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幕間 国王と勇者たち

長く空きましたが今回より更新再開します。


前回のあらすじ


この世界は健康的にロリコンがいなかった。

 久里が紆余曲折あり、魔王軍四天王にされたその頃……。

 


 ワシの名はゴルド。

 人間の国の国王だ。

 先日、魔王軍と戦うために異世界から勇者を召喚した。

 その結果、高嶺 凛華殿という美しい勇者と、その仲間たちを迎えることができた。

 だが……。


「あの久里という女はまだ見つからんのか!?」


 久里という、凛華殿が敵と見なす女。

 牢屋に入れ、処刑を命令したが奴は脱獄。

 その後行方知れずとなった。


「申し訳ありません。手がかり一つつかめていないようです」

「一体どこへ消えたというのだ!?」


 玉座に座りながら、報告する宰相に叫ぶ。

 奴は城下町へ逃げたところから一切の目撃情報がない。

 すでに奴を賞金首とし、王都外からも情報を募っているが、このざまだ。

 本当にどうなっておるというのだ!?


「く……このままでは凛華殿に顔向けできん……」


 そもそも処刑はワシの独断だ。

 凛華殿には伝えていない。


「おのれ……凛華殿の敵を排除することで好感度を上げ、いずれラブラブになるワシの計画がー!」

「好感度はともかく、ラブラブは無理だと思われますが」

「なにを言う! 凛華殿がオジサマ好きだったら可能性はあるだろう!」


 凛華殿の美しさはまさに女神にも劣らん。

 絶対我が妃として迎えたい……!


「グフフフフ……」

「気持ち悪いですよゴルド王」

「誰が気持ち悪いだ! それよりも、脱獄を許した看守は命令通り処分したんだろうな!?」

「もちろんです。有無を言わさず首を切ってやりました」


 宰相がジェスチャーで首を斬る動作をする。


「国王であるワシに恥をかかせたのだ。当然の報いだな」

「はい、今頃奴は首にされたショックで、放心しながら故郷で畑仕事でもしてるでしょう。フッフッフ」

「そうかそうか、フッフッフ……ってバカ者ー!! 違うわ! 処刑しろという意味だ!!」

「そうだったのですか? てっきり……」

「今すぐそいつを捕まえ処刑してこい!」

「どこへ行ったか分かりませんので無理です」

「バカ者がー!!」


 どいつもこいつも使えん部下ばかりだ!


「ところで、勇者様と仲間の方々が現在鍛錬をなされておりますが、様子を見に行かれますか?」

「……そうだな、行くとしよう」


 ここで声を荒げていてもしょうがあるまい。

 宰相を連れ、城の中庭にある騎士団の訓練場へ向かう。

 そこでは騎士たちが汗を流して鍛錬に励み、その一角では召喚された勇者一行が訓練に励んでいた。

 その訓練を監督している騎士団長へと話しかける。


「騎士団長、勇者殿と仲間たちの様子はどうだ?」

「おおゴルド王! 勇者と仲間の方々は順調に実力をつけておりますぞ! ご覧になられますか?」

「もちろんだ、そのために来たのだからな」


 騎士団長に案内され訓練の様子をうかがう。

 どうやら、現在騎士たちと実戦形式の訓練をしておるようだ。


「ほう、これはこれは……!」


 仲間の者たちは、すべて騎士一人なら圧倒する実力を身につけていた。

 今まで戦いとは無縁の日々を送っていたらしいが、なんと素晴らしい成長速度だ。

 

「ゴルド王、特にあの二人の実力は素晴らしいですぞ!」

「ほう?」


 騎士団長が示すところを見る。

 そこには、青い髪をした高身長の男が立っていた。

 確か「大賢者」のスキルを持つ、青井 颯斗と言ったな。

 奴は漆黒のローブをはためかせ、青い宝玉が嵌められた白木の杖を騎士たちに向け構える。

 そして。


「我が魔力に応え敵を撃て。『エレメントボール』」


 奴が呪文を唱えると、杖の先から火、水、風、土――四つの魔法球が形作られ、それぞれが相対する騎士たちに向かって降り注ぐ。

 その瞬間、四つの魔法球が同時に炸裂し、騎士は何もできず悲鳴を上げながら吹き飛んだ。


「おお、なんと素晴らしい!」


 四つの属性を同時に操るという、王宮魔術師でも困難な魔法をいとも簡単に使いこなすとは。

 

「しかし、訓練にしては少しやりすぎではないか?」


 奴の魔法により吹き飛ばされた騎士たちは全身に重傷を負っている。

 これでは治癒術師でもそう簡単に治せまい。


「ご安心を。あちらをご覧ください」


 白を基調とした法衣を纏う赤髪の少女が、怪我を負った騎士たちに近づく。

 あの女は『大聖女』のスキルを持つ朱音 陽葵と言ったな。

 彼女は先端に透明の水晶を宿した純白のロッドを天高く構える。

 そして。


「みんなを癒せー! 『エリア・ヒール』!」


 彼女を中心として光の魔法陣が広がり、重傷だった騎士の傷がすべて塞がっていく。


「おお! なんという回復魔法だ!」


 あれだけの傷を一瞬で……しかも広範囲を同時に癒すとは。

 

「回復だけではありません。強力な結界で味方を守り、さらに味方を強化する補助魔法も使えます」

「本当か!?」


 まさしく最強の支援職ではないか!

