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二話『横谷家・長女かれんの暴想』

 この二話はストーリーとほとんど関係なくコメディ要素が含まれたお話です。

 ですので、この二話は別に読まなくても問題はありません。

 もし読まれる方は15歳未満禁止……かも。


 私の名前は『横谷かれん』十一歳。


 ちょっとおませな子供なら、アダルトな話に興味が湧きそうな年頃。そして私は汚れを知らない青い果実の美少女小学五年生です。



 …………うぅ。


 誰かに言えって言われたような言われてないようなこのキャッチフレーズ。

 やっぱり意味わかんない紹介だよぉ。

 と、とにかく私は萌え担当として今回の特別な出番を頂きました……って出番って何? 萌えって何? 私子供だから分かんないよ。

 今度お父さんかお母さんに聞いたらいいのかな?


 普段はこの茶色い髪をポニーテールどころか縫いもせずにそのまま腰までおろしていますが、何故か今はツインテールです。

 ツインテールはマニアには破壊力が二倍だそうです。

 私には何のことだか分かりませんが。



 今日は私の兄『横谷三郎』が学校から帰ってくる前に、禁断(?)の部屋と呼ばれているお兄ちゃんの部屋を私が潜入するという企画だそうです。ちなみに私の学校はなんとも都合よくお昼までの授業でした。

 ぶっちゃけお兄ちゃんの部屋を見ても誰も得なんかしませんし、バレたらお兄ちゃんに怒られるのは私だから、むしろ逆なんじゃ。


 いや……でも、そうとはわかっていても私個人は少し興味があるかも。

 三年くらい前からお兄ちゃんの部屋に足を踏み入れたことがないし。

 こういう場合は思春期だからエッチな本が隠されているとよく聞きます(誰からの情報かは秘密です)


 ではおじゃまし……。


 ――ガチャガチャ。


「――ッ!」

 さっそく行き詰まり、鍵が掛かってる。

 前まで鍵なんてつけてなかったのに、やっぱり何か見せたくない物とかあるんだ。


 お兄ちゃんのバカ。私には隠し事しないって約束したのに…………私が四歳くらいの時だけど。




 よし! ここは例のピッキングで!


 こう……ハリガネで……。


 ――カチャ。


 やった。開いた開いた(ピッキング技術を誰に教わったのかはヒ・ミ・ツ・です)


 そして私はお兄ちゃんの部屋のドアノブに手をかけて思案を巡らす。


 鬼が出るか蛇が出るか。


 いざ!


 ――ガチャ!





「いやぁぁぁぁぁぁ!!」


 ゴ、ゴキさんだ~!

 私にとって悪魔の化身……黒くてテカテカお手軽サイズの地を這うデビル!


 お兄ちゃんの禁断の部屋に入るなり、地を這うソレに遭遇した私の意識が浮上する。

 この生物とだけは出会ってしまったら最後、私の理性はスゴく危ない方向に……。




『撃退中――ちょっと待ってね』




 ふぅ……撃退完了。

 すがすがしい気分。愛を……宇宙を感じる。生きてるって実感が――って、あぶないあぶない。

 危うく私の奮闘記を描くところだった。

 気を張ってお兄ちゃんの部屋を見渡す。


 ん~思っていた以上に普通かな?

 シンプルなデザインの机とベッド、値が高そうなギター。

 最近メジャーになったアーティスト『望月カオル』のポスター。こ、これは確かシンセサイザーだったかな? なんかゴチャゴチャしてて…………ん?


 床にゴミが落ちてる。

「紙くず?」

 私は恐る恐るクシャクシャに丸められた紙くずを拾い上げて開ける。

 そこに書かれていた文字は……。



 『三度のメシよりセックス魂』




 ゴメンお兄ちゃん。私子供だから理解に苦しむ。


 いったい何が、お兄ちゃんに何があったというの……スゴい量の文字。

 A4サイズの紙の隅から隅までに何回練習してんの? お兄ちゃんアナタは何を求め、何がしたいの?

 コリャまともじゃない。

 今日からお兄ちゃんの見方変わっちゃうなぁ。


 私は何気なくその紙のシワを伸ばして机の上に置いた。

 他には何かないかな?

 もっと面白そうな物。

 クローゼットの中、机の引き出しの中、棚の上、ベッドの下……ベッド?


 ――キラッ!


