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第百七十三話


 

「980万!」「1000万!」「1010万!」


「1070万!」


「1070万!1070万が出ました。……もういませんか?」



「落札です!!」



 オークションが開始すると同時に、会場は熱気に包まれていた。


 VIP専用ルームでは、ガラス越しもしくは大型の画面越しに眺めるような形でオークションを見ているが、それでも充分な熱気が室内で発生している。


「どうですか、伊藤さん」


「いや、面白いな」


 面白い。この言葉が率直に出てくる。


 先程、落札されたのは、ユニークモンスターの鱗であったが、研究機関が落札していた。


 探索者、資産家、政治家、研究者etc.……様々な世界の人間が、目の前のものを手に入れるために血眼になって争う姿は、モンスターとの命のやり取りとは違った生々しさがある。


 ハイ・ライカン・スケルトンの素材に関しても、序盤に出品されるとのことであり、次々に落札されていくモンスターの素材はどれも高額で落札されていた。


 大抵が1000万前後の金額であり、ハイ・ライカン・スケルトンはどの程度の額で落札されるのか、どんな人物が落札するのか、気になってしょうがない。


(次か)


 とうとう、ハイ・ライカン・スケルトンの出品の時がやって来た。


 巨大な骨が、スポットライトを浴びながら、俺たちの視界に映る。


「こちらは、長野第五ダンジョンを徘徊するモンスター、ライカン・スケルトンのユニークモンスター、ハイ・ライカン・スケルトンの骨です。このモンスターは高い再生能力を持っており、骨を砕いても直ぐ再生する、トンデモモンスターです!」


(流石は司会者だ。いいように言っている)


 大田支部長からは、モンスター素材と美容に関しての研究を行っている研究機関が落札する可能性が高いとのことだった。


「では、入札を開始します!初値は300万から!」


「350万!」「400万!」


 参加者が我先にと次々、希望した値を言っていく。


 当初は300万であったが、みるみるうちに値が吊り上がっていき、とうとう、1000万を超えた。


「1010万!」


「1020万」


「1050万」


 しかし、1000万を超えたあたりから、徐々に参加者のボルテージが落ちていき、値はあまり上がらなくなる。


 1050万以上の値からは誰も手を挙げなくなり、司会者も辺りを見回し、口を開いた。


「1050万、1050万が出ました!……他にはいませんか?」


 モンスターのユニーク素材の落札はVIPではなく、一般参加者が多く落札している。


 そのため、ここで誰かが値を上げなければ、このまま決まるだろう。


「では…ん?…1100万が出ました!」


「1110万」


「1110万!……1200万が出ました!」


「くっ、もう出せない」


「他にはいませんか?……では、1200万で落札です!!!」


 思わぬ形で値が上がり、会場の興奮は一段高まる。


 悔しそうにしているのは、一般参加者の男性で、先程ユニークモンスターの鱗を落札していた研究機関に所属していると思われる男だ。


 声を出していたのは、既にこの男だけだったので、恐らくは端末を使って入札しているVIPの誰かだと思うのだが……。


(誰なんだろうか?)


 俺は思わず、キョロキョロと辺りを見回すが、誰が落札したのか、全く分からない。


(滅茶苦茶、気になる)


 オークションの結果は大満足だが、誰が落札したのか気になるのが正直なところであった。




読者の皆様、いつもありがとうございます。


オークションについてですが、会場にいる一般参加者は声を出して入札し、VIP専用ルームにいる参加者は室内に置かれてある大型画面やガラス越しにオークションを眺めつつ、端末を使って入札します。

VIP待遇を受けられる人でも、声を出して臨場感を味わいたい参加者は、一般参加者に混じって参加しております。


今後とも、この作品をよろしくお願いいたします。

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