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ヴァルキリーズ・シティ~混成都市ができるまで、あるいは盗賊連合の滅亡記  作者: 氷山坊主
閑話~混成都市の渦+シグルスの模擬戦闘
450/451

450.閑話~冒険者とギルドの変化+C.V.受付嬢の主:テイルウィップ2:デュラハンダスト

 権力者にとって『健康』に関する情報は、重要機密の一つであり。敵の多い戦国武将にとって、戦の動静を左右しかねない。

 〔出陣できるか否か?跡継ぎに地位を譲るのか?〕と、いう勢力の命運を変えてしまう重要事項です。


 そのため、大半の戦国大名は『健康』について隠そうと努力し。

 『疱瘡ほうそう』にかかった、幼少期の『伊達政宗』が有名ですが。他は”アル中疑惑”があるくらいであり。そもそも戦国時代の医療体制では『正確な病名』を、診断できたかもあやしいものです。


 そんな『風邪』で人が亡くなる戦国時代において、『労咳(結核)』という重病にかかりながら、最強軍団を築き上げた。

 『武田信玄公』が規格外なのは疑いありません。


 しかし、いくら信玄公でも自らの体力だけで、『労咳』という難病とつきあうのは無理があり。

 『立木仙元』『御宿監物』という、医師二人の力があった。もしくは『医師団』のレベル的に、武田家は他国より突出していたと考えます。

 世の中は綺麗事だけで回っていない(・・・)

 それはミスティムが幼い令嬢から、冒険者ギルドの受付嬢になった時から変わることなく。


 (C.V.)の力によって、人外の力を得てからも同様だった。



 〔女性の治療をするから、男性陣は外してください〕

 〔口移しで『薬』を飲ませるのを、見られたくありません〕



 こんな風に理由を告げて、傷ついた冒険者(患者)とミスティムの2人だけで、部屋にこもる。そして『テイルゲーム(尾のような魔導)』の秘術を使い、誰にも見られず知られないよう治療していく。

 

 それは想像以上に面倒くさく、手間がかかる行為だった。


 「ありがとう…ありがとうございます、ミスティムの姐さん!」


 「お礼の言葉はけっこうよ。

  傷病者の治療をしても、回復するまで数日がかかる。


  貴方に、その世話ができるのかしら?」


 「もちろんでございます!!

  掃除・選択に食事の手伝いまで、何でもします」



 そしてミスティムが今、一番頭を悩ませているのは冒険者ベイスンの存在だった。


 冒険で傷ついた体に半ば絶望し、ダメもとでミスティムにすがっていた時は、目を盗んで患者に『術式』をかけるのは容易だった。

 〔さすがに『病魔(呪毒)』に蝕まれている者を、癒すのは無理だろう〕と、半信半疑でいた時は患者が女性であることを理由に、部屋から追い出せた。



 「お願いします‥俺はいいですから、娘に『薬』を飲ませてください!」


 「・・・・∼-・」


 そしてミスティムは現在、ピンチに陥っていた。


 何故なら、この世界に『万能薬』などというものはなく。

 少なくともミスティムのコネでは入手できず、今までも一切使ったことはない。


 

 〔『治癒術』を使ったり、傷病を治療する術式を使うと、面倒なことになるわ。

  権力の亡者に狙われるか、想いが深い患者の家族に懇願されるか…


  そういう事態を避けるため、『眠り薬(クスリ)』などで意識を失わせてから、『術式』(テイルウィップ)で処置しなさい〕



 ミスティムは主のC.V.様から、そういう指示(厳命)を受けており。

 『聖女様』の真似事をして、患部・病根を『処置する術式』を余人にさらしたくないのですが。



 「何でもします。〔奴隷になれ〕と言うならば従いますし。対価が必要ならオレを、どこにでも売り飛ばしてください。


  だから俺のケガを治療するより、娘の病を治療してください」


 「・・・―∼・・」



 こうなったのはミスティムが本当の意味で真剣になっていなかった。

 そしてベイスンという父親を”無学の冒険者”と、心のどこかで侮っていたからでしょう。


 おそらくベイスンは『クスリ(ポーション)』が、単なる眠り薬にすぎないことを、ほぼ確信しており。

 密室で眠らせた患者に『テイルウィップ(髪でムチを操る術式)』によって、処置を行っていることを察している。



 『術式』を秘匿したい主様・ミスティムたちにとって、実に都合の悪い状況になっていた。

 正直、ベイスン親娘をだまして見捨てるのが、保身のためなのだろうけど。


 〔ええと、主様に連絡する手段は・・・

  広焔こうえん様は、まだ戻ってきていないし…〕


 素早く算段をつけながら、ミスティムは賭けに出る。


 〔連絡がとれなかったので、やむを得ず(事後承諾で)ベイスン親子を治療してしまいました〕と、いう”三文芝居”を行う段取りを、彼女はイロイロと考え始めた。






 「ソ・レ・デ?」


 「全て”魔女(C.V.)”が悪いんだっ!

