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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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第49話 胸に刻むもの

 クラファンの数字は伸び続けていた。

 だが、それと同時に、赤字額の予測も膨らみ続けていた。


 クラブの本格始動に伴い、

 選手たちの練習着、移動着、そして――ユニフォームの準備が始まった。


 ユニフォームは、選手用であると同時に、

 クラファンのリターンとしても大量に必要になる。


 デザイン案は、まだラフの段階。

 胸のロゴも、背中のロゴも、袖のロゴも、すべて空白のまま。


(……スポンサー、どうするんだ)


 岳は、デザイン案を見つめながら、

 背筋が冷たくなるのを感じた。


 クラブの赤字は、すでに一千二百万円を超える見込み。

 ユニフォームの制作費は、さらにその上にのしかかる。


(このままじゃ……クラブが潰れる)


 その恐怖が、喉の奥に張り付いて離れなかった。




 岳は、デザイン案を抱えて社長室へ向かった。


 ノックをすると、三好大悟が顔を上げた。


「おう、たけし。どうした」


「社長……ユニフォームの件で相談があります」


「座れや」


 岳は深呼吸し、デザイン案を机に置いた。


「スポンサーを……募集してもいいでしょうか」


 三好は、少しだけ目を細めた。


「ほう。気づいたか」


「はい。

 クラファンの赤字が膨らんでいて……

 ユニフォームの制作費も、かなりの額になります。

 スポンサーがいなければ、クラブの財政が……」


 言いながら、声が震えた。


 三好は、岳の言葉を遮らず、

 ただ静かに聞いていた。


 岳が話し終えると、

 社長はみかんジュースを一本、岳に差し出した。


「飲め」


「……はい」


 岳が一口飲んだところで、

 三好はゆっくりと言った。


「たけし。

 社長はたけしなんやから、俺は文句は言わん。

 やってみろ」


 岳は、思わず顔を上げた。


「……いいんですか」


「ええよ。

 これが、かけがえのない“絆”と“経験”になる」


 その言葉は、豪快で、温かくて、

 そして何より、岳を信じていた。


 だが、三好は続けた。


「ただし、条件がある」


 岳は背筋を伸ばした。


「胸スポンサーは、俺たち――

 “宇和島オレンジトレーディング”や」


 岳は息を呑んだ。


「背中スポンサーは、必ず、絶対に“宇和島市内の会社”にしろ」


「……宇和島市内、限定……?」


「そうや」


 三好は、机に指をトントンと軽く叩いた。


「他のスポンサーも、原則的には“愛媛県内”にしろ」


「……」


「もう、俺たちだけのクラブじゃないんや」


 その言葉は、静かだったが、

 岳の胸に深く突き刺さった。


「宇和島市みんなのクラブや。

 他のクラブが好きでもええ。

 サッカーに興味がなくてもええ。

 それでも“みんなのクラブ”なんや。

 忘れるな」


 岳は、胸が熱くなるのを感じた。


 クラブは、

 会社のクラブでも、

 岳のクラブでも、

 選手のクラブでもない。


 ――宇和島のクラブ。


 その事実が、

 岳の中で、静かに形を持ち始めた。


「……分かりました。

 胸はオレンジトレーディング。

 背中は宇和島市内限定。

 他は愛媛県内で探します」


「よし」


 三好は笑った。


「たけし。

 スポンサー集めは、クラブの“覚悟”を見せる仕事や。

 逃げるなよ」


「……はい!」


 岳は深く頭を下げた。


 ユニフォームの胸に刻まれるもの。

 背中に刻まれるもの。


 それは、クラブの“魂”そのものだ。


 岳は、社長室を出るとき、

 デザイン案を抱きしめるように持っていた。


(宇和島のクラブとして……

 胸を張れるユニフォームにしないと)


 クラブは、また一歩、

 街とともに歩き始めた。


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