21話 洞窟大冒険!
前回のあらすじ
アンナちゃんと健康的なジョギングの約束をした
休憩してからしばらくして。
川を遡ってひたすら山道を歩いていた私たちは、洞窟の入り口を見つけた。
「この中に水源があるのかな?」
川の水は全部この洞窟から流れてきている。
途中分岐は無かったし、可能性は高い。
「恐らくそうだろうな。この先は危険かもしれない。クリア、お前はここで待っているか?」
「いやいや、ここまで来たのに待ってるなんてできないよ!」
大事なところを部下任せになんてできないし。
「わかった。決してアタシの側から離れるな。スライムたち、クリアをしっかり守るんだぞ」
スライムたちは「任せて!」と言いたげにポヨンと跳ねる。
「ありがとうみんな。よし、行こう!」
アンナちゃんを先頭にして洞窟に入っていく。
中はひんやりとしていて暗い。
おまけに汚れた川の匂いがこもっていてすごく臭い。
すぐにキュアシャインを発動し、視界と清潔な匂いを確保する。
「そのランタンは役に立つな」
「うん、本当だよ……」
このスキルがあって良かった。
川は洞窟の奥から勢いよく流れ出ていて、私たちはその横にできた湿った岩場を慎重に歩いていく。
「こうしていると、なんか冒険しているみたいだね」
まるでファンタジー小説の登場人物になったみたい。
ちょっとワクワクしていると、アンナちゃんが振り返って睨んでくる。
「クリア、気を抜くんじゃない。洞窟の中は危険だ。魔物が生息していてもおかしくない」
「魔物?」
「ああ。そう言っている間に……来たな」
アンナちゃんが構えると同時に、真っ黒な影が何十匹も飛び出してくる。
赤く光る瞳に、鋭い牙を持つ巨大な蝙蝠だ。
「なにあれ!?」
「あれはヴァンパイアバットだ! 下がれ! 噛まれたら死ぬまで血を吸われるぞ!」
そう言うと、アンナちゃんは魔法の鞭を出現させ、ヴァンパイアバットに向かって跳躍する。
「感電しろ! 『雷の鎖』!」
アンナちゃんが腕を振るうと、紫の雷を纏った鞭が一直線に走り、一匹のヴァンパイアバットを打ち抜く。
『ギギギギ!?』
すると次の瞬間、その蝙蝠の体から雷が弾けた。
バチィッ!!
放電した稲妻は、近くを飛んでいた別のヴァンパイアバットへと連鎖していき、次々と感電させていく。
バチバチバチバチッ!!
『ギャアアアッ!』
『ギィイイイッ!?』
『ギャアアッ!!』
洞窟の中を紫の雷が蜘蛛の巣のように駆け巡り、群れになっていたヴァンパイアバットたちは黒コゲになりながら落ちていく。
「さすがアンナちゃん!」
「クリア、油断するな!」
「え?」
攻撃から逃れたヴァンパイアバットたちがアンナちゃんを素通りし、私目掛けて襲いかかってくる。
もしかしてランタンの光に引き寄せられた?
「うわぁ!?」
「スライムたち! クリアを守れ!」
アンナちゃんが叫ぶと同時に、スライムたちが私の前に飛び出して、一斉に体を大きく広げる。
ぷるん、と体が波打った次の瞬間、半透明の体はみるみるうちに縦にも横にも広がり、大きな壁のような形へと変形した。
『ギィィッ!!』
ヴァンパイアバットたちが勢いよくスライムたちに突っ込む。
しかし、スライムの弾力がある壁を突き破ることはできず、そのままぷるんと跳ね返される。
『ギィィッ!?』
「すごい! 防いだ!」
「よくやったお前たち!」
すかさずアンナちゃんの雷の鞭が跳ね返ったヴァンパイアバットたちを打ち抜く。
最後の一匹が地面へ落ちると、洞窟は再び静かになった。
「ふう……びっくりした。みんな、ありがとう」
お礼を言うと、元の形に戻ったスライムたちがポヨンと跳ねる。
「全く……お前は戦えないんだから、身を隠すくらいしたらどうだ?」
「あはは……ごめんねアンナちゃん」
「しかし……お前たちなかなかやるな。壁になってクリアを守るとは」
アンナちゃんに褒められると、スライムたちが体を縦に伸ばす。
これは、胸を張ってるのかな?