  山賊がかどわかし(誘拐)をできず、借金のカタに婦女子を連れて行くことすらできないのだぞ‼


  孤児院にまで監視の目があるなら、もうガキに『邪妖石』を持たせT・:ー:(生き血)


 「よし、まずは黙れ」


 そして数日後に、何故か”孤児院モドキ(誘拐魔の拠点)”でミスティムは暴れ狂っていた。


 

 片親のベイスンさんが娘を預けている施設を、ミスティムは訪れ。

 〔さて治療をしましょう〕と、身体に『感知術式』をかけてみたら、『吸血卵(邪妖石)』が子供の頭部に仕込まれているのを発見し。


 『変幻の杖にして、ほまれの影  足跡をなぞり、背面でしなり


  髪を追って共に進む、怪腕かいわんにして燭台しょくだい

  

  先鞭せんべんは槍のごとく  罠には狡猾こうかつの知恵をふるい


  略奪の悪意を、貧者の荒野に疾くいざなえ   テイルゲーム!!!』


 『魔力』の大半を消費して”邪妖石”の除去を行った。


 頭の冷静なところでは〔気付かないふりをしつつ、万全の態勢をとってから『救出作戦』を行うべき〕と、告げていた。そもそも広焔様以外のシャドウに訴えれば、安全かつ適切な処置をしてくれる、可能性は高い。


 

 しかしミスティムの『感知術式』では、繊毛がびっしり(おぞましい毛玉の)生えた『卵』の脈動?をスルーすることはできず。

 衝動的に『テイルゲーム』を多重で発動してしまった。


 戦闘・治療のどちらも経験が浅い、ミスティムの不徳の致すところであり。

 眠らせた子供たちに何かあれば、謝罪・始末書ですまないだろう。



 「バカめっ、『魔力』を浪費したその身体で、何G*:*ー:」


 〔本当に相手が愚かで、弱くて助かった。

  今後はこのようなことがないよう、猛省して鍛えなおす必要がある〕


 そんなことを考えながら、ミスティムは一本鞭をふるうことなく。

 その持ち手(石づき)で、接近戦を仕掛ける”女賊ババア”を殴り、顔面をひしゃげさせた。


 「Bカなぁ;…『ムチ』が武器d*はn:*~」



 〔剣イコール刀身だ〕と、考えている者は多いようだが。

 『魔導』の世界では〔つかつばさやも含めて、『剣』と成る〕と、考えており。

 少なくともミスティムの主は、全ての職人に等しく敬意を払う。


 あいにくミスティムは、そんな殊勝な性格ではないものの。


 『ムチのも、ムチを構成する重要パーツです』と、認識しており。


 「こうなったら地下のアレを出すしかないっ!

  後でどうなろうが、知ったことK/g*G*ガガガggg」


 『テイルスコーピオン』


 残った魔力を使って、ムチを伸ばし地下の扉のカギを『硬化』する。鍵穴の仕掛けが開かないよう、『付与術の固定』で施錠した状態を保ち、扉が開くのを封じ。


 ムチの柄を短棍たんこんのようにふるい、骨をも砕く打擲ちょうちゃくを行った。


 『旋風閃っ!』(加速の身体強化)



 そして駆け付けたシャドウに、問答無用で取り押さえられた。

 










 それから数日がすぎ…


 牢の中にいるミスティムは、主であるC.V.様から笑われていた。


 「広焔こうえん殿としか接触してなくて、シャドウの衛士さんから不審者あつかいされたですって?

