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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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51/55

第51話 色が宿る日

 スポンサーがすべて決まった翌朝、

 岳はクラブ事務所の扉を開けた瞬間、胸が熱くなった。


 机の上に、ユニフォーム業者から届いた

 “最終デザイン案”の封筒が置かれていたのだ。


(……ついに、ここまで来たんだ)


 震える指で封を切る。

 中から出てきたのは、A3サイズの厚紙に印刷されたユニフォーム案。


 オレンジを基調にした鮮やかなデザイン。

 胸には、堂々と

 「宇和島オレンジトレーディング」

 のロゴ。


 背中の上部には、

 「宇和島商工会」


 袖には、

 「うわじまっくす」


 パンツには、

 「サポーター勝手連」


 どれも、

 街の人たちの“想い”そのものだった。


 岳は、思わず椅子に座り込んだ。


(……これが、うちのユニフォーム……)


 胸が熱くなり、視界が滲む。




 そこへ、大畑監督が事務所に入ってきた。


「おはようございます、たけしさん。……お?」


 岳がデザイン案を抱えているのを見て、

 監督はゆっくり近づいた。


「……できたんですね」


「はい。見てください」


 岳は震える手でデザイン案を差し出した。


 大畑監督は、しばらく無言で見つめた。

 胸のロゴ、背中のロゴ、袖、パンツ。

 ひとつひとつ、丁寧に目を通す。


 そして――


「……いいユニフォームですね」


 静かに、しかし確かな声で言った。


「街の人たちの顔が浮かびます。

 このロゴのひとつひとつに、

 “誰かの想い”が入っている」


 岳は、こらえきれずに笑った。


「そうなんです。

 全部……全部、街の人たちが……」


「たけしさん」


 大畑監督は、デザイン案をそっと机に置いた。


「このユニフォームを着て戦うのは、選手たちですが……

 背負うのは、街そのものです」


「……はい」


「だからこそ、強くならないといけない。

 勝ち負けじゃなく、“誇り”として」


 岳は深く頷いた。


(この監督で良かった……

 この街で良かった……

 このクラブで良かった……)




 その日の午後。

 岳はスポンサー一覧とデザイン案を抱えて、社長室へ向かった。


「社長、ユニフォームの最終案が……」


「おう、たけし。見せてみい」


 岳はデザイン案を差し出した。


 三好大悟は、腕を組んでじっくりと見つめた。


 胸のロゴを見て、

 背中のロゴを見て、

 袖を見て、

 パンツを見て――


 最後に、ふっと笑った。


「……ええやないか」


「はい……!」


「街の名前が、ちゃんと“背中”にある。

 これがええんや」


 三好は、デザイン案を指で軽く叩いた。


「たけし。

 このユニフォームは、ただの布切れやない。

 街の誇りや。

 宇和島の旗や」


 岳は、胸が熱くなった。


「……ありがとうございます」


「それとな」


 三好は、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。


「胸スポンサーの契約書や。

 金額、ここに書いとる」


 岳は紙を受け取り、数字を見た。


 ――500万円


「しゃ、社長……!

 こんな……!」


「大盤振る舞いや」


 三好は豪快に笑った。


「街がここまで動いたんや。

 親会社がケチケチしてどうする。

 胸は、どーんと構えとかなあかん」


 岳は、涙がこぼれた。


「……ありがとうございます……!」


「たけし」


 三好は、みかんジュースを一本渡した。


「このユニフォームで、宇和島を一等賞にしてくれ」


 岳は、涙でぐしゃぐしゃの顔で頷いた。


「……はい!」




 その夜。

 岳は自宅でデザイン案を広げ、

 晃と美咲に見せた。


「パパのクラブのユニフォーム……!」


 晃は目を輝かせた。


「かっこいい!

 背中に“商工会”って書いてある!」


「袖に“うわじまっくす”もあるよ」


 美咲も笑った。


「街の人たちが、いっぱい支えてくれてるんだね」


「……うん」


 岳は、胸がいっぱいになった。


(このユニフォームは……

 街の人たちの“手”で作られたんだ)


 その夜、岳はデザイン案を枕元に置いて眠った。


 クラブは、

 街とともに、

 確かな“色”を手に入れた。


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