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22話 まさかのガチバトル!? VSヘドロスライム!

前回のあらすじ。


アンナちゃんとスライムが健康的に強かった

 湖から突如現れた巨大な魔物、ヘドロスライム。


『…………!!!』 


 うなり声をあげた瞬間、無数の触手がまるで槍の雨のように私たちへ襲いかかった。


「みんな、私とアンナちゃんを守って! 『スライムウォール』!」


 さっき思いついた技名で指示を出すと、スライムたちが一斉に飛び出す。

 ぷるんっと体を震わせると、みるみる縦横へ広がり、大きな壁へと変形した。


 バシィッ! バシバシバシッ!!


 鋭い触手が次々と叩きつけられる。

 衝撃のたびにスライムの壁が大きく波打ち、それでも必死に私たちを守り続ける。


「みんな、大丈夫!?」


 触手の勢いは止まらない。

 スライムたちは少しずつ後ろへ押され、岩場をずるずると滑っていく。


「アンナちゃん! このままだとまずいよ!」

「任せろ!」


 アンナちゃんは地面を蹴ると、そのまま魔法で宙へ舞い上がり、攻撃を仕掛ける。


「食らえっ!」


 雷をまとった鞭を縦横無尽に振るい、襲い来る触手を次々と切り裂いていく。


「さすがアンナちゃん!」

「いや、まだだ!」


 切り裂かれた触手の断面からボコボコと泡が出たと思うと、再び触手が生えて元通りになる。


「再生能力とかあり!?」

「クリア、お前は岩陰に隠れてろ!」


 アンナちゃんは襲い来る触手をかいくぐり、ヘドロスライムに向けて突進していく。


「嚙みちぎれ!『雷の蛇(ヴォルトサーペント)!』」


 アンナちゃんが鞭を振るうと、紫電が鞭へと絡みつき、一匹の巨大な蛇へと姿を変える。

 雷の蛇は一直線に駆け抜け、大きな顎を開けながらヘドロスライムに向けて飛びかかった。


 ガブゥッ!!


 鋭い牙がヘドロスライムの体へ噛みつき、そのまま勢いよく噛みちぎる。


 バチバチバチィッ!!


『…………!?』


 その瞬間、全身に雷が駆け巡り、ヘドロスライムは唸り声をあげ、真っ二つになりながら弾け飛んだ。


「アンナちゃん凄すぎ!」


 岩陰から顔を出して歓声を上げる。

 まさかあんな魔法まで使えるなんて!

 普通に強すぎるんだけど!


「ふ、アタシにかかれば当然だ」

「やっつけたの?」

「スライムは中心にあるコアさえ破壊すれば倒せる。かなり大きな個体だったが、今の技で破壊できないとは思え――」


 ザバァァン!!!


「「え?」」

『…………!!』


 弾け飛んだはずのヘドロスライムが、湖の中からまるで何事もなかったかのように再び姿を現す。


「なんで!? コアは破壊したんじゃなかったの!?」

「コアは見えなかったが、体ごと吹き飛ばした。普通なら倒せているはずだ……。まさか、あれが本体じゃないのか?」

「本体じゃない?」


 次の瞬間、湖のあちこちから黒いヘドロを纏った触手が何十本も現れ、私たちに向けて襲い掛かってくる。


「……そういうことか!」

「え?」

「あれは本体の一部に過ぎない! 奴はおそらく湖全体を操っている! コアは湖の中だ!」

「湖の中!?」


 アンナちゃんは魔法で再び空へと飛び出し、鞭で触手を切り裂いていく。


「食らえ!」


 しかしその瞬間、ヘドロスライムの体が大きく波打つ。


 ビシャァッ!!


 黒茶色のヘドロが弾丸のようにアンナちゃんへ発射される。


「ちっ!」


 アンナちゃんは空中で体をひねり、間一髪でそれを躱す。


「くそ、触手だけじゃないのか!」


 おまけにさっき切り裂いた触手も湖へ落ちると、まるで意思を持つかのように伸び始め、再生していく。


「これじゃあ埒が明かないぞ!」

「アンナちゃん!」


 触手の数がさっきより尋常じゃないくらい増えている。

 そのせいでアンナちゃんは攻撃に移ることができない。

 どうしよう。

 このままじゃ、アンナちゃんが触手につかまって薄い本みたいな展開に……サキュバスだし本望かな?


「いやいや、変なこと考えてる場合じゃないから!」


 この状況を何とかする方法を考えないと。

 でも、私に戦う力なんてない。

 そもそもここへは水源を浄化しに来ただけだし……。


「……浄化?」


 そもそもヘドロスライムはなんでいきなり攻撃してきたんだろう?