  冒険者ギルドのスタッフとして、あるまじき失態ね^・^」


 「そんなに笑わないでください、ナイキス様…」


 黒霊騎士団の副団長にして、妖精騎士デュラハンをイメージした魔導能力をふるう御方(C.V.様)

 眷族C.V.であるミスティムにとって、恩人であり創造主であり、絶対の支配者でもある。

 

 6級闇属性のC.V.ナイキス・エル・ハーヴィル様が混成都市ウァーテルを来訪なされ。


 「私の身元確認の(を釈放させる)ために、いらしたのですか?」


 「それほど私は暇ではないし、シャドウの皆様を侮りすぎよ。

  貴女ミスティムがC.V.関係者であることは『魔導能力テイルゲーム』を見れば明らかだし…・”女賊”を見逃すほど衛士さん(シャドウ)は甘くはないわ」


 「‥・;・:ー」


 そう告げるナイキス様の横では、見覚えのある(ミスティムを)シャドウの(捕らえた)衛士が直立不動の姿勢で、顔を青ざめさせている。その表情は〔不審者ミスティムを捕らえただけなのに何故、自分は破滅するのだろう〕と、いう悲哀に染まっており。

 この世の理不尽に遭遇した不幸に嘆きつつも〔倒れる時は前のめり〕と、いう感じに悲壮な覚悟を決めていた。


 そんな罪のないシャドウに、ナイキス様は優しく語りかけ。


 「真摯に職務を遂行している、勇士シャドウ殿を『外交』に利用する気はありません。


  そもそもミスティムが行動の自由を(貴人を監禁する)制限されているのは(部屋に軟禁されたのは)、『主筋の(私という)C.V.について秘匿する』と、いう契約を遵守しているため。

  

  ならば未熟なC.V.マスターとして、私が出向くのは当然のことでしょう」


 〔皆さんは無罪です〕と、穏やかに語るナイキス様に、周囲の者たちは全員が胸をなでおろす。

 ミスティムも、衛士シャドウも、ナイキス様を護衛する黒霊騎士C.V.様たちも。誰もが命びろいしたことに安堵のため息をつき。



 部屋の一角にある物体が『視界』に入らないよう、慎重に作り笑いを浮かべた。


 「「「!;*:~:*/??⁻…;⁺」」」


 それでも研ぎ澄ました『感知能力』が、”ソレ”を認識してしまい。

 心底から怯える内心を取り繕おうと、表情筋を必死に稼働させ。



 「ソ・レ・デ?この者たちが”偽の孤児院(誘拐魔の拠点)”で悪さをしていた”賊”かしら?」


 「ハイッ!間違いございません!!」


 裏返りそうな声で返事をするのは、衛士シャドウであり。この部屋にいる唯一の男性だった。

 外交的には〔おとがめなし〕と、いうことになっているが。〔罰則が完全完璧にゼロ〕と、いう甘い話はなく。


 普段・・は間違いなく温厚で人格者な、ナイキス様の対応を命じられていた。


 「直接、子供に”怪蟲”を憑かせた現場の指揮官と、指示を出していた主犯格たちを捕らえ。

  わずか数日で部下たちを成敗し、組織を壊滅させた。黒霊猟魔兵(ブラックドッグ)も、シャドウの皆さんも有能で、副団長としては嬉しい限りです」


 「光栄でございますっ!」×6


 喜びのセリフとは裏腹に、ついに黒霊騎士たちの声が裏返った。

 おそらくシンプルな戦いばかりで、ストレスやパワハラを受けることが少なく。お優しい上司(ナイキス様)の豹変に、目覚めたまま”悪夢”を見ているのだろう。


 「「「-⁻―∼‥~;-*ッ?・」」」


 そんな騎士たちが認識しているのは、犬用の『おり』であり。そこでうごめいている”肉玉”三つだった。



 『デュラハンダスト』という術式がある。ナイキス様の『魔術能力』であり。

 普段はけっして使わない『不死騎士の邪法(凶悪な術式)』の一つだ。


  術理は他の黒霊騎士が使う『硬化の付与によって、敵の動きを封じる』のと、まったく同様であり。一般の黒霊騎士より、『精密』に行使しているだけ(・・)・・・とのことだが。


 開いた『まぶた』を硬化させて、眼精疲労を(瞬き封じの)引き起こし(拷問にかけ)。眼球から視神経を侵蝕して硬直させて、『脳髄』に負荷をかける。

 筋繊維の一部だけを『硬化』させれば、健常な筋肉が『硬化した筋繊維』を破壊してでも、動かそうとして・・・・・『鼓膜』が硬化させられれば、幻聴が聞こえるだけではすまず。


 はっきりしているのは『石化能力』がカワイイと錯覚する、自壊・崩壊の邪法であり。


 自重を支えられず肉玉と化した”賊”たちは、口を開きっぱなしにして生きている(・・・・・)と、いうことだ。

 苦しみ続け、未知に恐怖して、死ぬこともできない(・・)とも言う。



 そんな”惨劇”に見舞われた”賊たち”が、ナイキス様に何をやらかしたのか?