「スライムって強いんだね!」
「普通のスライムはここまで強くはないはずなんだが……何故だ?」
「きっと健康的なスライムだからじゃない?」
「関係あるのかそれは? ……まあいいか。この調子で今後も頼むぞ」
スライムたちが「わかった!」って感じでポヨンと跳ねた後、再び洞窟を進み始める。
ただ、隊列がすこし変わってスライムが私の周りを囲むようになった。
いつでも私を守れるようにかな?
凄く頼もしいね。
「そう言えばアンナちゃん、ひとつ気になったんだけど」
「どうした?」
「さっきのヴァンパイアバット、魔物って呼んでたよね? 魔族とどう違うの?」
「簡単に言えば、野生か、そうでないかだ」
「野生?」
「魔物は基本的に野生の生き物だ。本能のまま獲物を狩り、縄張りを守るために戦う。基本的に言葉も通じない」
「じゃあ魔族は?」
「知性があり、言葉を話し、人間のように集団で暮らしている者たちだ」
「人間か、野生動物かの違いってこと?」
「大体そんな認識で合っている」
「じゃあ、知性があっても野生で暮らしてたら魔物なの?」
「まあ、そういうことになるな。逆に、同じゴブリンでも言葉を話し、人里で暮らしているなら魔族として扱われる」
「なるほど……」
「ただ、魔物と魔族の境目がはっきりしているわけじゃない。知性の高い魔物もいるし、詳しいことは私にも分からないがな」
「結構曖昧なんだね。じゃあスライムのみんなは?」
私を守ってくれてるスライムのみんなを見ながら言う。
「スライムは魔物だな。知性はあるが、言葉を話し、人間や魔族のような社会を作って暮らしているわけじゃないからな」
「……ちなみに、私の町にいるゴブリンやインプ、ゾンビ達は魔族って言えるのかな?」
怠惰と不健康の限りを尽くしているみんなを思い出しながら言う。
「……まあ、今のままだと魔物に退化してもおかしくはないな」
「だよねー」
うん、やっぱりみんなを早く健康にしなくちゃ。
その後もたまに魔物が出るけど、アンナちゃんが軽く倒していく。
「この洞窟ってどこまで続いているのかな?」
洞窟に入ってからしばらくたつけど、未だにゴールが見えない。
「時間的にもう夜だろう。今日はここまでにして、転移魔法で屋敷へ戻るか?」
「そうだね。遅くなるとみんなが心配するし……あれ?」
「どうした、クリア?」
「アンナちゃん、見て!」
洞窟の奥から淡い光が漏れている。
もしかして何かあるのかもしれない。
「行ってみようアンナちゃん!」
「おい、先に行くな!」
洞窟の奥へとみんなで駆け出す。
そして視界が開けると……。
「うわぁ……すごい」
長かった通路を抜けると、そこには見渡す限りの湖が広がっていた。
壁や天井には淡い青緑色の苔がびっしりと生えていて、その光が静かな水面に映り込んで、洞窟全体が幻想的な輝きに包まれている。
「ここは地底湖か? 中々美しい光景だな」
「そうだね。……湖さえ汚れていなければ……」
せっかくの幻想的な光景も、茶色くヘドロ塗れの湖が台無しにしている。
「こんな場所でも苔って生えるんだね?」
「魔力を養分にしているんだろうな。それよりも、ここが水源で間違いないだろう」
「そうだね。あ、あれを見て!」
湖の真ん中からボコボコと水が噴き出している。
きっとあそこから水が湧きだしているんだね。
「クリア、浄化できそうか?」
「とりあえずやってみるね」
ランタンを湖にかざして光を強くする。
すると、徐々に湖の水が透き通った綺麗な水へと変化していく。
「よし、このまま……」
ザバァッ!
「え?」
突然湖の真ん中から大量の汚泥が吹き上がる。
すると、まるで水そのものが意思を持ったかのように渦巻いて、茶色いヘドロが次々と集まっていく。
やがてそれは巨大な塊となって、黒茶色の汚泥を纏った異形の姿へと変わった。
「な、なにあれ!?」
「気をつけろ! あいつはヘドロスライムだ! 汚染された水場に現れる厄介な魔物だ!」
ヘドロスライムと呼ばれた魔物は、体から何本もの触手を生やす。
「え、触手なんてそんなのあり!?」
そして次の瞬間、無数の触手が一斉に私たちへ向けて伸びてきた……。
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