけされて帰られた。
そして現在。
ガンッ!
「魔族の価値観が酷過ぎるよ!!」
私は屋敷の丸テーブルを叩きながら荒れていた。
「領民全員から称えられてもおかしくないと思うんだけど!?」
そうやって落ち込んでいると、スラちゃんが、体から触手みたいなのを伸ばして頭をなでてくれる。
うう……スラちゃんは優しいね……。
「まあもともと、汚れた水でも生きられた奴らだからな……。ありがたみがないのも仕方ない」
「うーん、私たちスライムにとってはとても喜ばしいんだけどねぇ」
アンナちゃんとクインはそう答える。
「それよりも、アタシはそろそろ朝食を食べたいんだが?」
グ~。
私のお腹が空腹を訴えてくる。
確かに、まだ朝ご飯を食べてなかった。
「はぁ……そうだね。まずはご飯にしようか」
お腹が満たされてないからイライラするのかもしれないしね。
「クインは何か食べる?」
「私は綺麗な水があれば大丈夫だからいいわよぉ」
「じゃあ水だけ持ってくるね」
私はそう言って厨房に移動する。
とりあえず簡単にサンドイッチを作ろうかな?
相変わらず腐ったダメな食材しかないので、ヘルシークッキングのスキルで新鮮な食材に変えてから調理する。
『クリア様~、おばさんも手伝うわよ~』
そう言いながらおばさんゾンビがやってくる。
「ありがとう。じゃあ肉を取ってくれる?」
『わかったわ~。せーの……』
「あ、自分の腕は取らなくていいから。牛肉を持ってきて」
いくらスキルで新鮮になるとはいえ、ゾンビの肉は食べたくない。
『クリア様~、好き嫌いはダメよ~?』
「生理的に無理だから!」
『仕方ないわね~』
そう言いながらおばさんが腐った牛肉を持ってくる。
すぐにヘルシークッキングで美味しく焼き、野菜と一緒にパンにはさむ。
よし、完成。
「そういえばおばさん……というかゾンビってご飯は食べるの?」
『ええ、食べるわよ~。主に自分の腕を千切って……』
「自分を食べてるの!?」
再生するからってそりゃないよ!?
コスパは最強かもしれないけど!
「そういえばゴブリンやインプたちもゾンビ肉を食べてるんだっけ?」
『ええ、そうよ〜』
「……やっぱりおばさんみたいに腕を千切って渡してるの?」
『腐り落ちてるものを拾って食べたりもしてるわね〜
「拾い食いしてるの!?」
三秒ルールとかそう言う次元の話じゃない!
『大丈夫、ちゃんと焼いてるわよ~』
「そういう問題じゃないから!」
『生で食べる子も多いけどね~』
「もっとダメじゃん!!」
だめだ、早くみんなの食生活をどうにかしないと。
まあとりあえず今は朝ご飯。
私とアンナちゃんのサンドイッチと、みんなの水を用意して持っていく。
「モグモグ……やっぱりクリア、お前の料理は美味いな」
アンナちゃんが満足そうにサンドイッチを食べる。
「まあ慣れてるからね」
「牛肉もジューシーで美味いな」
「それは食材が新鮮だから……あれ?」
そういえばあるから自然に使っていたけど、なんで牛肉があるんだろう?
そうおばさんに聞くと……。
『町の外れにある牧場で牛を飼っているからよ~』
「牛飼ってたの!?」
予想外の答えが返ってきた。
まさか牛がいたなんて。
「おばさん、すぐにそこへ連れてって!」
『いいですよ〜』
「……どうした? そんなに牛肉が好きなのか?」
私の食いつきぶりにアンナちゃんが首をかしげる。
「否定はしないけど、大事なのはそこじゃないよ!」
牛がいるってことは、牛乳が手に入るかもしれない!
牛乳はカルシウムが多いだけじゃない。
たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミン。
人間の体に必要な五大栄養素が豊富に含まれている、超健康的な飲み物!
「絶対手に入れなきゃ! サンドイッチをよく噛んで食べてから行こう!」
「……今すぐ飛び出しそうな勢いだったのに、普通に食べてから行くんだな」
「そりゃそうだよ、早食いは健康に悪いもん」
「……ブレないやつだ」
呆れているアンナちゃんを尻目に朝食を食べ終え、さっそくみんなで牧場へ向かう。
この時、牛乳が手に入ると思っていた私の足取りはすごく軽かった。
笑顔でちょっと口笛を吹いてみたりするくらいに。
……それがフラグになったのかなぁ?
『着いたわよ~』
「ほう、ずいぶん立派な牛だな」
「数も多いわねぇ」
「……うん、それはいいよ? いいんだけど……」
本当に喜ばしいんだよ?
その牛のお腹が裂けて骨が見えてなければ。
全体的に黒ずんで、体の一部が腐り落ちていなければ。
目玉が取れて、だらんと垂れ下がってなければ。
「……おばさん。これって……」
『牛よ~』
「いや、ゾンビじゃん!」
あまりの絶望に膝から崩れ落ちる。
私がバカだった!
土地が荒廃した魔王領にまともな牛がいるわけなかった!
「……ってことは、私がこれまで食べていた牛肉って……」
『もちろんこの子たちのよ~』
「うぎゃーーーーー!?!?!?」
私はとんでもない肉を食べてましたーー!!