 今後の【安全】のために、確認は必須事項だとは思うが。


 「とりあえず場所を移しませんか?

  貴人の軟禁部屋とはいえ、ニ、三日もいれば飽きてきます」


 「・・・そうね。

  お部屋を汚してはいけませんし、そろそろ真面目な話をしましょう」


 

 こうしてミスティムたちは、かつて”賊”だった(人生を終了した)連中を迷わず見捨て。

 黙秘・自害の両方を封じられ。泣きながら『自白』しようとする元盗賊どもと、目を合わさないようにして、その場から退避した。

 










 世の中には”無理ゲーム”と、いうものがあります。


 〔スキルもなく、努力もせず、ノーリスクで大金を稼ぎたい〕

 〔無学で計算もできない新米冒険者に、補給をしっかり行わせる〕

 〔強権を使える軍隊ですら補給部隊(大人数で取り)がいるのに(掛かっているのに)。平民の冒険者は一人で準備ができて、当たり前と考える〕


 かつてミスティムが人間の受付嬢だった時、愚かにもこんなことを考えていた。こんなことを考える連中を放置して、自由に行動させ続け。

 間接的、かつ確実に”冒険者がやらかす”のを、黙認していた。


 しかしナイキス様の眷族C.V.になった以上、そんな”思考停止”は許されない。


 

 〔『アレンジゲーム』によって、冒険者たちに娯楽・刺激を提供し、学びの場を設ける…

  戦い(冒険)を通じて、傷ついた冒険者をフォローする。


  とても良い企画だから、シグルスの街でも使わせてもらいましょう。

  とりあえず代価は払うけれど、他に必要な物があるなら申請しなさい〕


 〔ありがとうございます、ナイキス様〕


 そう告げるナイキス様は〔この方の役に立ちたい、尽くしたい〕と、考えさせる人望をお持ちであり。

 身分こそ黒霊騎士団(魔王軍の一部署)副団長(ナンバー2)だが、ミスティムの認識では控えめに考えても、『侯爵』以上の地位に就いておられ。



 〔ナイキス様が嫌悪する”無理ゲーム”を、他者に強いるのは破滅と同義だ〕と、ミスティムは考えている。

 眷族C.V.(ミスティム)の『魔導能力テイルゲーム』で蹂躙していいのは、”非道な賊”に対してだけであり。

 冒険者から利益を吸い上げるのは、相応の利益を提供するのが『必須事項』と考えている。



 そんなミスティムにとって〔戦闘力・サバイバル技術が未熟な、新米の冒険者が『物資の準備』まで考えろ〕と、いうのは”無理ゲーム”の類であり。

 『アレンジゲーム』によって得た信用・コネを使い、優先的に解決すべき案件と言えるでしょう。


 


 そもそも酒場の自慢話から、『冒険の準備』について学ぶのは困難だし。

 プライドの高い荒くれ者が、”失敗談(自らの恥)”を語ることは、かなり(・・・)親しい相手に愚痴るのがせいぜいだ。


 そうなれば〔『補給』を怠って、失敗しました〕と、いう経験談を聞いて学ぶことは事実上、不可能と言ってよく。

 若手の冒険者は高い授業料(代償・犠牲)を払って、補給の重要性を知ることになる。



 「〔『軍団』が苦労して、分担して『補給』を行っている〕ことを知らない。

  そんな冒険者が適切な『補給』をできるはずもなく・・・」


 その結果、新米冒険者が『準備』を怠ったり。『準備』が中途半端で依頼に失敗し、周囲にまで被害をもたらす。

  

 それを”愚か”とあざけるのは簡単で楽なことだが。

 『補給』のノウハウを持っている、軍勢・貴族ですら困難なことを、平民の若者が初挑戦したら失敗して当たり前であり。


 「冒険者の皆さんには、たくさんの依頼をこなし、さらに冒険を成功させていただきたい。

  それがギルドの利益になるのに、”この状況(準備の未熟)”を放置しているのが、冒険者ギルドの現状です」

 

 「「「「・・・-・~・」」」」

  


 予算・人員は無限ではないし、あらゆることへ十全に備えることなど、不可能でしょう。

 そもそも冒険者ギルドの活動理由は、『雇用対策』という面があり。


 〔正職に就けない者に、とにかく『依頼(仕事)』を斡旋して、食いつないでもらう〕と、いうのが冒険者ギルドのメイン業務だ。必然、騎士団が行うような手厚い『補給支援』など望むべくもない。


