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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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43/55

43話 静かなざわめき、初めての逆風

 旧三間中の校庭に、

 新しく設置されたクラブ事務所の看板が立った。


 「宇和島オレンジエクストリーム

  クラブ事務所」


 岳はその文字を見つめ、

 胸の奥に小さな誇りを感じていた。


 ここから本格的に動き出す。

 そう思った矢先だった。


 ──その日の午後。


 市内の商店街を歩いていると、

 聞き慣れない声が耳に入った。


「なんか最近、あのサッカークラブ、調子乗っとるよな」


「イベントだの、新聞だの、

 なんか“宇和島の救世主”みたいな扱いでさ」


「どうせすぐ消えるんじゃない?

 ああいうの、最初だけよ」


 岳は足を止めた。

 声の主は、近くの喫茶店の前にいた中年男性たちだった。


 彼らは岳に気づいていない。


「旧三間中も、あいつらが使い始めたらしいぞ」


「え、あそこって市の施設やろ?

 なんであいつらだけ優遇されとるん?」


「市の金使って遊んどるだけやろ」


 岳は胸の奥が冷たくなるのを感じた。


 優遇されている?

 遊んでいる?


 そんなつもりは一度もなかった。

 むしろ、必死だった。


 だが──

 街の全員が同じ温度で応援してくれるわけではない。


 それは、頭では分かっていた。

 だが、実際に言葉として聞くと、

 胸に刺さるものがあった。


 そのとき、

 背後から声がした。


「北島さん」


 振り向くと、

 商店街の八百屋の店主・山本が立っていた。


「気にせんでええよ。

 ああいうのは、どこにでもおるけん」


 岳は苦笑した。


「……聞こえてましたか」


「聞こえとった。

 でもな、あれは“嫉妬”や」


「嫉妬……?」


「お前さんらが頑張っとるけん、

 自分らが置いていかれよる気がするんよ。

 人間、そういうときに文句が出るんや」


 岳は黙って聞いていた。


「でもな、北島さん。

 応援しとる人間の方が、ずっと多いけん」


 その言葉に、

 岳の胸が少しだけ軽くなった。


 ──その日の夕方。


 旧三間中の事務所に戻ると、

 大畑が書類を整理していた。


「たけしさん。

 顔色が悪いですね」


「……少し、街で声を聞きまして」


 大畑は手を止めた。


「反対意見、ですか」


「はい。

 “優遇されている”“調子に乗っている”

 そんな声が……」


 大畑は静かに頷いた。


「当然です」


「当然……?」


「クラブが動けば、街も動く。

 動けば、必ず“揺れ”が生まれます。

 それは健全なことです」


 岳は驚いた。


「健全……?」


「はい。

 全員が賛成する組織は、

 逆に危険です。

 反対意見があるということは、

 “街がクラブを意識し始めた”という証拠です」


 岳はゆっくりと息を吐いた。


「……そう考えたことはありませんでした」


「たけしさん。

 あなたは街に愛されたいと思っている。

 それは素晴らしいことです。

 ですが──

 愛される前に、必ず“誤解”と“反発”が来ます」


 大畑の声は静かだったが、

 その言葉は岳の胸に深く染みた。


「クラブは、まだ生まれたばかりです。

 これから何度も、

 こういう声に出会います」


「……そのたびに、どうすれば」


「誠実に、正しく、積み重ねるだけです。

 それが、街の信頼を作ります」


 岳は深く頷いた。


 反対意見は、

 クラブが前に進んでいる証拠。


 そう思えるだけで、

 胸の痛みが少し和らいだ。


 事務所の窓から見える旧三間中の校庭は、

 夕陽に照らされて静かに輝いていた。


 その光は、

 まるで“揺れながらも前へ進め”と

 背中を押してくれているようだった。


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