 まるで怒ったみたいに。

 あの時、私は湖を浄化しようとしていた。

 そしてスライムは環境に依存する魔物……。


「……やってみるしかないよね。みんな、防御は任せたよ!」


 スライムたちは「任せて!」という感じで元気よく跳ねる。

 よし、大丈夫そうだね。


「それじゃあ行くよ! とーつーげーきー!!」

 

 岩場の陰から飛び出し、みんなと一気に湖へ向けて走り出す。

 ヘドロスライムはアンナちゃんに集中してて、私に気づいていない。

 おかげで妨害もなく湖のそばにたどり着けた私は、すかさずランタンを湖に掲げる。


「えっと……必殺! 『キュアブライト』!」


 適当に思いついた技名を言いながら、ランタンを眼が眩むほどまばゆく光らせる。


『…………!?』


 すると、ヘドロスライムの不定形な体が苦しんでるかのように波打ち始め、湖から伸びていたヘドロの触手が浄化され、ただの水となって形を失っていく。


「思った通り!」


 ヘドロスライムは、汚れた水の中じゃないと生きられないんだ。

 ただ、ヘドロスライムは苦しんでいるだけで、消える気配はない。

 やっぱり直接攻撃はできないんだね、私のスキルは。


「でも……ちょっとまずいかも!」


 ランタンの光は湖をどんどん浄化しているけれど、ヘドロスライムが吐き出すヘドロがすぐに湖を汚染していく。

 おまけにヘドロスライムが私へ向けて触手やヘドロを飛ばして攻撃してくる。

 今はスライムが壁になって必死に防いでくれてるけど、壁は衝撃のたびに大きく揺れ、長くは持たなそう。


「クリア! 下がれ!」


 アンナちゃんがヘドロスライムの攻撃を紫電の鞭で薙ぎ払う。


「アンナちゃん、ありがとう!」

「このまま倒せそうか!?」

「……無理だと思う!」


 汚染のスピードと浄化のスピードは拮抗している。

 このまま岸から照らしていても倒せない。


「よーし、だったら……!」


 足元にいたスライムを抱き上げる。


「これを湖の真ん中に持っていきたいの! お願いできる!?」


 スライムは腕の中で小さく跳ねる。

 OKってことだね!

 

「よし、頼んだよ!」


 スライムの体にランタンを押し当てると、ぷるんと体が波打ち、そのままランタンを飲み込むように体内へ取り込んでいく。

 そして、透明な体の中にすっぽりと埋まった。

 よし、これで壊されることはないはず。


「アンナちゃん、手伝って!」


 スライムを持って、空中にいるアンナちゃんに向けて大きく振りかぶる。


「どうすればいい!?」

「これを湖の真ん中に飛ばして! えーい!!」


 持てる力を全て使い、メジャーリーグ並みの投球で(盛りすぎ)スライムを放り投げる。


「ああ、分かった!」


 ビシィィン!!


 アンナちゃんの鞭が一直線に走る。

 鞭先は正確にスライムを捉えると、まるで砲弾のような勢いで湖の中心へ弾き飛ばす。


 ザバァァァン!!


 スライムはキュアシャインを体に入れたまま、湖の真ん中へ勢いよく飛び込んだ。


「よし、今だ!」


 ランタンは私のスキル。

 遠隔で光を操ることだってできるんだから!


「弾けろ! 『キュアフラッシュ』!」


 頭が痛くなるほど全神経を集中させ、ランタンを光らせる。

 まるで閃光弾のように湖の中から溢れ出した光はヘドロをどんどん飲み込みながら、汚れた水を透き通った蒼へ変えていく。


『…………!?!?!?』


 眩い光の中、ヘドロスライムの汚泥で出来た巨体はみるみるうちに崩れ、黒い泥となって湖へと溶けていく。


「やった!!」


 そして十数秒後、最後に残った黒い泥も完全に浄化され、そこには澄み切った地底湖だけが静かに広がっていた。


「アンナちゃん、ヘドロスライムを倒せたよ!」


 空から降りてきたアンナちゃんに抱き着く。


「離れろ!」

「げふぅ!?」


 アンナちゃんにげんこつをもらい、悶絶する。


「まあよくやったな。お前にしては上出来じゃないか」

「いたた……。まあこれでも四天王だからね!」

「やれやれ……」


 そう言って胸を張ると、アンナちゃんが呆れた目をしてくる。

 いや、ちょっとくらい誇ってもいいじゃん。


「……ヘドロスライムは死んじゃったのかな?」

「湖が完全に浄化されたんだ。生きられるわけが――」


 ザバァン!!


「「え?」」


 またこのパターン!?

 思わず身構えながら振り向くと、湖の中央に何かが浮いていた。


「あれは……なんだろう?」


 浮かんでいたのは、青く輝く拳ほどの神秘的な球体だった。


「まさか……コアか?」

「コア? え、もしかしてヘドロスライムの?」

「だったらあんなに綺麗なわけあるか! まさか、ヘドロスライムじゃなかったのか?」


 球体は淡く脈打つように光り輝くと、浄化され澄み切った湖の水を吸い上げ始める。

 そして、水は渦を巻きながら球体へ集まり、徐々に人の形を作っていく。


 やがて現れたのは、透き通る水色の長い髪をなびかせた女性だった。

 まるでガラス細工のように澄み切った体は、水そのものでできていて、静かに湖の上へ立っていた。


「だ……誰?」

「…………」


 女性は湖の上を滑るように移動し、私たちの前に来ると、静かに口を開く。


「……私はクイン。スライムクイーンのクインです」

珍しくガチバトル回でした


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