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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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39/55

39話 市外の風は冷たく

 平日の午前。

 北島岳は、総務課員としての業務で

 市外の企業や役所を回っていた。


 目的は、宇和島オレンジトレーディングの

 取引関連の書類確認や手続きの説明。

 クラブの仕事ではない。

 あくまで“総務の北島”としての外回りだった。


 だが、雑談の中で

 どうしてもクラブの話題が出てしまう。


 宇和島市内では、

 最近はどこへ行っても声をかけられる。


「トライアウト見たよ」

「子どもがイベント喜んでたよ」

「応援してるけんね」


 街の空気が変わり始めているのを

 岳自身も感じていた。


 しかし──

 市外に出た瞬間、

 その空気はまったく通用しなかった。


 最初の訪問先。

 書類の説明を終え、

 担当者と軽く雑談になったときだった。


「そういえば、宇和島でサッカーチーム作ったんですよね?」


 岳は少し嬉しくなって頷いた。


「はい。まだ始まったばかりですが、

 地域の皆さんに応援していただいて──」


「ああ、でもあれ、宇和島市の街おこしでしょ?

 うちの市には関係ない話ですよね」


 笑顔のまま言われたその一言が、

 岳の胸に静かに刺さった。


「……まあ、そうですね。

 宇和島の取り組みですので」


 岳は笑顔を崩さずに答えたが、

 胸の奥が少しだけ重くなった。


 次の訪問先でも同じだった。


「サッカーチーム?

 ああ、ニュースで見た見た。

 でも、宇和島の話でしょ?

 うちらの市は関係ないし、興味ないね」


 悪気はない。

 ただの事実として言っている。

 だからこそ、余計に堪えた。


 三つ目の訪問先では、

 もっとはっきり言われた。


「宇和島が盛り上がるのはいいことですけどね。

 でも、うちの市にメリットはないでしょ。

 正直、どうでもいい話ですよ」


 岳は丁寧に頭を下げ、

 車に戻った。


 ドアを閉めた瞬間、

 静寂が落ちた。


 エンジンをかけず、

 しばらくハンドルに手を置いたまま

 動けなかった。


「……そうだよな」


 宇和島市内では、

 少しずつ応援してくれる人が増えている。

 子どもたちも笑顔で集まってくれた。


 だが、市外に出れば──

 **「関係ない」**

 その一言で切り捨てられる。


 クラブはまだ、

 宇和島の外には届いていない。


 それが現実だった。


 岳はゆっくりと息を吐いた。


「焦るな……

 まずは宇和島からだ。

 街に根を張らないと、外には広がらない」


 そう自分に言い聞かせるように

 ハンドルを握り直した。


 車はゆっくりと走り出す。


 市外の風は冷たかった。

 だが、宇和島には

 昨日の子どもたちの笑い声がある。


 その温かさを思い出すだけで、

 岳の胸の奥にある小さな火は

 消えずに残っていた。


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