 とはいえ、ものには限度というものがあり。

 『ニーズ(必要性)』が常識をくつがえす時もあります。



 「”不届きな策士(盗賊ギルド)”の暗躍で小競り合いが増えたことにより、軍が魔物対策をできなくなる。少なくない被害が出てから、ようやく騎士団が動く事態が増えました。


  そのため冒険者へのニーズは増えており。

  『依頼料の分割払い』によって、依頼者の負担・リスクも軽減されました」


 「おお…」「ならば‥」「‥^・^」


 「ギルドは冒険者の皆さんに『補給』の支援を行う。

  それによって『依頼』の成功率を上げて、冒険者が無事に帰れるようフォローしましょう」




 明るい希望をミスティムは語るが、実情はもう少し複雑だ。


 まず、どんなにあくどい連中だろうと、”盗賊ギルド”は必要悪な面も有り。

 C.V.様の勢力が”盗賊ギルド”を壊滅させたことで、小悪党の抑えがきかなくなり犯罪が増えている。詐欺師を憎むイセリナ様の意向とは裏腹に、混成都市から離れたところで”ペテン”が行われており。


 これらに対抗するため、まともな(・・・・)自警団を増やす必要がある。


 そのために、まっとうな冒険者を育て増やし、引退後には『転職』してもらいたい・・・と、いう思惑があり。



 さらに苦労して”盗賊ギルド”を滅ぼしたのに、挫折した冒険者が”連中”の私兵に引き込まれたら、戦いが終わらない。


 C.V.様たちが自分たちの次代を育成するため、シャドウ様との関係を深めたいと【熱望】なさっている。

 それなのにシャドウ様が『遠征』したり、”賊”を探すため奔走していたら。いつまでたってもプライベートな時間が取れない。


 〔そんなことになったら、あるじはともかく他のC.V.様が黙っていないでしょう〕


 『城壁』を破壊するほどの戦闘力を持つ、戦姫C.V.様の争いを止めたのは、賢者様などではなく。逢瀬デートを妨害された水乙女の怒りだったとか。


 笑い話(要するに)のようですが(理不尽な魔女が)、全く笑えない(、生殺与奪の権を)話であり(握っている)


 その対策が急務なのは、当然の流れでしょう。

 その結果・・・



 〔シャドウ様の『任務』を減らすためなら、冒険者への支援に金の糸目はつけません〕


 〔冒険者もギルドも、健全な営みを望みますから。

  私にチャンスをください〕


 〔いいでしょう。

  だけど、あまり時間はありませんよ〕


 〔‥承知しております〕


 そんなやり取りの横で、C.V.様を籠絡(無謀、極まりない)しようとした(挑戦をした)”男娼モドキ”が、冷たい床を引きずられていき。イロイロと終わっている連中を見れば〔明日は我が身〕と、いう危機感をミスティムは否応なく感じた。


 結局のところミスティムは自らの保身のため、生き延びるため動いているだけなのだが。




 「ミスティムの姐さんがおっしゃる通り、これから冒険者もギルドも変わっていくだろう。


  とはいえ突然の『改革』は軋轢あつれきを生むし。『補給』をタダ飯と勘違いする”奴”が出ないよう、引き締めも重要だ。

  そこで経験を積み、それなりに信用のある俺たちに、お声がかかった。


  皆、『魂』をかけて熟考して、忌憚きたんなき意見を述べてもらいたい」


 「・・・・∼・」


 ベイスンの呼びかけに、列席しているベテラン冒険者たちが口を開き。


 「”誰もが公平に補給を受ける”と、いうのはまずいだろう。

  ランクや『依頼の達成率(人格・信用度)』によって、差をつけるべきだ」


 「ハングリー精神は必須にしても、『食事』ができないのでは身体を作れない。成長に差し障るし、命の危機だ。

  冒険者ギルドで『炊き出し』モドキをしてもらうと助かる」


 「何とか命を拾っても。失った『装備』を一人で買い替えるのは、騎士サマでも困難だ。焦って借金をして、そのまま転落人生に陥るリスクは高い。


  『依頼料の分割払い』と同様に、低金利で金を貸してもらえないだろうか…」


 「冒険者の必需品・消耗品を大量に購入して、ギルドで安く販売してもらえれば、助かるんだが」


 

 こうして次々と意見が出されていく。

 さすがにベテランだけあって、”不毛な夢物語”を語ることはしない。ギルドの『実情』を察しつつ、冒険者にとって適切な『補給・支援』の提案が行われ。



 「こんなところでいかがでしょう、ミスティムの姐御」


 「ええ、とても参考になります。

  何としても、これらの意見を採用するよう、上の者(C.V.様)にかけあいましょう」


 「・・・どのくらい話を聞いてもらえることやら」


 「…余計な口をたたくな!

