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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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46/55

第46話 クラファンが社会に出る

 社長室を出た瞬間、岳は深く息を吐いた。


(……赤字でも、やっていいんだ)


 三好社長の豪快な後押しが、まだ胸の奥で響いている。


 だが、廊下を歩きながら、岳はすぐに“総務課員の顔”に戻った。


(いかん。午後は棚卸しの資料まとめがあった)


 クラブ代表である前に、

 岳は宇和島オレンジエクストリーディングの総務課員だ。


 自分の席に戻ると、同僚が声をかけてきた。


「北島さん、社長室から戻ってきたんですか? なんかあったんです?」


「い、いや……ちょっとクラブのことで」


「大変ですねぇ、兼任社長」


 軽口を叩かれながら、岳は総務の仕事を淡々とこなした。

 クラブのことを考える余裕はない。

 今は“本業”を片付ける時間だ。





 夕方。

 総務の仕事を終えた岳は、クラファン担当者との打ち合わせに向かった。


 会議室のホワイトボードには、

 すでに担当者が書いた大きな文字が並んでいる。


「北島さん、タイトルはこれでいきましょうか?」


 そこには――


 『宇和島キッズと一緒に歩みたい』


 岳が社食で書いた言葉が、そのまま大きく書かれていた。


「……はい。これでお願いします」


「使用用途も確認しました。

 幼稚園・小学校へのボール配布、公園の遊具点検、学習ドリル制作……

 全部“寄付型”ですね」


「はい。クラブの強化費は一切入れません」


「赤字になりますよ?」


「……はい」


 担当者は苦笑した。


「まぁ、こういう“奇抜なクラファン”は、逆に話題になりますよ」


 岳はその言葉に、少し救われた。





 翌日。

 オレンジトレーディング広報課が作ってくれたプレスリリースを手に、

 岳は市役所の記者クラブを訪れた。


「宇和島オレンジエクストリームさん、クラファンですか?」


「赤字覚悟って本当です?」


「全部、子どもたちのために使うんですか?」


 記者たちの反応は早かった。

 “異質なクラファン”は、確かに興味を引く。


 岳は丁寧に頭を下げながら、

 広報課が作った資料を配っていった。


(……本当に、始まるんだな)





 そして、偶然が重なった。


 ちょうど同じ週、

 オレンジトレーディングの工場見学番組が地元テレビで放送される予定だった。


 番組の最後に、

 「宇和島オレンジエクストリームのクラファンが始まります」

 というテロップが入ることになった。


 広報課の人が言った。


「北島さん、これは運がいいですよ。

 工場見学番組は視聴率が高いですから」


 岳は思わず笑った。


(運がいい……

 いや、社長が“なんとかしたる”って言ったからかもしれん)


 クラブの名前が、

 街の中で少しずつ広がり始めていた。


 クラファンは、静かに、しかし確実に歩み出した。


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