20話 水源を見つけよう!
前回のあらすじ
魔王領は水すら不健康だった
町の脇を流れる川は、幅も広く、水量も豊富だ。
農地を潤し、人々の飲み水にもなる、この領地で最も大切な川だ。
……茶色く濁っていて、黒いヘドロがあちこちにこびりついてなければだけど。
「よし、水源を探しに行こう!」
キュアシャインのスキルでも川そのものを浄化するなんてできない。
こういうのは元から断たないと。
水源をなんとかすれば全部綺麗になるはずだよね。
「お前の力で水源を浄化できるのか?」
「わからないけど、原因を探るのは必要じゃない? そもそも水をどうにかしなきゃ何も始まらないじゃん」
飲み水としてだけじゃない。
野菜や果物も育てられない。
清潔な生活も保てない。
綺麗な水は健康的な生活の重要な基盤だ。
「よし、じゃあ準備して早速出発しよう!」
思い立ったが吉日!
それにまだ朝の時間帯だしね。
「わかった。ゾンビ、おまえはスライムたちと一緒に留守番を任せるぞ」
『任せて頂戴~』
そうして屋敷に戻り、スキルで浄化した食料と水をリュックに入れて準備を整える。
「というわけでちょっと町の外へ行ってくるから……うわ!?」
スライムたちが一斉に私へ向かって跳んできて、あっという間にスライムの山に埋もれる。
「どうやら行かないでと言っているようだな」
『クリア様愛されてるわね~』
「いやみんな! 寂しいのはわかるけど降りてー! すぐに戻ってくるからー!」
アンナちゃんの転移魔法を使えばすぐ屋敷に戻ってこられるから、道中キャンプをする必要はないしね。
まあそう言ってもスライムたちは心配なようで、結局私の護衛として数匹ついてくることになった。
「足手まといにならないといいけどな」
「きっと大丈夫だよ。じゃあ出発ー!」
『気をつけてね~』
おばさんとスライムたちに見送られ、私たちは水源を探す冒険へと出かけた。
実際はハイキングみたいな感じだけどね。
「とにかく、川を遡っていくしかないかな?」
「だろうな。アタシが先頭になるから、クリアは後ろをついてこい。スライムたちはクリアを守れよ」
アンナちゃんがそう言うと、ついてきたスライムたちは「任せて!」と言わんばかりにポヨンと跳ねる。
可愛いし頼もしいね。
それから大体一時間、川のそばをひたすら遡って歩いていく。
「うーん……」
「どうしたクリア?」
「いや、なんでこの土地って……こんなに荒れてるんだろうなって」
水が汚いのもそうだけど、土地も荒れ果てていて、至る所で土がひび割れている。
草はほとんど生えていないし、木も生えてるものは全部枯れている。
「魔王領って、こんな土地ばっかりなの?」
「全部というわけじゃない。だが、ほとんどはこうだな」
「どうして? 魔族の人がだらしないからとか、そういうレベルじゃないよ?」
問い詰めると、アンナちゃんは軽くため息をつきながら答える。
「アタシも詳しくは知らない。だが、瘴気の影響と言われているな」
「瘴気って?」
「地脈から発生する穢れのようなものだ。触れると草木は枯れ、水は汚染され、生き物は死に絶えるとされている。アタシも直接見たことはないけどな」
「でも、魔族って瘴気に強そうなイメージがあるけど?」
「言いがかりはよせ。瘴気は魔族にとっても有害だ。長く触れれば魂まで蝕まれると言われている。だから不死系や死霊系の魔族でも直接触れたら危険なんだ」
うーん、なんか想像できないな。
こんな荒れ果てた土地でも問題なく生きていける魔族でも危険だなんて。
「瘴気ってそんなに危ないんだね」
「ああ。百害あって一利なしだ」
「ところで、魔王領っていつからこんな土地なの?」
「大体瘴気が発生した数千年前と言われているな」
「……その間に土地を改善しようとか思わなかったの?」
「……まあ、生活には支障ないからな」
うん、きっかけはどうであれ、魔王領が荒れているのは結局魔族がだらしないからだった。
それからしばらく歩いていると、道はだんだんと山道へ変わっていく。
足元にはごつごつした岩や木の根が張り出して、すごく歩きにくい。
「これ、普通に歩くだけでも大変だね」
スライムたちは大丈夫かなと思って振り返ると、ちゃんとポヨンポヨンと跳んでついてきている。
問題ないみたい。
「クリア、少し休むか?」
「ううん、これくらい平気だよ。アンナちゃんこそ大丈夫なの?」
「問題ない。魔法で少し浮いているからな」
「そうなんだ。ってえーー!?」
よく見ると足を動かさないで、空中を滑るように移動している。
「アンナちゃんずるい! スライムも自力で頑張ってるのに!」
「使えるものを使って何が悪い? ほら、疲れてないなら行くぞ」
「むー……」
そう言ってアンナちゃんは涼しげな顔で前を進んでいく。
だけど一時間後。
「はぁ……はぁ……そろそろ休憩しないか?」
何故か先にアンナちゃんがバテていた。
「浮いてるから大丈夫なんじゃなかったの?」
「浮くのだって少しは体力使うんだ……というかなんでお前は平気なんだ!?」
「ふっふっふ、私は健康のためよく登山してたからね!」
異世界に来る前、健康のために何度も富士山に登ってたことを思い出すなー。
「というかスライムたちだって元気だよ、ほら」
スライムたちがアンナちゃんを囲んで「もう疲れたのー?」って感じで跳び始める。
「ぐぐ……この健康バカたちめ……」
「そうだ、アンナちゃんも毎朝ジョギングしよっか!」
「断る」
「四天王命令!」
「そんなことで権力を振りかざすな!」
こうして毎朝アンナちゃんのジョギングが決まったところで、私たちは座って一息つくのだった。