  俺らは姐御の指示に従っていればいい」


 「・・・・-・」


 持ち上げてくれるのは正直、嬉しいのだけど。

 年長な歴戦の冒険者たちに、『姐御』あつかいされることに、ミスティムは激しい違和感を感じる。


 「心配なさらずとも、今よりひどくなることはありませんし。

  提案を聞いてみると、多少・・のやり繰りで行えることもありますね」


 「「「「よろしくお願いします、姐さん!!」」」」


 それでも表向きミスティムが改善の旗振りを担う以上、情けない姿をさらすわけにはいかず。彼女は自らのイメージする女王然として振る舞った。











 『終わり』というものは、突然やって来る。


 その理由は様々で、不慮の事故だったり。想定外の怪物との遭遇だったり。

 栄光の道に『落とし穴』があったり、日常に接して戦いから離れたくなるなど。


 物心両面・千差万別な理由で『終わり』はもたらされ。


 

 1級冒険者のサイベルの場合は、自らの”妬心”を自覚して、終わりを感じた。



 「ありがとうございます、冒険者様!」

 「これで、安心して冬を越せる」「やったっ、やったぞ!!」


 『依頼料の分割払い』によって、被害が深刻になる前に、早期に依頼を出し。サイベルが倒した魔物素材を得て、村人たちが半ばお祭り騒ぎになっている。


 

 そんな村人たちを見ても、サイベルはもう心の底から喜べない。


 〔依頼の報酬は、今まで通り一括で冒険者に支払われている。


  つまり冒険者への報酬を代わりに払う、財力の持ち主がおり。その人物は、『依頼料の分割払い』に伴う流れの中で、圧倒的に誰よりも儲けている〕


 そう考えてしまうと、サイベルは命がけで戦ったのに、得られる報酬が少ないことが気になってきて。

 

 命がけで難関クエストを達成したところで〔おお、すげぇ〕〔さすが1級冒険者だ〕と、いう程度なギルドでたむろしている、連中のつぶやきで終わってしまう。

 そんな風に金額・名誉の何もかも少ない、冒険者稼業への情熱が急速に冷めてしまい。


 同時に”ねたみ”で情熱を失ってしまう、自らの小心さに自己嫌悪に陥る。

 しばらく休むか、正式に転職を考えるか。サイベルは迷いながら、冒険者ギルドの扉を開け放ち。




 「おめでとうございます、サイベル様」


 「「「「お疲れ様です、サイベルさん!!」」」」


 「おっ・:!」


 そうして冒険者ギルドにいる者たちから、クエスト達成をもてはやされ賞賛された。


 「これはいったい…」


 「まずは依頼達成の報告を行い、報酬を受け取ってください。

  お話は、それからにいたしましょう」


 「承知した」



 クールに返答しようとしたが、サイベルの胸は期待にふくらみ、口角の端が持ち上がる。

 

 これほどの称賛を受けたのは昇級の際に、受付嬢から〔昇級、おめでとうございます〕と、一言だけ讃えられた時以来だろうか?

 その時は回りの冒険者たちから、嫉妬交じりの視線を受けて、自尊心が満たされたものだが。


 騎士の凱旋・行進に比べれば、竜とトカゲぐらいの差があり。

 その後は〔ありがとうございます。おかげで助かりました〕と、いう定番セリフに2~3言追加されれば御の字だった。


 当然、〔もっと俺をねぎらって、讃えて、認めてくれ〕と、いう本音は胸中に閉じ込めるしかなく。正義の味方に遠いサイベルは、不満をためこみ続けたが。


 

 「それで、これはいったいどんな趣向だ?」


 「はい、実は冒険者ギルドは最近、改革に着手することになりました。

  とはいっても、別に突飛なことをするわけではなく。


  〔冒険者の皆さんが求めるものを提供しましょう〕と、いうように『ニーズ』に応えるだけ。

  

