第百九十四話
佐々木ダンジョンの第四十一階層、そこを徘徊するのは、ガーゴイルだ。
怪物の石像であり、大きさこそ五メートルほどではあるが、遠距離の攻撃手段が強力なモンスターである。
このモンスターは石化の呪いを付与してくる存在であり、その攻撃に射程はない。
だが、呪いに関しては遅効性のもののため、ガーゴイルを倒すことで解呪することができる。
また、呪いに関してはスキルによって解呪することも可能だ。
(石化は遅効性とは言え、かなり強力だからな)
ガーゴイルは単体で徘徊しており、その移動速度はかなり遅い。
だが、補足する範囲がこれまでのモンスターの比にならないほど広く、ほぼ百パーセントの確率で、石化の呪いを受けることになる。
なので、この階層の立ち回りは、呪いを仕掛けてきたガーゴイルをこちらが補足し、討伐するという形になる筈であった。
(でも、カウンターを仕掛ければいいだけだよな)
俺の魔術の中には、対呪い用のカウンターの術式がある。
【呪い返し】というスキルの魔術バージョンなわけだが、これを使えば、呪いを放ってきたガーゴイルを補足できるし、そのまま無力化も可能だ。
ガーゴイルは既に石像であるが、石化の呪いは、対象を最終的に全て石にする。
解剖の結果、ガーゴイルは肉体の大部分が石で構成されているが、心臓部分は通常のモンスターと変わらず存在しており、そこが何らかのダメージを受けて損傷すると、致命傷となることが判明している。
このモンスターに関しては、開示されている情報がかなり多く、情報が少なかった時代には多くの探索者が犠牲となった。
パッと見、ガーゴイルはダンジョン内に置かれている石像のような見た目をしている。
そして、ガーゴイル自体が認識を歪める魔法を使っており、視認してもその存在をモンスターと認識できないようになっている。
そのため、ガーゴイルは一方的に呪いを仕掛けることが可能となり、気づけばチームメンバー全員が石化し、全滅するといったケースが多かった。
流石に探索者協会も、大きな損害を与えるモンスターについて、情報を開示している。
各ダンジョン内に不釣り合いなほどに強力なモンスター、共通して強力な種類のモンスターは情報の入手が容易となっていた。
「普通に戦えば、かなり危険なモンスターなんですけどね」
東雲の言葉には、少しの呆れが混じっていた。
【呪い返し】も決して万能ではなく、スキル保持者のレベルなどに強く影響を受ける。
ガーゴイルが強大な存在であるほどに、【呪い返し】は効果を発揮しづらくなり、有用性は薄れる。
現在の俺は高レベルであること、また魔術的には【呪い返し】は術者の技量にもかなり左右されるため、高度な呪い返しのやり方を把握している俺にとって、ガーゴイルはカモであった。
(理不尽だな)
早速、第四十一階層に入ると、石化の呪いがチームメンバーに掛けられる。
呪いを受けたのは、恐らく、レベル的に最弱の存在である、ソフィであった。
だが、呪いが発動する瞬間、俺の【呪い返し】が発動し、石化の呪いのカウンターが、ガーゴイルの下に返っていく。
(うわぁ)
【呪い返し】のいやらしいところは、しっかりと発動したのかを把握するため、呪い返しを受けた存在の状態が把握できるところだ。
把握できない時は、呪い返しが上手く成立していないということであり、近くにいる他の誰か、最も多いのは術者本人に呪いが降りかかる。
今回はしっかりと、ガーゴイルに呪いを返せたので、徐々に石化していく様を認識できていた。
(あっやられた)
既に石像なため、石化の余地が残されている心臓があっさりと石になる。
簡単に命を散らしたガーゴイルであるが、早く魔核を取らないと、ダンジョンに吸収されるため、あっけに取られる暇もなく、俺たちはガーゴイルの亡骸のある方に向かうのであった。
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