第百九十五話
討伐したガーゴイルの魔核を取った後、また石化の呪いをかけられたが(今度の対象は俺)、特に問題なく呪いを返して、そのまま全身を石化させた。
ここもほとんど蹂躙のような形で探索を進めていくことになり、次の階層、第四十二階層の攻略に臨むことになる。
第四十二階層のモンスターはヴァンパイアである。
見た目は血色の悪い人間であり、一般的なイメージ通りの貴族は着るような服を着ている。
魔法と剣術に精通しており、強力な攻撃魔法と達人レベルの剣術を操る、魔法剣士だ。
普通に、これまで戦ったモンスターの中でも最上位の強さを保持しており、レベルは500が適正となるほどだ。
佐々木ダンジョンは最終階層を除いて、今後は適正レベルが500となる。
Aランク探索者の最低レベルは、時期にもよるが、レベル650~700程度なので、Bランク探索者の中でもかなり上位に入っていなければならない。
第四十二階層はこれまで同様、遺跡のような内装をしているが、これまで以上に静寂に包まれる空間であった。
「どうも」
探索を進めていくと、突然、背後から声がした。
若い男性の声であり、視線を後ろに向けると、そこにはドラマや映画で見るような端麗な容姿をした貴族風の男が立っている。
「会話ができるのか」
今回は、チームで連携してヴァンパイアを討伐する予定だ。
銀の装備がよく効くのは変わらないそうだが、生憎、今回の手持ちにはそのような武器はなく、いつもの装備で対処しなければならない。
ヴァルが盾役、東雲が遊撃、俺が遠距離攻撃、ソフィが攪乱や陽動役だ。
「ええ、まあ」
ヴァンパイアは冗長であり、常に余裕を持っている。
これは性格というよりも、モンスターの特性のようなモノであり、どんなヴァンパイアも一律で人間を見下し、油断していた。
悠長に会話に応じるのが、正に油断の証である。
その代わり、非常に強力な攻撃手段、再生能力を持っているわけであるが、Bランク探索者という経験が豊富にある探索者相手に、その態度を見せるのは、どんなに強いスキルを持っていても、したくない行為だ。
「あっそうそう」
油断しているヴァンパイアを尻目に、全員が配置についた時、思い出したかのように、ヴァンパイアが口を開く。
「伊藤春彦さん、でしたかな」
その言葉が出た瞬間、東雲が弾かれたように距離を詰める。
全く視認できない速さで振るわれた刀は、いつの間にか抜かれたヴァンパイアの直剣によって防がれていた。
「結構強い」
ヴァンパイアの余裕ある声が響くと、直径三メートルほどの青い火球が宙に生成される。
それも同時に二十個も、だ。
「伊藤さん、撤退です」
東雲が一回の斬撃で、全ての火球を霧散させる。
どう見ても、普段の東雲の様子ではなかった。
「それは困るんですよね……ぐぺっ」
ヴァンパイアの肉体が頭のてっぺんから股まで、綺麗に両断される。
その隙に、東雲はソフィとヴァルを抱え、俺に向かってダイブしてきた。
「【転移】」
東雲が魔法を発動すると同時に、俺たちは佐々木ダンジョンから吐き出される。
何事かと東雲を見るが、彼女は焦燥に駆られた表情をしており、何より、目は今まで見せたことのない、モンスターのような目をしていた。
読者の皆様、いつもありがとうございます。
ようやく、主人公の”敵”が登場いたしました。
主人公のことを支えてくれるような存在もいれば、彼に危害を加えようとする存在も当然います。
時に、敵であった人物が仲間に加わったり、仲間であった存在が敵になったりという展開もあると思います。
ただ、今回出てきた存在は、今後どういう展開になろうとも、敵です。
これからも、春彦たちの前に立ちはだかることでしょう。
今話で第一部が終了となり、次話からは第二部となります。
今後とも、本作品をお楽しみいただければ幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。