  食べ盛りで空腹をかかえている、初級の冒険者には『食材』を提供したり。

  冒険者として成長の『転機』を迎える、中級の冒険者たちには情報提供をしたり、装備の割引サービスを行う」


 「ほほう、それはけっこうなことだ」


 余裕の笑みを浮かべつつも、サイベルは『本命』を催促するセリフを、必死に押し隠す。

 もっともこれで『肩たたき券』とか、『他の冒険者に、酒をおごる権利』などと言われたら。ふざけた期待を裏切る内容ジョークだったら、サイベルは暴れ出すだろう。


 そんなサイベルに対し、受付嬢のミスティムはにこやかに告げ。


 「まずは副賞を選んでください。


  『美酒』・『美食』に、それら2つを兼ねた『高級宿』への宿泊など。

  冒険で疲れた心身を休める、副賞を選んでください」


 「ほほう~」


 「何分、サイベル様が副賞を選ぶ、最初の冒険者になりますから。

  お酒・食事メニューの種類が、少ないことはご容赦ください」


 「~^・^‥-^ー(しょうがねぇな~)・・」


 1級冒険者の立場に恥じないよう、サイベルはもったいぶろうとするが。

 その目はメニューの内容に釘付けであり、かぶりつくようにしてページをめくっていく。


 「とりあえず副賞を決定したら、1級冒険者への『支援』について話し合いをしましょう」


 「おう、それなら‥・」


 

 初級が『食事』を支援され。中級が『情報』・道具の割引を受けられる。


 ならば1級冒険者は、どんな報奨を得られるのだろう。



 期待するサイベルに話された内容は、冒険者ポイントを賭けることだった。


 「うむ、さっぱりわからん」


 「ご説明させてもらいます。

  1級冒険者の皆様は難しい依頼をこなし、冒険者の評価ポイントをためていきますが。そのポイントをいくら蓄えても、特級になることはできません。


  今までは事実上、『ポイント』が死蔵されていたと言えます」


 「うむ」



 初級・中級はクエストをこなし、評価をためていけば1級冒険者へと出世する。

 そうして難易度の高いクエストを受ける『権利』を得たり。世間からも讃えられて、荒くれ者から勇者(1級)へと扱いが変わる。


 しかし1級冒険者が、少し難しいクエストを数だけこなしたところで、特級にはなれない。

 特級になるには、『英雄』あつかいされる超高難易度なクエストを、成し遂げることが求められ。


 並みの1級では、クエストの発生場所にたどり着くだけで、命がけの道程になってしまう。クエストを達成するなど、夢のまた夢であり。


 こうして大半の1級冒険者が、同じ難易度のクエストを受け続け。

 変わり映えのない日々に鬱屈うっくつをかかえたり。たった一度の失敗ですべてを失う、不安をかかえているが。


 

 「冒険で忙しく、娯楽を楽しむ暇もない1級冒険者に『楽しみ』を提供したい。

  ですが、お金で得られる娯楽ならば、一通り楽しまれたでしょう」


 「・・・-・・(そんなことも)・~・(ないが)


 「そこで冒険者ギルドのコネ・情報網を使って、1級冒険者に『楽しみ』を得るチャンスを提供する。


  高名な職人への招待状だったり。中級冒険者に支援していた『情報』以上のものを、注文を受けて探したり。本来は大金を積んでも得られない、『稀少な道具』を契約・アイテム交換で入手できるよう、ギルドが交渉を行う。


