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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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41話 十一人の影と、最後の空白

 翌週の夕方。

 旧三間中のグラウンドでは、

 十一人の選手が走り、声を掛け合い、

 少しずつ“チームの形”を作り始めていた。


 だが、その輪の外で

 大畑悠斗は腕を組んだまま動かなかった。


 練習が一段落した頃、

 大畑は岳を呼んだ。


「たけしさん。

 少し時間をいただけますか」


 その声は、

 いつもの穏やかさとは違った。


 二人はグラウンドの端へ移動した。

 夕陽が校庭を赤く染め、

 選手たちの声が遠くに聞こえる。


「十一人揃いましたね」

 大畑が言った。


「ええ。

 ようやく……形になってきた気がします」


 岳は胸の奥にある喜びを隠せなかった。


 だが、大畑は静かに首を振った。


「先日も言いましたが、チームとしては未だ揃っていません。

 “数だけ”です」


 岳の胸に、

 冷たいものが落ちた。


「GKがいません」


 その一言は、

 岳の胸を鋭く刺した。


 分かってはいた。

 だが、その事実を見ないふりをしていた。


 大畑は続けた。


「GKがいない状況では、

 練習は大幅に制限されます。

 シュート練習も、ビルドアップも、

 守備の連動も、何もできない」


 岳は拳を握った。


「……すみません。

 後手後手になっていました」


「責めているわけではありません。

 ただ、クラブとして前に進むためには

 “最後の一人”が必要です」


 岳は深く頷いた。


「分かりました。

 すぐに動きます。

 GKトライアウトを開催します」


 大畑は短く頷いた。


「お願いします。

 時間がありません」


 こうして、

 急遽“GK限定トライアウト”が開催されることになった。


 ──翌週末。


 旧三間中のグラウンドには、

 三人のGK候補が集まっていた。


 選手たちも全員見守りに来ている。

 緊張と期待が入り混じった空気が漂っていた。


◆一人目:セービング抜群の男・黒川


 身長は高く、体格も良い。

 シュートに対する反応は鋭く、

 飛び出しも勇敢。


 颯が放った強烈なシュートを

 黒川は片手で弾き飛ばした。


「うおっ……!」

 岳は思わず声を上げた。


 直斗も驚いたように言う。


「めちゃくちゃ止めるじゃん……!」


 だが──

 大畑は表情を変えなかった。


「黒川さん、次はビルドアップです。

 センターバック役の二人と連動して動いてください」


 黒川は頷いたが、

 動き出した瞬間に違和感が出た。


 パスの出しどころを探せない。

 味方との距離感が掴めない。

 ムービングの意図が理解できていない。


 慎が声をかける。


「黒川さん、そこじゃなくて……!」


「え、どこ!? どっち!?

 いや、待って、分からん!」


 黒川は混乱し、

 動きが止まってしまった。


 大畑は静かに言った。


「……セービングは素晴らしい。

 だが、ムービングの理解が追いついていません」


 岳は胸の奥がざわついた。


 “止める力”は圧倒的なのに──

 それだけでは足りないのか。


◆二人目:小柄だが理解力抜群の青年・宮本


 黒川とは対照的に、

 宮本は小柄で細身だった。


 だが、

 大畑の指示を聞く姿勢が違った。


「味方の動きに合わせて、

 自分の立ち位置を変えるんですね」


「そうです。

 あなたの動きが、

 チーム全体のリズムを作ります」


 宮本は頷き、

 すぐに動きに反映させた。


 慎が驚いたように言う。


「……理解が早い」


 颯も感心していた。


「声も出てるし、

 味方の位置をちゃんと見てる」


 ただし──

 シュートに対する反応は悪くないが、

 体格的に届かない場面がある。


 亮太が言った。


「……小柄なのは、正直不安だな」


 岳も同じ不安を抱えていた。


 だが、大畑は静かに言った。


「ムービングを理解できるGKは、

 このチームにとって“心臓”になります」


◆三人目:元Jリーガー・大谷


 最後に現れたのは、

 落ち着いた雰囲気を持つ男だった。


 名前を聞いた瞬間、

 選手たちがざわついた。


「え、大谷さんって……」

「元Jの……?」

「マジかよ……」


 大谷は淡々とプレーした。

 技術は確か。

 判断も速い。

 経験値が違う。


 だが──

 動きに“キレ”がない。


 年齢的な衰えが隠せなかった。


 大畑は静かに見つめていた。


「……選手としては厳しいですね」


 岳は息を呑んだ。


「でも、経験は……」


「ええ。

 だからこそ、別の形で必要です」


◆最終判断


 全ての審査が終わり、

 大畑と岳はグラウンドの端で話し合った。


「たけしさん。

 あなたはどう見ましたか」


 岳は迷いながらも答えた。


「……黒川さんのセービングは圧倒的でした。

 正直、あれを見た瞬間“この人だ”と思いました」


「ですが?」


「ムービングの理解が……

 追いついていませんでした」


 大畑は頷いた。


「このチームは“動きの連動”が全てです。

 GKが理解できなければ、

 チームは崩れます」


「……宮本さん、ですね」


「はい。

 彼をGKとして迎えましょう」


 岳は深く頷いた。


「分かりました。

 宮本さんに声をかけます」


 そして──

 大畑はもう一つの提案をした。


「大谷さんには、

 スタッフ兼GKコーチとして来てもらいたい」


 岳は驚いた。


「選手ではなく……?」


「ええ。

 彼の経験は、

 このチームにとって“財産”になります」


 岳はゆっくりと頷いた。


「……分かりました。

 俺からお願いしてきます」


 そして、結果発表


 宮本は涙を浮かべて喜び、

 黒川は悔しさを噛み締めながらも

 岳に深く頭を下げた。


「……選んでくれてありがとう。

 俺、もっと強くなります」


 大谷は静かに言った。


「選手としては無理でも、

 このチームの力になれるなら喜んで」


 夕陽が沈むグラウンドで、

 ついに“最後の一人”が決まった。


 十一人の影に、

 ようやく“守護者”が加わった。


 そして──

 クラブは次の段階へ進む。


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