 なんと素晴らしい……!


「ところで、凛華殿は……?」

「勇者様でしたら、あちらにおられます」


 騎士団長が指す方向に紅の鎧を纏う、美しい黄金の髪を靡かせる美女が静かに佇んでいた。

 間違いない、あれは凛華殿だ。

 しかし、相対しているのは騎士ではなく、全身を鋼鉄の鎧で包んだ訓練用の案山子だ。


「騎士団長、あれは何をしておるのだ?」

「まあ見ててください」


 凛華殿が静かに目を閉じる。

 そして次の瞬間、その瞳が鋭く見開かれると、右手に聖なるオーラを纏った聖剣を出現させる。


「魔を討て――『クロス・ジャッジメント』」


 そして一気に踏み込み、十字の斬撃を繰り出す。

 その瞬間、案山子は十字に裂け、光の柱に包まれて跡形もなく消滅した。


「な、なんと神々しい……!」


 凄まじい力と美しきその姿……もはや勇者ではなく、女神と呼ぶのが相応しいかもしれん。

 いずれ私のものになると思うと……。


「グフフフフ……」

「ゴルド王、またスケベなおっさん顔になっておりますよ」

「誰がスケベなおっさんだ! ……それよりも宰相、凛華殿を見てどう思った?」

「そうですね。とっとと彼女に玉座を明け渡してしまったほうが良いと思われます」

「そうだな、お前の言う通り……ってなんだと!?」


 ワシはまだまだ引退せんぞ!

 全くこいつは……!

 

「まあまあ、それよりもお声をかけに行ってはいかがです?」

「ふむ……まあそうだな」


 ここは宰相の言う通りか。

 訓練を終え一息ついている凛華殿に歩み寄る。


「凛華殿、訓練は順調なようだな」

「あらゴルド王、見ていらしたのね。私の実力はいかがだったかしら?」

「実に素晴らしかった。まさに勇者だ」


 ワシの称賛に、凛華殿は輝くような笑みを浮かべる。


「お褒めいただき光栄ですわ。そういえば久里さんは見つかりましたの?」

「そ……それは……」


 ワシが言い淀んだのを見て、凛華殿の顔から笑みが消え、鋭い目つきへと変わる。


「一刻も早く連れ戻してくれるかしら? もちろん生きたままで」

「う……うむ、分かった」

「頼みますわよ。ではこれにて」


 凛華殿はそう言うと、ワシの前から立ち去って行った。


「り、凛華殿……」

「全く相手にされておりませんね」

「声に出して言うな!」


 少し落ち込みながら、ワシは訓練場を去った。




 凛華side


「ふう……」

「疲れたか凛華?」


 鍛錬を終え、訓練場の端で一息ついていると、颯斗さんが声をかけてきた。


「お気遣いありがとう。そういう颯斗さんは?」

「問題ない。集中したせいか目が少し痛むがな……」


 颯斗さんが目元に手を当てながら言う。

 魔法は集中力が必要ですし、目に疲労が来るのかもしれませんわね。


「凛華っちー! 颯斗っちー!」


 そこへ陽葵さんも手を振りながらやってくる。


「陽葵……お前はどこでも元気だな」

「だって楽しいじゃん~。私たち今現実で魔法を使ってるんだよ~?」

「……まあ、気持ちはわからんでもないがな」

「でしょう~。ところで凛華っち~。あの王様には気を付けたほうがいいよ~。さっきも凛華っちのこといやらしい目で見てたし~」

「ええ、気付いておりますわ。しかし、無視して構わないでしょう」


 あの程度の小物に私をどうこうできるとは思っておりませんし。


「それよりも、どうやらまだ久里さんの行方はつかめないようですわ」

「あいつ……本当にどこへ行ったんだ?」

「ていうかなんで逃げたんだろうね~? 牢屋が不潔で嫌だったとか~?『こんなところにいられるかー! 私は健康のため逃げるよ!』とかなんとか言ってさ~?」

「その言動はともかく、可能性はありそうだな」

「……彼女の行動力を甘く見ていたようですわね」


 牢屋に入れるべきだと言わないほうがよかったかしら?

 ……いえ、過ぎたことを考えても意味はありませんわね。


「しかし、目障りな久里さんがいなくなったことに変わりありませんわ」

「そうだな。奴のことは後回しにして、今は魔王軍との戦いに集中するべきだろう」

「賛成~。久里っちのことだし、この世界でもしぶとく生きてそうだしね~」

「ええ、ではみんなのところへ戻りましょうか」


 この時、私たちはまだ知らなかった。

 この先始まる魔王軍との戦いが、私たちと久里さんとの因縁に決着をつけることになるなんて……。

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