  それら『楽しみ』のため、冒険者ポイントの『計算方法』を改訂するのですが…」


 〔始めたばかりで、ギルドの体制が整っていません。

  今、注文しても限定された『内容(楽しみ)』になってしまいますが・・・〕


 言いよどむミスティム嬢に対し、サイベルはにこやかに告げ。


 「それなら今回・・のところは、副賞を3つとも楽しめるだけにしよう」


 「・・・よろしいのですか?」


 「もちろんだ。冒険者とギルドは助け合う、仲間じゃないか^・^

  これからも冒険者として、俺は活躍するんだ。新しい仕組みも、これからジャンジャン利用していく。


  1回ぐらい、前祝まえいわいに楽しんでもバチは当たらないだろう」


 「サイベル様のご配慮に、感謝いたします」


 そうして頭を下げるミスティム嬢の肩を抱こうとして、手をかわされ。




 翌日に決闘裁判をかたった、『処刑ムチ』の話を聞かされ。

 サイベルは命拾いしたことを知り。破滅の一歩手前で助かった、自らの幸運に安どした。










 ネタバレ説明:『テイルウィップ2』について


 『尾のような魔導(テイルゲーム)』の基幹となる『術式』であり。

 たいていの場合は、ミスティムの髪に『呪力』をこめて、愛用の『一本鞭』にからめる。そうすることで『ムチ』を触手のように()、操れる『術式』として使用されますが。



 実は『テイルウィップ』には他の使用方法もあり。


 『患者の髪』に魔力付与を行って、『妖糸』に変成し。

 その『妖糸』を使って、患者の傷を『縫合』したり。切れた神経までも『接合』したり、『毒素』を吸い出す。


 わりとチートな『医療術式』が、『テイルウィップ』の正体であり。

 この『術式・術理』の情報だけで、ナイキスはミスティムを眷族C.V.にした手間以上のものを、回収できたと言えるでしょう。


 いっそミスティムは聖女になったほうが、多数の人々を救えるでしょうけど。

 光神殿の”生臭神官”がやらかしまくったため〔自分の身を危険にさらしてまで、治癒師になる気はない〕と、いうのがミスティムの意向であり。


 ナイキスは一切、説得することもなく。黒霊騎士の治癒術師として、雇用することもなく。

 ミスティムの意向を、最大限に尊重しています。


 

 その理由はシャルミナ、ナイキスの黒霊騎士団ツートップに余裕があり。

 ナイキスが『術式』(テイルウィップ)を強化コピーしているなど、いくつか理由がありますが。



 最大の理由は『テイルウィップ』の術理が、『呪いのワラ人形』をイメージしており。


 『髪で形代(呪いの人形)を作り、不幸をもたらせるなら。少しアレンジして傷を治すという、幸福をもたらせる』と、いうイメージをミスティムはしており。

 ミスティム、患者たちの『髪』を使って、『分身の蛇』を作り、傷を再生・接着している。これが『テイルウィップ』の治療術式であり。


 〔大っぴらに『テイルウィップ』で治療をすると、よくて最前線送り。

  はっきり言って、悪用される未来しか見えない〕と、いう理由により『テイルウィップ』の治癒は秘匿されています。


 

 以上、『テイルウィップ2』のネタバレ説明でした。






 ネタバレ説明:『デュラハンダスト』について


 黒霊騎士団の副団長C.V.という、正体を現したナイキスの『通常攻撃』であり。

 8級C.V.ナイキス・ハノーヴァとか、猫をかぶっている時は使えない。使ってはいけない『術式』です。


 黒霊騎士団の大半は『硬化・重量付与』というバフを敵にかけて、バランスを崩したり。装備・素材の『組成』に干渉して、事実上のデバフをかけますが。


 その上位互換で、原典が『デュラハンダスト』であり。



 本文のように神経・筋繊維や『骨の一部』に、『硬化の付与』をかけて自壊させたり。身体の内部・内臓にまで影響する、かなり凶悪な全身・・への『状態異常』をかけてきます。


 一応、関節・表皮に『デュラハンダスト』をかけて、石化モドキの状態にもできますが。

 本当に恐ろしいのは接近戦で『デュラハンダスト』をかけてから、麻痺・患部(状態異常)の身体部位に『剛拳・古武術』をたたきつけることであり。


 〔ナイキス様は魔導士系な、C.V.様かと思ったけれど。

  黒霊騎士団らしく『剛力・身体強化』も得意なんですね~〕と、いう通常攻撃はミスティムがドン引きするレベルな、”残酷劇場”になってしまい。


 本文で”肉玉と化した賊”たちは、にらんだだけの『デュラハンダスト』で、あの有り様です。


 そのためもっぱら黒霊騎士たちの修練・昇格試験などで、『デュラハンダスト』は使用されており。増長した黒霊騎士C.V.の鼻っ柱を、へし折ることに使われる。


 ナイキスを護衛?している黒霊騎士たちが怯えていたのは、そんな体験によるものです。



 以上、『デュラハンダスト』のネタバレ説明でした。

 戦国時代は現代より平均寿命が短く、『医術』も比べるべくもない。

 さらに権力者の常として、『病・健康』に関する情報は秘匿されるべき。それこそ知った者は、口を封じられかねないでしょう。


 それなのに武田信玄の『病』は知れ渡っており。戦国時代の生活・医術を考えれば、享年53歳は長生きしたほうだと考えます。(上杉謙信49歳没・北条氏康57歳没・豊臣秀長50歳没)


 そもそも、当時の”迷信”だと”病は悪霊のせい”と言われ。『病』にかかっている武田信玄は、”悪霊に憑りつかれている”という偏見にさらされていた。

 物心公私のあらゆる面で、武田信玄は不利をかかえており。それを乗り越える力は、単なる『策謀・武力』では不可能でしょう。



 そして当時の医術の状況を考えれば、武田信玄公の延命治療は『病を克服した』と、言っても過言ではなく。

 その原動力は『医師』たちの力に加え。もう一つ『湯治場とうじば』の力があったと、私は推測しています。

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