14話 不健康な魔族の館! その1
前回のあらすじ
心が健康そうなおばさんゾンビに出会った
おばさんゾンビに屋敷へ案内してもらっている私たち。
途中で私が人間だという事を伝えると。
『まあ、クリア様って人間なの~? それなのに四天王になるなんてすごいわね~。おばさんももっと若ければね~』
という感じの反応を返された。
うーん、ツッコミどころが多すぎるね!
「魔王領の人たちってみんなこんな感じなのアンナちゃん?」
「そんなわけないだろう。まあここは戦火から離れた土地だからな……みんな平和ボケしてるんだろう」
「なるほど、だから頭の中がお花畑なんだね!」
「おい、相手がゾンビとはいえ、それは失礼だぞ」
『あら~、この前頭に植えたお花の種が芽吹いたのかしら~?』
「何やってんの!?」「何やってるんだ!?」
とまあ、そんなやり取りをしながら町を歩いていくと、大きな屋敷の前に到着する。
『着いたわよ~』
「ここがそうなの?」
灰色のレンガで作られた無骨な二階建ての屋敷……というより砦かなこれ?
街の雰囲気とも相まって結構不気味だね。
「クリア、どうかしたのか?」
「領主が住む場所なのに華がないんじゃないかなーって」
「魔族は見た目なんて気にしないからな。さあ、入るぞ」
アンナちゃんを先頭に屋敷の中に入る。
「おじゃましまー……げ!?」
玄関に一歩足を踏み入れた瞬間、鼻をつくカビ臭さに思わず後ずさる。
広い玄関ホールには飾りらしい飾りはほとんどない。
石造りの床は砂や土で汚れ、壁にはひびが入り、天井には蜘蛛の巣が張っている。
窓ガラスは何枚も割れたままで、奥へ続く廊下には埃がたくさん積もっている。
……うん、なにこれ?
「アンナちゃんなにこれ!? 魔王城よりひどいんだけど!?」
「魔王城を比較に出すな! 単純に手入れされてないんだろう」
『そうなのよ~。以前の四天王様がいなくなってからずっと放置されてたからね~』
「でも、ちょっとひどすぎない? これじゃあまるで廃墟だよ」
『そうかしら~? 四天王様が住んでいた時からそこまで変わってないんだけれどね~』
「そのほうが大問題だよ!」
以前住んでた四天王どんな管理してたの!?
『では、部屋へご案内するわね~』
「ゾンビ、お前はこの屋敷に詳しいのか?」
『ええ、以前料理長としてこの屋敷で働いてたからね~』
「え、料理長!?」
普通に意外過ぎるんだけど。
衛生面とか衛生面とか大丈夫なの?
「そうか、じゃあ今日から職場復帰だ。そろそろ昼時だし、案内が終わったら何か作ってくれ」
『あら嬉しい。じゃあ久々に腕を振るっちゃおうかしら~』
「いやいやアンナちゃん!? ゾンビに料理させて大丈夫なの!?」
「問題ないだろう。ゾンビが料理するのは、魔王領では一般的だしな」
「そうなの!?」
本当に大丈夫なのかな?
その後おばさんゾンビに屋敷を案内されるけど、歩くたびに埃が舞ってすごい苦しい。
「アンナちゃん、マスク頂戴」
「そんなものはない」
「やっぱり……?」
うう、今すぐスキルを使ってどうにかしたいんだけどな……。
でも魔王城の時、アンナちゃんに余計なことするなって怒られたし……。
四天王になったばかりなのに、また勝手な事したら今度こそ魔王様に殺されるかもしれないし……。
結局我慢して手で口を押えながら進み、二階の大きな部屋に案内される。
ここが領主の私室みたいだね。
中に入るとここだけ豪華なベッドや高そうな家具が置いてあって、さすが偉い人の部屋と一瞬思う。
けれど、どれも埃や汚れがひどくて全部台無し。
予想してたけどこれはひどい。
『じゃあちょっと待っててね~。何か作ってくるわ~』
そう言っておばさんゾンビが部屋から出ていく。
「……ねぇアンナちゃん、私、本当にここに住まなきゃいけないの?」
「何か問題があるのか?」
「ありすぎだよ! 全体的に汚すぎるもん! なんでアンナちゃんは何も思わないの!?」
「見慣れた光景だからな」
「うわああああ! そういえばアンナちゃんも汚部屋製造機だったーー!!」
「悪かったな!」
まずい、このままじゃ私の健康がーー!!
「魔王様もだけど、なんで魔族の人たちはこんなだらしないの!?」
「だらしないって言うな! 別に部屋を綺麗にしなくても問題ないからな。そもそも魔族の中には不潔な環境を好む者だっている」
「アンナちゃんは違うでしょう!? こんな不潔なところに住んで健康が損なわれたらどうするの!?」
「前も言っただろう? 魔族は滅多なことじゃ病気にならないからな。この程度で健康に支障はない」
「私は大丈夫じゃないから! もうこんなところにいられない! 私は魔王領から逃げるよ!」
「ダメに決まっているだろう! お前は一応魔王軍最高幹部なんだから!」
「お家に返して―!」
「ここがお前の家だ! 現実逃避するな!」
そんな感じでしばらく言い合っていると、おばさんゾンビが料理を乗せたワゴンを引いて部屋に戻ってくる。
『クリア様、アンナ様~。お昼ご飯が出来ましたよ~』
「あ、ありがとうございま……げー!?」
載せられた料理を見て思わず気絶しそうになる。
腐臭がする完全に腐った肉のステーキに、淀んだ茶色の野菜スープ。
おまけに青や緑のカビに覆われたパン。
「ほう、なかなか美味しそうじゃないか」
「こ、これが……?」
アンナちゃんの言葉に絶望して膝から崩れ落ちる。
もうダメだ。
何もかもが人間と違う。
ある意味たくましいけどさ、こんなの人が食べたら健康どころじゃないよ……。
「アンナちゃん……もう私我慢できないよ」
「クリア?」
「私のスキル、使っていいよね? ていうかダメって言われても使うから! アンナちゃんが何を言おうと絶対に!」
「だったら使えばいいじゃないか」
「え?」
アンナちゃんの返事に思わず呆然とする。
「というかなんで使わないんだとずっと疑問に思っていたんだが?」
「え、使ってよかったの? 魔王城じゃ余計なことするなって……」
「さっきも言ったがここはもうお前の家なんだぞ。それに今のお前は魔王軍最高幹部である四天王だ。好きにやったところでだれも文句は言えない」
「それならそうと早く言ってよーーー!!!」
まあでも、そういう事なら話は別!
「『健康第一』発動! きて、レインボースイーパー!」
この屋敷のダメなところ、全部改善してやるんだから!