 私は目を細めてニヤリと笑う。

 口元が緩むのも仕方がない。見つかるとマズイと言わんばかりの怪しい箱を見つけたからだ。

 結構大きめのその箱はベッドの下から顔を出していた。

 私は座り込んでその箱を取り出し少しばかり躊躇ったものの、お兄ちゃんの‘秘密’を知ることができるパンドラの箱を勢いよく開けた。


「んにゃあ!」


 誰もいないお兄ちゃんの部屋で一人虚しくもテンションを上げて中身を確認。

「……お?」

 てっきりエッチな本が出てくると思っていたのだが。

「ロックフェスのDVDだ」

 それは音楽ライブのDVDだった……他にも有名なロックバンドのDVD。

 今更ながら私のお兄ちゃんは高校の友達、私も何度か家で顔を合わせている豊緑里さん達と学校でバンドをしている。

 緑里さんは美人だし優しいし声もキレイだし、勉強なんかも何度か教えてもらったし……私の理想の女性。

 だからだろうか。あのお兄ちゃんには不釣り合いにも見えてしまう。

「やっぱりこういうのも見て聴いて参考にするのかな~?」

 一つのDVDを開けてみせ、私は少しつまらなそうに呟いた。


 二つ目のDVDを開ける。



 ――――!?



『危険な放課後・乱れる女教師』




 お兄ちゃん意思弱~!!


「はわわわわ~!」


 まさか二枚目からエッチなDVDが入っているとは思いもしなくて油断していた私は、その場にDVDのケースを落としてしまう。

 すぐに残りのDVDもチェックにかかる。

 コレも――コレも、コレもコレもコレも!?

 もともと中にあった音楽ライブのDVDどこ?

 お兄ちゃん何!?

 音楽1に対してエッチなことが9だなんて。


 教師モノ、別の国の人、看護婦さんに女子校生モノ。


 ――――あ。



 イモウトモノ?



 私狙われてる~!!

 うそ、え!? えぇ~!!

 標的なの私? ロックオンされてる? お持ち帰りされちゃう(自分の家だけど)

 いやいや待つのよ私。落ち着いて。

 妹モノだからって私を意識されているとは限らないじゃない。

 さすがにお兄ちゃんがそん……な?


 『女優名・かれん』


 ドーーーーーーン!!


「――なななな、なんですと!」

 先まで赤く色づく私の耳。

 名前選んでる!?

 ちょ、私いま女の顔になってた。

 なんかよく分からないけど汚された気分……私汚されちゃった?

 こーいうのなんだっけ? 近親なんとか?

 ウソでしょお兄ちゃん!?

 ――アレ? そーいえば最近、夕食時に感じるあの視線。まさかお兄ちゃん、オカズ食べながら私をオカズに……!?

 前に私が学校から帰って来た時に台所で。

 『ワリェかれん。そこのお菓子とってくれ』


 ‘犯しとってくれ’


 私のゲームを貸した時も友達の北風くんに。

『お~貸しちまった』


 ‘犯しちまった’


「……あ……あぁ……はぅ……ん」

 な、なんかスゴいこと考えてる私。

 どうしたら、どうしたらいいのコレ。


 ……か、感じちゃってるってことなのかな?

 私子供なのに、いつの間にこんなエッチに? この数分で急激に大人になっちゃったよ。

 兄と妹だよね私達……男と女、アダムとイヴ、攻めと受け!?

 あれ?

 あ~もぅ! 頭の中の整頓ができなくなってきた。

 無意識に私が受けになってる……いや、でも。



 そーだ。お兄ちゃんには緑里さんがいるじゃない!

「私なんて眼中に……私なんて……私……」



 ……あれ? 最近お兄ちゃんよく家にいるよね?


 文化祭が近くて学校でバンドの練習して、それ以外ではずぅ~と部屋に閉じ籠って曲作ってる。

 なんか新曲が間に合わないとか言ってムシャクシャしてて……。


 ムシャクシャしてる、ストレス発散をしなければならない……ゲームじゃなくて、部屋からは出ないから緑里さんでもなくて、もちろん気晴らしに音楽からは少し離れる。


 ……。

 …………。

 ………………!!



 ‘私で発散’



「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ――――カチャ。


「かれん。なにしてんだ?」


 足音に気付かず、時間の経過にも気付かず、窓からは夕日の光が差している。

 お兄ちゃんの帰宅にまったく気付きませんでした。



「お、お帰りなさいマイブラザー」


 今日、横谷かれんは大人の階段を……。


「やることあっから……夕飯になったらノックしろよ。ほら出た出た」


 ――パタン。

 ――ガチャ。


 階段上らずにすんだ。

 あれ? 部屋に私が無断で居たのにツッコミをいれない?

 なんて心の広い尊敬すべき兄なの……私感動しちゃった。

 これからはお兄ちゃんの見方を……。


――カチャ。


「あ~かれん。オレのDVD観たかったら遠慮せずに言ってくれれば貸してやるからな~」


 ――パタン。

 ――ガチャ。



「ち、ちがーーーーーーーーう!!」

 危うくブレーキを忘れるところでした(汗)

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