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第百六十一話

 


「かなり強くはなっていますよ」


 模擬戦を終え、びっしょりとかいた汗を拭く俺の肩を、スッと近づいてきた東雲が揉んでくる。


 いつもはこんなことをしてこない東雲だが、俺たちがこれまでと比較して善戦して機嫌が相当良いのだろう。


 嬉しさが顔からも伝わってくるぐらい、いい意味でニコニコとしている。


(ソフィも結構強いな)


 現在、ヴァルとソフィが模擬戦をしており、俺と東雲はそれを観戦しているところであった。


 ソフィは空を縦横無尽に飛び回り、ヴァルの攻撃を回避している。それだけでは攻撃ができないため、時折降下するのを狙っているのだが、ヴァルの大盾と()の餌食になる為、攻めあぐねていた。


 戦闘能力を単純に比較するならば、ソフィよりもヴァルの方が圧倒的に上ではあるが、戦況はそこまでヴァル寄りではない。やはり、空を飛ばれてしまうと、現状のヴァルでは有効な攻撃手段がほとんどないからである。


 それだけ、空中すらもフィールドにしてしまえるモンスターは脅威であることの証左であった。


(本格的に、武器の新調も考えないと)


 戦いにおいて、屈指の才能を持つヴァルと言えども、空を飛ぶことはできない。そうなると、飛行系のモンスター相手にも対応できるための武器が必要となり、その候補が、現在使っている、槍であった。


(実際、寄せ付けてはいないんだよな)


 ヴァルは槍を巧みに使って、ソフィが距離を詰められないようにしている。本来、動きの速さや力強さなどが拮抗していれば、空を飛べる方が圧倒的に有利になるだろうが、そのような状態になっていないということは、両者の差は相当にあるということなのだろう。


(動きが良いな)


 ヴァルは特別得意な武器がない。


 これは彼女が器用貧乏というわけではなく、盾であろうが、刀であろうが、弓矢であろうが、どんな武器であっても実戦に使えるため、どの武器が特別使えるわけではない状態であっただけであった。


(今のすご)


 ソフィの降下を回避し、ちょうど浮上するタイミングで槍を突き出す。直撃はしなかったものの、身体を掠めており、次、同じ状況になれば、確実に命中させるだろう。


 今の動きを見る限り、ヴァルと槍の相性は相当いいのかもしれない。


 普段は、大盾を使ってタンクの役割を担いつつ、機動力を損なわないように細剣を使っていたが、その時よりも機敏に動けている気がする。


(流石に、ヴァルも動きを変え始めたか)


 ソフィが降下し、それに合わせてヴァルが攻撃を繰り出していたが、流石は東雲のモンスター、間合いをキッチリと管理し、危ない距離には近づかないことを徹底していた。


 先程の攻撃はかなり惜しかったので、既にヴァルの勝ちが確定しているように思えるが、それで満足しないのがヴァルらしい。


(いくか)


 投擲の構えを見せたヴァル、槍はゆっくりと斜め上を向き、矛先がソフィを捉えた。


 ガコンと大盾が床に降ろされ、爆発音が鳴ったかと思うと、気づけば、ヴァルが投擲した槍がソフィを弾き飛ばしていた。


(とんでもないな)


 圧倒的な戦闘のセンスを持つヴァルに、間合いを支配しやすい槍という武器は適しているのかもしれない。


 俺は先の模擬戦を見て、それを確信するのであった。




読者の皆様、いつもありがとうございます。

今後とも、この作品をよろしくお願いいたします。

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