17話 健康的スライム誕生!
前回のあらすじ
毒沼に不健康なスライムたちがいた。
「スライム健康作戦開始! きて、『バブルウォッシュバレル!』」
ポイズンスライムたちを健康にするため、魔法の洗濯桶をでかいビニールプールのような大きさで目の前に出す。
中にはどんな汚れも落とす魔法の洗剤水がいっぱい!
さらに丈夫な皮手袋とスポンジも用意して準備万端!
「さあスライムたち、この中に入って!」
それを聞いて、スライムたちが一斉に「イヤだ!」という感じで後ずさる。
毒のスライムだし、本能的にやばいと思っているのかな?
でもそんなの関係ない!
「入らないと今度こそアンナちゃんに倒されちゃうよ? さあ早く早く!」
そう言うと、スライムの一匹が意を決したように洗濯桶の中にダイブする。
うん、やらせてる自分が言うのもなんだけど勇気があるねこの子!
スライムが洗剤水に浸かると、ジュ~って毒が溶けだす音がし始める。
うん、効果ありかな?
「よし、じゃあ洗うよ!」
「おいクリア、洗うのは無理だと思うぞ」
「やってみなければわからないじゃん!」
手袋をしっかりとはめ、スポンジでスライムをゴシゴシと……ゴシゴシと……。
「……アンナちゃん、スライムってねばねばくっつくから洗えないね」
「今更気付いたのか……このバカ……」
仕方ないから洗剤水に浸けたまま様子を見る。
スライムから毒がドンドン溶けだしていくけれど、この洗剤水は汚染されないから問題ない。
『クリア様~このスライムこのまま溶けて無くなっちゃったりしないかしら~?』
「大丈夫だよ。これは健康の洗剤水だからね!」
「だから意味が分からな……ん?」
突然洗剤水に浸かったスライムが淡く光り出す。
一体何が起こっているんだろう?
そう思っていると、緑色の体から毒々しい色がすうっと抜け落ちていき、代わりに透き通った水色へと変わっていく。
光が消えると、丸くて透き通った水色のスライムがいた。
「スライムが……変化した?」
「これって成功かな? うわ!?」
スライムが桶からポヨンと私に向かって飛び出し、反射的に両手でキャッチする。
さっきみたいにもうねばねばしていない。
手袋を外して感触を確かめると、プルプルとした手触りで、まるで豆腐のように柔らかい。
撫でてあげると、嬉しそうに体をポヨンポヨンと弾ませながら、私の手にすり寄ってくる。
「アンナちゃん! このスライムすっごくかわいい!」
完全に「僕、悪いスライムじゃないよ」!って言うタイプだこの子!
「しかし驚いたな……。環境に依存する魔物とは言ったが、こんな劇的に変化するとは」
「これが普通じゃないの?」
「普通なわけがあるか! それにこんな透き通ったスライムなんて見たことがないぞ。一体どうなってるんだ?」
「健康なスライムになった証拠だね!」
「お前はなんでも健康に結び付け過ぎだ」
まあアンナちゃんとのやり取りは置いといて。
「みんな、洗剤水の中に飛び込め―!」
そう言うと同時に腕の中のスライムがポヨンと跳ねる。
『みんな、大丈夫だよ!』とでもいったのかな?
それを見たスライムたちが一斉に洗剤水へダイブしていく。
そして数分後、沼にいたスライムたちはみんな見事に水色の健康的なスライムになった。
「みんな、気分はどう?」
そう聞くと、スライムたちは元気そうにポヨンポヨンと飛び跳ねる。
うん、すごく良いみたい!
「これでもう沼を浄化してもいいよね?」
そう聞くと、スライムたちはぴょんと左右へ飛んで、沼への道を開ける。
どうやらOKみたいだね。
キュアシャインを掲げて沼の浄化を再開。
みんなが見守る中、毒の沼は徐々に干上がっていき、そして完全に浄化することに成功した。
「やったー! ミッションコンプリート!」
『クリア様、本当に毒沼を浄化しちゃうなんてすごいわ~』
「ところで、スライムたちはどうするんだ?」
「……あ、そういえばどうしよっか?」
悩んでいると、スライムたちが私の足元にすり寄ってくる。
もしかして、一緒に来たいのかな?
