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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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45/55

45話 わざわざ赤字を作っていいですか?

 翌日。

 岳は厚い企画書を抱え、

 オレンジトレーディング本社の社長室の前に立っていた。


 深呼吸を一つ。

 ノックをすると、三好大悟の声が返る。


「おう、たけし。入れ」


 岳は一礼して入室し、

 机の上に企画書を置いた。


「社長、ご相談があります」


「どうしたんや。顔が真剣やな」


 岳は、市外での疎外感、

 街でのアンチの声、

 そして家族との会話で生まれた

 クラウドファンディングの構想を説明した。


 三好は腕を組み、

 じっと岳の話を聞いていた。


「……なるほどな。

 クラファンか。

 資金もできるし、ええんちゃうか?」


「それがですね……

 ちょっと色々ありまして」


「ん?」


 岳は企画書を開き、

 震える指でページをめくった。


「社長……

 クラファンで赤字を出してもいいですか?」


 三好の眉が跳ね上がった。


「……は?」


「いえ、その……

 ちゃんと説明します」


「説明せえ」


 岳は企画書を読み上げた。


---


■クラウドファンディング企画

タイトル:

『宇和島キッズと共に歩みたい』


■資金使用用途

①市内小学校へサッカーボール配布……600万円

②市内公園の遊具・ベンチの点検と補修……600万円

③選手の背番号を使った算数ドリル、

 サッカー用語や実況文を使った漢字・英語ドリル制作……600万円

④クラファン手数料……200万円


合計:2,000万円


■リターン

・オレンジトレーディングのジュース詰め合わせ

・ユニフォーム

・Tシャツ

・タオルマフラー

→4点セットで 1口5,000円


※クラファン成功しても、

 リターン原価で 完全赤字


---


 三好は企画書を閉じ、

 ゆっくりと岳を見た。


「……なぁ、たけし。

 “収支”って言葉、知ってるか?」


 岳は言葉を失った。


「企業や組織はな、

 収入と支出があって成り立つんや」


 岳はうつむいた。


「今のオレンジエクストリームは、

 選手が揃って形はできつつある。

 でもな──」


 三好は指を一本立てた。


「収入がゼロや」


 岳の胸に突き刺さる。


「物販売上もない。

 チケット収入もない。

 放映権もない。

 ファンクラブ収入もない。

 成績も実績もない。

 ないない尽くしや」


 岳は唇を噛んだ。


「そんな状態で“赤字を作りたい”って……

 お前、正気か?」


 岳は震える声で言った。


「……申し訳ありません……」


「謝るな。

 俺は怒っとるんやない」


 三好は机を軽く叩いた。


「“現実を忘れるな”と言っとるんや」


 岳は涙をこらえきれず、

 目を伏せた。


「……はい……」


 沈黙が落ちた。


 だが次の瞬間──

 三好は大きく息を吐き、

 ゆっくりと笑った。


「──で、たけし。

 この件はオッケーや」


 岳は顔を上げた。


「……え?」


「お前に任せたんや。

 “宇和島を一等賞にしろ”ってな」


 三好は続けた。


「街のために金を使うんやろ?

 ええやないか。

 それで街が動くなら、

 赤字なんぞ俺が責任取ったるわ」


 岳の目から涙が溢れた。


「社長……

 ありがとうございます……」


「悩むな、たけし。

 これは俺ら皆んなのエクストリームや。

 お前一人のもんやない」


 三好は岳の肩を叩いた。


「ただし──

 現実だけは絶対に忘れるな。

 収入ゼロのクラブが赤字を出すってのは、

 命綱なしで綱渡りするようなもんや」


「……はい……!」


「それでもやるんやろ?」


「やります!!」


「なら、行け。

 クラファン、開催や」


 岳は号泣しながら深く頭を下げた。


「必ず成功させます……!!」


 こうして──

 宇和島オレンジエクストリームは、

 街を巻き込む大きな挑戦へと踏み出した。


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