第56話 ディーゼル電車に揺られて
少し寝た。
起きると、バスは高速道路の出口をおりてすぐの道を走っていた。
山と、田んぼの間の道。
後、10分くらいで駅に着くな…。
そこから電車に乗って、駅までおばさんが迎えに来てくれるはず。
スマホを取り出して見る。
おばさんと、瞳子さんからだ。
「えっ」
思わず声が出た。
まずは、おばさんのLINEを確認。
"気を付けて帰ってきてね。阿見山駅まで迎えに行くの、11時で良かったかな?"
"うん、お願いします。"
と返信。
次に瞳子さんのLINEを確認する。
"そうなの!?お帰りなさい。もし時間があったら、またどこかでお茶しながらでも、話聞かせてね"
ペンギンが目をキュッとつぶっている、可愛いスタンプ。
"はい。お盆は、忙しくないんですか?"
会いたい。
スマホを仕舞おうとしたら、すぐ既読がついたから、画面を見ていた。
"教室は休みだし、今年は兄達誰も帰ってこないから暇。笑"
そうなんだ…。じゃあ
"今日から、俺が帰るまでにどこかで会えませんか?"
すぐ既読になる。
嬉しい。
しばらく待ってたけど、中々返事が来なくて思わず溜息が出た。
伝えたい。
瞳子さんに、お礼を。
あの時、瞳子さんが居てくれなかったら、俺は…。
駅につき、階段を上がり切符を買った。
改札を出て階段を下り、阿見山駅行きの電車を待つ。
都会に居ると、田舎って夏涼しいなぁと思う。
高校生の時は、めちゃくちゃ暑く感じたけど。
セミの鳴き声も、都会ほど暑苦しく感じない。
…夏の田舎の空気って、やっぱ良いよな。
草が生えっぱなしのフェンスの外を振り返って見る。
草ボーボーの駅周り、青い空に、入道雲。
電車に乗ると、一気に涼しい風が汗を乾かしてくれた。
窓際に座り、外の景色をしばらく眺めた。
一両編成のディーゼル電車は、走行音がうるさい。
でも、それが心地良い。
スマホを取り出すと、瞳子さんから返信があった。
"3日後は、どうかな?"
"わかりました。場所は、どこにしますか?"
"カラコルムっていう喫茶店、知ってるかな?"
…聞いた事ない。
ググってみた。
"須賀町にある喫茶店ですね。初めて知りました"
レトロな雰囲気漂う喫茶店だ。
本屋さんが近くにあり、そこへは母によく車に乗せて連れて行ってもらった。
地図を詳しく見ると、何度もそのカラコルムという喫茶店の前を通った事はあるみたいだった。
"じゃあ、13時半に忍君の家まで迎えに行くね"
白柴犬の「またね」スタンプが送られてきた。
もう少し、やり取りしたかったけど…
余りしつこくしないでおこう。
俺も「ではまた」のクジラスタンプを送っておいた。
しばらくして、電車は阿見山駅に到着した。