「アンナちゃん、屋敷に住まわせることはできないかな? どうせ広いんだし」
「お前の家なんだ、別に問題ないだろう」
「やったー! みんなよろしくーーうわぁ!?」
スライムたちが一斉に私へ飛びかかってきて、後ろへ倒れる。
「み、みんなどいて~!」
懐いてくれたっていうのはわかるけど、さすがに苦しい~!
まあそんなこんなでスライムを引き連れて屋敷に戻った私たち。
毒沼があった場所には代わりに洗剤水を溜めておいたし、これでトイレの問題は解決。
だけど、まだまだこの屋敷には掃除しなきゃいけない場所が山ほどある。
「はぁ……先は長いなぁ。せめて人手があったらなー」
「なら後回しでもいいだろう」
「いやいや、しっかり手入れしないと!」
だらしない不健康な人間になんてなりたくないし!
とりあえずまだ掃除してない部屋のドアを開けると、当然の如く埃が積もった汚い部屋が広がる。
「よし、ここも頑張って掃除して……え?」
意気込んだその時、私に付いて来ていたスライムたちが次々と部屋の中へと入っていく。
どうしたんだろう?
そう思っていると、スライムたちが形を平たく変え、まるで雑巾のように床をスーッと滑っていく。
「え、ええ!?」
さらにポヨン、ポヨンと跳ねながら部屋中を動き回るたび、床の汚れや埃がみるみる消えていく。
壁を登ったスライムは蜘蛛の巣までぺたっと吸い取り、窓を滑ったスライムはガラスをぴかぴかに磨いていく。
気付けば、ほんの数分前まで放置され汚れきった部屋は、見違えるほど綺麗になっていた。
「これは……驚いたな」
「すごい! みんなありがとう!」
お礼を言うと、スライムたちは嬉しそうにピョンピョン跳ねる。
こんなに汚れを吸って大丈夫なのかなと思ったけれど、見事に透き通ったスライムのままだった。
「まさかこのスライム達は、汚れを吸収して浄化する力を持っているのか?」
「だったらこの子たち、『クリーンスライム』って名付けるのはどうかな?」
そう言うと、スライムのみんなは嬉しそうに飛び跳ねる。
「良いんじゃないか? こいつらも喜んでいるしな」
「よーしクリーンスライムのみんな! この調子で屋敷のお掃除を済ませちゃおう!」
こうして人手……というかスライム手? を得ることに成功した私は、クリーンスライムたちと手分けして屋敷の部屋を次々と掃除していった。
厨房にある山のように積まれていた皿も、キュキュッとスライムたちがキレイにしていき、お陰で日が暮れる前には屋敷全体がピカピカとなった。
「みんなのおかげだよ! ありがとーーうわぁ!?」
またスライムたちが私に飛びかかってくる。
「みんな、嬉しいけど埋もれちゃうから止めて―!」
「はぁ……しかしよくやったな」
その様子を見て苦笑しながらアンナちゃんが褒めてくれる。
「ふっふっふ。これで健康的な生活ができるね!」
「まあ、順調な第一歩を踏み出したってところだな」
「第一歩?」
「忘れたのか? お前は四天王として、この領地を治めるために来たんだぞ」
あ、そう言えばそうだった。
屋敷のことで頭がいっぱいだったから忘れてた。
「おいゾンビ」
『なにかしら~?』
「明日の朝、この地を治めるものとしてクリアが領民に挨拶をする。そのことを伝えろ」
『わかったわ~』
「あ、挨拶!? そんなのやらなきゃいけないの!?」
「当たり前だろう。お前はこの土地を支配する四天王なんだ。しっかり部下たちに威厳を示すんだぞ」
「ええー!?」
「ええーじゃない。明日までに何を話すかしっかり決めておけ」
いや、私人の上に立って偉ぶるような器じゃないんだけどな……。
まあでもこうなったらしょうがない。
緊張するけど明日は頑張るしかないね。
とりあえず今日は掃除もすんだし、清潔な部屋でゆっくり寝よう。
そう思い、その夜は部屋にある豪華なベッドに体を沈めた。
ふかふかだしよく眠れそう……と思ったんだけど。
「お、重い……」
クリーンスライムたちが私を覆うように乗ってきて、全然眠れなかった。
懐いてくれたのは嬉しいけど、せめて寝るときは離れてー……!!




